表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/108

25 ニノ曲輪にて

 三郎に用意されたのは二ノ曲輪。

 輝虎の住む本丸に近接している。

 隼介も二ノ丸に屋敷を貰った。


 祝言から3日、ニノ曲輪の対面の間に隼介と又太郎が呼ばれた。

上座に、三郎に続いて奥方様が座った。

「二人に紹介する。妻の華である。」

凛々しい美人というのが最も近いか・・

「華です。高梨様、垪和様よろしくお願いします。」

折鶴を手に取り、

「高梨様、これを作られたのは貴方なんですって?」

「今度、折り方を教えてくださいね。」

・・ほんとに三郎様は何でもしゃべるなぁ。


「高梨様、垪和様お二人は殿様と一心同体、股肱の臣だと伺いました。」

「お二人には、私の事をお話しておくべきだと思い、ここに来ていただきました。」


 華様のお話しは、

 父は長尾政景と申しまして、長尾三家の内、上田長尾家の当主でございました。

 父は叔父上(輝虎)が家督を継ぐときに反対をいたしました。その後も叔父上が守護代であることが気に入らず反乱を起こしたことがございます。叔父上に取って代わろうとしたのです。

 一度ならずも二度までも逆らった父を赦し、しかも重用していただきました。父がどういう気持ちであったかは知る由もありません。また叔父上が本当にお赦しくださっていたのかもわかりません。

 その父が私が9歳、喜平次が8歳の時に突然亡くなりました。溺死でした。どうしてそうなったのか、その場を誰も見たものがございませんのでわかりません。

 母と私たちはこの春日山城に引き取られ、不自由なく暮らしてまいりましたが、周りの目は冷たく感じますし、何より叔父上に暖かみを感じたことがございません。


 喜平次は11歳で元服し、顕景と名乗りました。そして、直ぐに越山に同行しました。認められたのかどうか分かりませんが、帰ってから明るかった喜平次が口を効かなくなりました。

 母は、喜平次が叔父上の後継ぎになると信じています。

 しかし、どうでしょう?叔父上が簡単に喜平次を後継ぎにするとは思えないのです。

 今では、小姓として上田から付いてきた樋口与六というものとしか話をしません。私に対してもほとんど口をききません。

 私もどうして良いか分からないまま今日まで来ました。


 殿様と祝言を挙げて三日の間、語り明かし、この方ならと思い定めました。

 私は叔父上が恐ろしい、と震える手を差しだし殿様にすがりました。

 殿様はそなたとわしは一心同体である。必ず護るとおっしゃって下さいました。

 お二方には御苦労をかけますが、甘くはない場所に来られたことを分かっていただきたいのです。


 華は思いの丈を一気に喋った。

 これまで、誰にも言えずにいたことを隼介達が味方だと思い定めて喋っていた。

 しゃべり終わると気持ちが楽になったのか、顔が穏やかになり、とても似合いの夫婦雛がそこに並んでいた。


 直江家から松本猪兵衛、柿崎家から上野九兵衛などが小姓としてやってきた。

 それとほぼ同時に、両家から郡方の役人が隼介を訪ねてきた。稲作のことを聞くために。

 塩水選、正条植えのことを簡単に話し、後日、直江屋敷で実際にやってみせることになった。

 隼介は、塩と生卵を用意しておくよう指示を出した。


 三郎は垪和と小姓衆を連れて本丸へ登城していった。

三郎は、輝虎の近くにいる事を心掛けると言っていた通り、毎日登城するつもりのようだ。


 藤助は隼介の屋敷で頭を抱えていた。供侍や小者、女中の雇入れ、御用商人の選定と伝手の全くない中で途方に暮れていた。


 段蔵は府中の街に出ていた。商家が軒を連ねる中に段蔵の息のかかった商家『坂井屋』があった。段蔵は御免と一声掛けて中に入っていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ