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46 御館の乱 与六

 春日山城では、中城とニノ曲輪が実城を挟んで睨み合っている。

 越後国内では、中城(景勝)、三郎(景虎)のそれぞれに味方するものと様子を見ようとする者に3分割されていた。

 事の始まりになった三条城に上田衆が攻め寄せている。

逆に坂戸城に新発田長敦・重家兄弟が攻め寄せ一進一退の状況が続いていた。

 突然、信越国境の守りの城である飯山城を武田軍が囲んだ。飯山城は信濃方面の最重要拠点でもともと高梨氏の主城であった。

飯山城から春日山城までは10里もない。越後にとって緊急事態である。


 中城では、上田衆が集まり梟首会議が行われていた。

重臣の泉沢久秀が、

「この様な折りに攻めてくるとは全く迷惑である。いかがしたものか?」

他の臣達も同意と頷く。与六が、

「私が、武田陣に赴き交渉をして参りましょう。上手くすると同盟を結んで、二ノ曲輪攻撃の助けになりましょう。」

泉沢が手を手刀の形にして首にあてながら

「そう上手くいくものか、下手をすると首が跳ぶぞ!」

「我らは越後国主長尾景勝家中でございます。越後を守るためなら生命は惜しみますまい。」

皆が与六を見ている。泉沢が

「よう言うた、それでこそ上田衆ぞ。」

景勝が一言、

「与六に任せる。」


皆が去ると景勝、与六に泉沢が

「与六、あれで良かったかな。」

「武田軍を呼び寄せたのが我らだと知らぬ方がよろしいでしょう。」

で、大丈夫なのか?

「武田は織田に敗れ、国内が動揺しています。ここで新たな領地を得ることは武田にとり、家中、国人衆を引き締めるためにも必要なことでございます。必ずや我らの策に乗りましょう。」

泉沢は眉を顰め、

「割譲する領地は少しでも少なくな。」

与六は無表情に

「努力いたします。」


 次の日、与六は兵1百を率いて、春日山城追手門を出た。

「兵を率いて何処に行かれるか?」

相手を睨め付け

「どこぞの関東管領がこの事態を収めようとせぬので、御中城様が我らに対策を採るよう申し付けられたのじゃ。」

なにを言うか!

「ハハハっ、味方同士でケンカはいかんな。」

では、急ぐので。

樋口隊が飯山城に向け春日山城を出て行った。


 飯山城を囲む武田軍では、勝頼と真田昌幸が雑談をしていた。

「ただで飯山城をくれるとは上杉も気前が良いのう。」

「御館様、上杉ではなく長尾でございます。」

そうであったな。

その時、小姓が「越後からの使者でございます。」

やっと来たか、

「通せ。」

2人は顔を見合せ笑った。


 与六は武田陣にたどり着くと

「長尾弾正少弼が家臣樋口与六と申す。」

一呼吸置き、

「武田大膳大夫殿に御目通り願いたい。」

しばし、お待ちを。

暫く待たされたあと、陣中から現れた武将が、

「御大将は所用で暫くお相手が出来ぬ。ここで待たれるか、所用中であるが側で待たれることも出来ますが?」

「では、お側で待たせていただけますか?」

勿体ぶって、高く売ろうとしておるんだろう。

では、案内いたしましょう。

「申し遅れましたが、某、真田源五郎と申します。お見知り置き下さい。」


「あちらで先客様と囲碁を打っておられます。終わるまで暫くお待ち下さい。」

用意された床几に腰を掛けた。

離れた場所で囲碁を打つ2人を見て、背筋にヒア汗が流れた。腰を浮かし、

「真田殿、御大将の囲碁の相手はもしかすると直江大和守ではござらぬか?」

ほう、

「そのような大層な名であったかな。儂とは隼介、喜兵衛と呼び合う仲でな、御館様にとっては生命の恩人ですな。」

頭がクラクラとし、

「生命の恩人・・でございますか?」

真田はニヤッと笑い、

「御気分が優れませんか?会談はまた、後日にしますか?」

出直し・・て・・参り・・ます・・


 与六は、景勝に宛て文を一通認めると、その後姿を消した。

寺に入り坊主になったとも、山に入り腹を切ったとも言われている。





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