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37 七尾城落城

 3月に上杉軍が越後へ去ると七尾城の畠山家中は奪われた支城群の奪還に動いた。まず、七尾城に近い熊木城、富木城が攻撃を受けた。元々、七尾城の守りのための支城で七尾城の向かっての防備は薄く、あっという間に奪還された。続いて長氏の本拠地穴水城にも、長綱連が奪還の軍を起こした。

 穴水城は七尾湾を挟んで反対側にあり、小又川を外堀とした山城である。

 長綱連は小又川に沿って布陣した。勝手知ったる自分の城への攻撃ということで、弱点を突こうとしたのだが、城からの反撃が思ったより激しく、前へ進めずにいた。


 隼介は石動山城にあって、畠山軍の牽制を行うとともに七尾城内の上杉派と目される武将を懐柔するため、密書攻勢を仕掛けた。遊佐続光、温井景隆、三宅長盛などに出し続けている。また、加賀一向一揆との連絡、特に尾山御坊、七里頼周と頻繁に連絡をとっている。


 7月、謙信は関東から帰還すると、疲れを取る間もなく能登に向け出陣した。

謙信来たる!の報に穴水城を囲んでいた長綱連は慌てて退却を始めたが、城兵の追撃に付け入られ大損害を出した。長綱連自身はホウホウの態で七尾城に逃げ帰った。

上杉軍は城を囲む前に城の周辺の村々を襲い領民たちを城に追い込んだ。その数は1万5千人は下らなかった。


 七尾城では、親上杉派、親織田派に別れており、筆頭家老の長続連は親織田派である。この危機に織田への救援要請の使者を出した。使者の名は長連龍、長続連の子である。

 織田の北陸方面軍は柴田勝家が越前北ノ庄城にいて統括している。

 その、北ノ庄城に長連龍が辿り着いた。柴田勝家は護衛を付けて安土の信長の下に送った。


 上杉軍は七尾城を囲んだものの攻めあぐねていた。

謙信は、

「大和守(隼介)、内通はどうか?」

「今しばらくかかるかと。領民をかなり追い込みましたので、兵糧はそんなに持ち堪えられぬかと。」

そうか、

「織田の動きはどうだ?」

「越前からの報告によりますと北ノ庄に続々と集まっております。分かっているだけで、丹羽長秀、明智光秀、滝川一益など勢ぞろいのようです。」

ほう、

「では、信長自身が出てくるな、ここが勝負処になるか?」

まず、

「豊前守(河田長親)その方いち早く加賀に向かえ!」

それから、

「大和守、加賀の一向衆に連絡を取り、織田軍の行軍を遅らせよ。」

三郎、

「その方なら、どのようにする?」

はっ、

「我らは織田との決戦を想定している加賀に移動する必要がございます。」

だいたい、

「9月一杯が、七尾城を落とす期限でございましょう。」

まず、

「七尾城の抑えに越後より景勝殿に出馬頂き、ここの包囲を任せたいと思います。」

そして

「加賀のうち松任城までは押さえておきたいと思います。おそらく戦場は松任城の周辺、手取川の手前といったところでしょう。松任城であれば手取川から1日の距離、全軍で戦えるでしょうから。」

うむ、

「良い読みじゃ、では、手配をいたせ。」


 直江の陣に三郎がやって来た。

「どうだ、裏切る者は出そうか?」

「遊佐続光が間違いなく。それと、城内では疫病が出始めているようですよ。」

隼介、

「お主の手によるのか?」

苦笑いしながら、

「そこまでは致しておりません。」

・・いくら何でも、疫病で落城させても、消毒やら患者の対応やらこちらの兵士の防疫やら、直ぐには出来ないって!

自分のことを悪魔か何かと勘違いしていませんか?


 9月15日、遊佐続光が、仲間を語らい長続連、綱連親子を始め長一族を討ち果たした。

 城内は疫病が蔓延し、城主である畠山春王丸でさえ疫病で亡くなった。これ以上の籠城は徒に死者を増やすだけで一刻も早く開城することが畠山家中のため、七尾城に逃げ込んでいる領民のためであると遊佐続光は考え訴えた。

 だが、長続連は、織田軍が間もなく援けに来てくれると取り合わなかった。

 遊佐続光等は本丸大広間での会議中、クーデターを決行した。その場にいた長続連ら織田派を殺し、長屋敷に突入した。この戦いで長氏は織田に救援要請に行った連龍以外一族すべてが殺された。


 城門が中から開いた。

 上杉軍は待ってましたと突入していった。

隼介は三郎をその場に押し留め、謙信に使いを走らせると、直江軍を南下させた。


「隼介、儂も城に入りたかったのに何故じゃ?」

・・馬鹿、疫病から離れることが大事なんだよ。

「急ぎ、織田との決戦に備える必要があります、一刻の猶予もありません。」

 河田軍の後を追うように三郎と直江軍は加賀へ向けて南下を始めた。



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