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19 永禄13年3月 その2

 長順と話し込んでいるうちに、日が昇り始めた。まだ、朝の空気は冷たい。


「失礼します。」と廊下からの声に

長順と顔を見合わせた。

障子が開き、はつが中に入って来た。

「隼介様、今日はどのような御用で。」

あわわ・・

「はつ様にお住みいただく屋敷の普請の様子などお伝えしに参りました。」

・・冷や汗ものだな、

「はつ、話しが終わったら部屋に帰れ。」

「まだ、終わっておりません。」

隼介様、

「三郎様から言伝てがありませんか?」

あぁー、

「早く会いたい、」とおっしゃっておられました。

「まぁ、いいでしょう。許します。」

・・冷や汗が出る。

ところで兄上、

「父上はどちらに行かれたのですか?」

城だ。

「お城に何をしに?」

知らん。

「ほんとですか?何か皆で私に隠し事をしていませんか?」

本当に知らん。

「では、私も城に参ります。」

へっ、だめだ!

「兄上、何か隠してますよね。」

勝手にしろ、

・・勝手にされては困りますが。


 昼過ぎ、小田原城に入った。

宗哲は、

「はつを連れてきてどうするつもりだ!」

長順は、

「知りません。勝手についてきたのです。」

「はつ、ややこしい話しでな。暫くかかりそうなんじゃ、大人しく屋敷で待っておれ。」

「いいえ、三郎様の事でございましょう?はつにも教えてください。」


 苦い顔をした宗哲は、暫く考えると仕方がないとばかりに

はつ、心して聞いてくれ。

「三郎は越後に養子に行くことになった。」

「はつも一緒に参ります。」

ならん。

「ならんのじゃ。三郎は越後で上杉輝虎公の姪と夫婦になる。」

「三郎様は承知なさったのですか?」

これは

「国と国との決めごとじゃ、三郎がどう言おうと関係ない。」

では、

「三郎様が承知したわけではないのですね。」

どうか

「三郎様に会わせて下さい。」

ならん。

「三郎の気持ちもわかってやれ、このまま行かせてやってくれ。」

そう言うと宗哲は部屋を後にした、


「兄様、何とかならぬのですか?」

「父上があのように言うということは、もはやどうにもならんようだな。」

父上も激怒しておったんだ。

「一門を集め、抗議したがどうにもならなかったようだな。」

はつ、

「儂も悔しい、皆同じ気持ちだよ。」

兄様

「なぜ、三郎様なのでしょう?他の方ではいけないのですか?」

「決まったことなのだ。それに他の者にしたところで、その者の周囲の者達は我らと同じ思いをするであろう?」

隼介様

「三郎様に会われるのでしょう?はつもお連れください。」

はつ、

「隼介を困らせるでない。聞き分けよ!」


その時、

「長順、隼介おるか?」と彦五郎氏規が入ってきた。

・・うっ、はつ姫ではないか、まずい。

彦五郎様

「兄様達ははつを除け者にして、三郎様に会わせてくれぬです。」

「三郎は今は会えぬと思う、がどこかで会わせてやれるよういたすゆえに、今は大人しくしておかぬか。」

「ほんとに、ほんとに会えますか?」


 長順と隼介は二人が話している隙に部屋を抜け出した。

三郎は宗哲と話し込んでいた。

一門を集め、皆で左京大夫(氏政)を説得したが、取り付く島もなかった。

「三郎、儂の力不足じゃ、すまんな。」

「決まった事は仕方ありません。小机のことよろしくお願いいたします。」

それと

「はつ殿のことが些か心配です。」

そのことよ、

「はつには言い聞かせたが納得せん、付いていくとごねておる。」

「はつ殿らしい、できれば連れて行きたいぐらいです。」

「馬鹿を言うな。出立前に一度会うか?」

そういたしましょう。








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