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29 佐渡攻略 その2

 敵は崩れ落ちるように崩壊した、

「河原田城はすでに落ちたぞ!」と叫びながら一方的な戦いとなりつつある戦場を隼介は叢雲に跨がって駆け回っていた。

何度も

「降伏するものは、刀を捨てよ。命までとらぬ。」

と叫ぶと一人また一人と兵が武器を捨て、その場に座り込んだ。


 戦闘が終わった頃、河原田の当主本間高統は、味方に裏切られ、首になって三郎の前に現れた。

首を見ながら

「弱いというのは悪だな、他人事では無いな、心せねば明日は我が身だな。」


 雑太城から当主本間泰高が転げ出るようにやって来て、

「ありがとうございます。お陰で命拾いいたしました。」

御当主か?

「ここで何をしておる。羽茂をなぜ追わん!」

「城で必死に籠城しておりました、兵にも休息が必要です。」

機を失うということが分からぬのか?

「我らに遅れをとるようなら覚悟されよ!」


 雑太城には入らず、その場で部隊の再編を行った。負傷者、捕虜を雑太城に収容し、しばらく休息を取った。


 その間に雑太城から、バラバラと羽茂追撃の部隊が出て行った。


 本陣で三郎が隼介に

「大丈夫だろうな?」

「準備は万端です。我らが攻めかかる頃に城から火が出る手はずです。」

「隼介、悪い顔になってきたぞ。」


 羽茂城までは約5里、右に真野湾を見ながら海岸沿いの道を行くことになる。途中の待ち伏せに注意しながら、まず道に詳しい沢根勢が先鋒となった。


 途中何事もなく、昼過ぎに羽茂城下を流れる羽茂川をわたり、山城の羽茂城を見上げる位置に陣を敷いた。

「使者を出せ。今なら命は助ける。」


 使者を出して1刻が経った。何の返答もなかった。

「よし、鉄砲を打ち掛けよ!」

ダダーンと大きな発射音がした。それが合図であったかのように、城から煙がそして炎が上がった。

「よし、かかれ!」


 虎口に続く道に本間勢を先頭に各隊が殺到した。

城からダーン、ダーンと散発的に鉄砲が放たれた。よく狙わず打ったようで倒れたものは居なかった。

「敵は焦っているぞ!鉄砲隊、打ち掛けよ!」

組織だった鉄砲の発射音が響いた。

先鋒が虎口に取り付いた。

虎口近くの塀に梯子が1本、2本と掛けられ武者達が突入して行く。

間もなく中から門が開いた。

ワー、と

歓声とも気合ともとれる声を発して、兵達が城内に突入して行く。


 既に火災が起こっていた城内では、人々が右往左往して収拾が付かなくなっていた。

「大将を探せ!」

時折、反攻を見せる敵を蹴散らしながら、城内をくまなく探した。

奥方や子供など本間の一族は見つかったが、肝心の羽茂高貞、高頼親子は見つからなかった。


 上杉軍は兵を纏め、捕虜を連れ雑太城に凱旋した。

 雑太城の三ノ丸に武装解除された本間一族、将、兵が集められた。

 雑太城主本間泰高は、本丸大広間で上座に座った三郎に向かい、

「此度の援軍、誠にありがとうございます。御実城様によろしくお伝え下さい。」

「ご自分で伝えよ。佐渡を治める力のない本間殿には越後に渡って頂く。越後でそれなりの待遇が得られよう。」

えっ、

「お待ち下さい。それは佐渡を取り上げるということですか?」

「そう言うたつもりだが。」

何とか、

「それだけはお赦し頂きたい。」

そうか、いやか。

「越後に来るのが嫌なら何処へなと行くが良い。」

「佐渡に残れる本間は居らぬと心得よ。」

周囲を見回し、

「皆もここへ残り田を耕すか、鉱山で働くか、越後に渡り我らの下で働くか、決めよ。」


 戦後処理が始まった。

雑太城、河原田城及び鶴子銀山、西三川砂金山は三郎直轄、

沢根城は直江

羽茂城は柿崎

青木城は山吉

がそれぞれ代官を置くこととなった。


 三郎は又太郎を代官とし、佐渡を治めさせることにした。

 隼介は沢根本間から、鉱山掛りを雇入れ、又太郎に託した。

「又太郎殿、鶴子銀山辺り探せばまだ金や銀が出そうです、段蔵に山師を探してもらいます。三郎様のためよろしくお願いします。」

「任せておけ。」

三郎はこの戦いで初めての領地と軍資金を手に入れた。


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