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15 鎌倉

 三郎一行は、早朝に玉縄城を発った。

 追手門まで綱成は見送りに来てくれた。

「伯父上、昨日の話は肝に銘じて置きます。」

 綱成は

「三郎様は話しがいがあります。また、おあいしましょう。」

 最後まで、丁寧に接してくれた。強くそれでいて謙虚、こうでありたいと思わせてくれる方であった。


 今日は鎌倉に寄ってから小机に向うことにしている。

 一行は鎌倉七口と言われる切通しの道を通っていく。

 この道は七口のうち西側の極楽寺切通しと呼ばれる切通しらしい。

 通りの両側は山を削った崖で、その周囲は鬱蒼とした森になっている。

 ここで待ち伏せされれば・・なかなか攻略は難しいな。

 

 切通しを抜けると視界が開け、目の前に市街地が拡がった。

 頼朝公が武士の都と定めた街である。


 鎌倉は南側を海、他の三方を山で囲われ、出入りするには七口と呼ばれる切通しを通らねばならない。まるで街ごと要塞の中にあるようで防衛するには都合の良い立地である。

 自然が作り出した城のようでもあり鎌倉城と呼んだ人もいるくらいだ。かの新田義貞でさえこの切通しを抜くことはできなかったらしい。


 市内には大路が東西3路南北3路整備され、京のように碁盤目になっている。

 先年、里見氏との戰場になり、街の大半が焼けたが、表だけは何とか復興を遂げている。


 源家の棟梁として全国の武士を率いた頼朝、源家が絶えて後、君臨した北条氏の夢の跡である。

 その守り神として勧請されたのが鶴岡八幡宮である。

 一行は南北の大路の一つ若宮大路を由比ヶ浜から半里進んだ先に鎮座している、その八幡神の下へ向かった。

 

 頼朝は三郎にとって目標となる人のひとりであった。

 頼朝は武士を統一し、最初の幕府を開いた。その時代は平和とはとても言えなかったが、天下泰平への一つの道標にはなる時代ではあった。

 三郎は頼朝の幕府より、もっともっと将軍権力の強い幕府、あるいはそれに類する権力機構を創れば、武士や領民の私闘も抑えられるのではないかと朧げに思っていた。

 自分が強い権力を持つことが戦を無くす最も早い道だと思っていた。


 若宮大路は中央部の幅5間が周辺より1尺ばかり高く造られている、それを段葛(だんかずら)と呼ぶ。

 周囲から見ると宙を往くように見えるようになっている。

 そこを颯爽と三郎はゆく、まるで空へ駆け上がるごとく

 八幡神よ我を見よ、我に未来を掴ませよ、と。


 大鳥居の前で馬を降り、池中に3つの島を持つ源氏池、4つの島を持つ平家池を左右に見ながら、赤橋を渡る。

 途中で、

「隼介、旗上弁財天に寄って行こう。」

 源氏池に浮かぶ島にある弁財天に寄った、

「ここは頼朝公の奥方政子様が建立されたんだ。」

「お詳しいですね。」

 ちょっとな、

「はつがそう言っていた。」

 で、

「はつ様に頼まれてお参りですか?」

 うるさい!

「儂が参ってやろうと言ったのよ。」

 はいはい、

「仲のよろしいことで。」

 危うく鞭が飛んでくるところであった。

 旗上弁財天は天上で大笑いしていることであろう。

 一行は神妙に手を合わせた。


 若宮に参り、目の前に現れた大階段を登りながら、

 ここで3代将軍実朝が甥の公暁に殺された。

 源家は身内同士で骨肉の争いをする。

 一方平氏は一族仲がよくお互いを盛り立てている。我が北条は平氏の流れだから皆、仲がいいのだろうか?自分も兄弟や一族で嫌う奴はいないなぁ。


 大階段を登りきると目の前に壮麗な本宮があった。

 この鶴岡八幡宮は里見に焼かれ春松院様(氏綱)が再建した。ここを焼くような罰当たりの顔を見てみたいわい。


 たどり着いた本宮で武運長久を祈願しをした。一応は。


・・普通こういう場面では、我に艱難辛苦を与えたまえ!とかいう場面だよな、三郎様の場合は、濡れ手で粟でお願いします。とか言いそうだな。


 鶴岡八幡宮を出た一行は、若宮大路を由比ヶ浜までもどり、波打ち際に立った、寄せては戻す波を観ながら各々どのような思いを抱いたのだろう?


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