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45 御館の乱 勃発

 隼介の手紙には、

いち早く実城を押えよ。

新発田長敦を取り込む事、

垪和又太郎に連絡して兵を準備させること、

加賀から柿崎晴家を戻す。とあった。


 三郎は、中城に宛て神余の件に付き談合致したし、と連絡をすると樋口与六がやって来た。

対面の場に入ってきた与六は小さからず大きからずの体躯であるが、目付きの鋭い刃物を想像させる若者であった。

なかなか女衆から人気があるらしいの。

「お呼びと聞きましたので、御中城様の代わりに参りました。」

そうか、

「早速だが、神余の処分、取り消す気はないのか?」

鋭い瞳の目で真っすぐこちらを見て

「できません。御中城様に逆らうことは許されません。」

「別に逆らった訳ではないと思うぞ。それに替地もないと言うではないか?」

与六は少し視線を下げると

「御中城様の裁定です。神余は京にでも隠棲すればよろしい。」

こいつ、他人の気持ちを慮ることが出来ないのか?

「話すだけ無駄か?」

口角を上げ笑ってやがる。

「で、三条は誰に与えるのかな?」

「これから御中城様がお決めになります。」

未だなのか?

「それはそうと中城に兵を集めているようだが何をしようとしておるのだ。」

目の光が沈み、

「今の守備兵を上田に帰すので交代の兵を呼びました。」

「わざわざ、上田から呼ばずとも儂の兵を貸したのに。」

関東管領様の

「御手を煩わすわけには行きません。」

ニコニコっと

「では、わしのほうで追手門の警備を引き受けよう、少しでも中城殿も楽になるであろう?」

チッと舌打ちが聞こえたように思えた。

「そこまでしていただかなくても。」

よいよい、

「義兄から弟への馳走じゃと思うてくれ。」

「では、ありがたく。」

それからな、

「御実城様のご遺骸をどうするか、打ち合わせねばならぬな。」

はっとしたように、こちらを見詰めて、

「帰って御中城様に相談申し上げ、その後、打ち合わせに参ります。」

遅い!

「お主は何を考えておるのじゃ!」

一呼吸おいて

「何においても優先される事柄じゃ!中城殿は何をしておるのじゃ!」

しまった、と顔に出るのを懸命に堪えて

「確かに、左様でございますな、では急ぎます。」

静かな声で

「世間では謙信公の後継ぎは人の道を知らぬと言われておる。中城殿は準備が出来ておらぬようなので、明日から実城に石工、大工を入れ不識庵を霊廟に相応しい場所に造作する。良いな。」

はッ、能面のように全くの無表情になって

「お願いいたします。」

その場を下がった与六の背中が悔しさに震えているように見えた。

 与六よ、自分に勝つ頭脳などないと思うておったであろう、儂など一捻りよと思ってやって来たのであろうな。儂に叶わぬようなら隼介の足元にも及ばぬという事じゃ、早く、自分の限界に気づき相応の道を歩め。


 与六は唇を噛みながら、中城への帰り道を歩んでいる。

まあ、よい。ただでさえ少ない三郎の手の者を分けて追手門の守備をしてくれるという、直接二ノ曲輪を攻撃するのが良いかもしれん。

 計画では神余をもう少し怒らせ暴発させる。その鎮圧のために春日山城に兵を集め、その兵でもって二ノ曲輪を攻撃する予定であったが、若干計画の修正が必要になったな。三郎は自分の生命の危険については感付いていないからな。


 三郎は、実城へ加賀から帰ってきた柿崎勢を入れた。追手門の警備に山吉勢を呼び寄せた。

それを聞いた中城の上田衆は騒然となった。

景勝は側の与六に

「どういうことだ?」

唇を噛み締めながら、

「申し訳ございません。してやられました。」

どうする?

「まだ、負けたわけではございません。相手から攻撃は出来ません、睨み合っている間に禁じ手を使います。」


 隼介は斉藤下野守朝信に会って来た。

御実城様が信頼した漢である。

三郎の味方に取り込むことは出来なかったが、中立は守ってくれるだろう。

斉藤から言われた、「血の繋がった者が後を継ぐのが収まりがよい。」との言葉は刺さった。

そうだろうと自分でも思う。皆も思うであろう、でも、やるしかない。


 安田顕元は樋口与六と組んで揚北衆を味方に引き込む算段をしていた。

この戦に勝てば、安田顕元は三条を貰える約束である。

揚北衆の内、色部や中条は褒美を鼻薬にして簡単に取り込めた。

 しかし、新発田に行った時、樋口与六の書付を見せると「ここに書いてある褒美とは具体に何のことだ?」と突き返された。空手形だと言いやがった。後で吠え面を掻くといい。

しかし、与六殿は褒美は望み次第と言うがそれほど領地があるのか?まあいい、全ては勝ってからだ。




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