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17 農業談義

 翌日、台所で藤助と朝餉を摂っていると、

四十絡みの小男が早口で、

「小鳥遊隼介様ですか?某、工藤松右衛門と申します。殿から話を聞き、居ても立ってもいられず失礼は承知の上で伺いました。」

藤助と顔を見合わせ、

「某が小鳥遊隼介です。工藤殿も一緒に食べませんか?」

この方にも膳をと台所に頼み

「昨夜の今朝ですか、早いですね。」

「申し訳ありません、聞いたこともないような方法を殿より伺いましたので一刻も早く知りたいと思いまして・・」

「慌てないで、朝餉を食べてからにしましょう。」


 隼介の部屋に席を移し、

「何からお話しましょう?実は私も耳学問ですので、この知識を何処かで試してみたいのです。」

あ〜、それなら、

「荒地が、あちらこちらにあります、人を集めますので是非ともやってみましょう。」


 これまで、

「私は田に水を引くことばかりを考えてきました。溜池を造り用水路を造ってきました、川から水を引いたこともあります。私が水を引いた田は、稲刈り後にある程度乾きますので裏作の麦が作れます。しかし、昔から平地にある田の多くは湿田で麦が作れません。」

「田に水を引くのは最も重要なことです。水が無ければ米はできません。工藤様がいればこそ小机はここまで豊かになったのですね。」

とんでもありません。

「他よりわずかに取れ高が良いだけです。領民の努力に報いているとは言えません。」

「もっと、どうにかなるのではと思うのです。」


 小鳥遊様は、

「村を見て回ると荒地が多いのに気づかれましたでしょう。耕す者が居ないのです。もっと人が増えねばどうにもなりません。」

どうすれば人が増えるでしょうか?

「収穫量が増えれば養える人数が多くなります。」

「子供も増えるでしょうし、北条は税が安いので流民がやって来るかもしれません。」

「田の地味を肥やし、2毛作もできるとなったら望みはありますね。」

それに

「1人あたりの耕作面積が増えれば、それはそれで良くなるでしょう。」


 まず、湿田対策をやりましょう。

「今は耕作後、田に水がそのまま残って湿田のままの田が多くなっています。田を乾かすことができれば2毛作が出来ます。」

それには、

「田は冬場に乾かし、施肥をし、田起こしをすることで地味が格段に変わります。」


 肥料ですが

「刈った草でも良いのですし、牛馬の糞も良い肥料ですが、小魚を干した干鰯(ほしか)も優れた肥料になります。漁師達に売り物にならない小魚を干してもらい、買い取れば漁師たちも儲かります。」


 まず、

「湿田を乾かすには、田の側に悪水路(排水路)が必要です。これだけでもかなり乾きますが、田の中に暗渠排水を割竹と籾殻で造るとビックリするほど田が乾きます。」

工藤は首をひねりながら、

「冬に乾いていて2毛作をしている田も有ります、乾いた田で麦を植えていない田を探します。今年はそこに干鰯を撒いてみましょうか?」

「それは良いですね。」

では、

「早速干鰯を作る交渉をしてみます。」

それはそうと

「田を耕すのに牛か馬が必要です。」

ニコッと

「牛がいますので心配無用です。何かウキウキします、今から楽しみです。」


 小鳥遊様はもしや

「湿地の干拓の方法もご存知なのではないですか?」

「多少は存じております。」

「これは頼もしい。また、お聞かせください。」


 それに

「その他にも収獲を増やす方法があると聞きました。」

ありますが、

「種蒔きの時期で間に合いますので、その頃詳しくお話します、簡単に言うと種籾の塩水を使った選別と田植えの時に植える間隔を左右5寸程度で一定にするという方法です。」

「これらの方法で少しは効果があると思いますが、田の地味を改めるとさらに大きな効果があるとおもいます。」


 では、

「今出来ることから始めたいので、ご指導をお願いします。」

もう既に心ここにあらずといった感じで

「早速、場所探しと漁師に当たってみます。」

と言うと松右衛門はあっという間に館を飛び出して行った。

その後ろ姿を庭で藤助が呆れた顔で見つめていた。





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