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10 蒲原城攻防戦 終戦

 「パパ起きて、朝ごはんだよ~」子供の声で目を開けると見慣れた天井に見慣れたシーリングライトが常夜灯を点けて頭上にあった。

 「パパ、おはよう」『晃平』が布団の上に飛び込んできた、5歳の保育園児だ。子供の重さを体で感じながら、ああ、おはよう、我が家に帰ってきたんだ。

 朝食は家族3人で摂る。朝はそれぞれの準備で忙しい、僕は

子供を保育園に送ってから会社に、妻はそれより少し早く家を出る。

 今朝は僕が起きないので妻が朝食を作ってくれた。味噌汁と玉子焼き。「いただきます。」玉子焼きを食べていると何故か涙が出て来た、いつ以来だろう?

「パパ、最近変よ、別府温泉で転けてから本当に変、どこか悪いんじゃないの?」

 そうかな~と誤魔化しながら

「ただの二日酔いだよ。」

「気をつけてね、パパに倒れられたら困るんだから。」

「パパ大丈夫だよね。」

「あ〜大丈夫だよ。」

朝食後、トイレに入った。座り込みと、あ〜シャワートイレだ。と感慨に浸り目を閉じた。


 酷い頭痛で目が覚めた。

 あれ、ここは・・

 また、この時代か・・

 それにしても、どちらが夢でどちらが現実なんだろう?


 なにはともあれ、頭痛が酷いし吐きそうだ。

 昨夜の宴席で酔い潰れたようだ。周囲は片付けられ隼介には夜着が掛けられていた。

 身体が水を欲している、それも早急に。台所を覗くとおはようございます、と女たちが朝餉の用意をしていた。

「水を貰えるか?」

 はい、はい、お待ちください、と柄杓に汲んでくれた水をゴクッゴクッと一気に飲み、二杯目を頼もうとした。

 後ろから、止めておけ。と三郎の声がした。

 飲み過ぎだな、水はほどほどにして飯を食え。

と言われても、朝餉の膳を前にしても汁しか胃が受け付けない。

 三郎は笑いながら、「食っておかねば、いざという時に役にたたんぞ。」

 そうなんだが、しかし、どうしようもない。


 昼前になると少し胃も落ち着いてきた、台所で握り飯を頬張っていると玄関から「迎えに参りました。」の声と共に武藤喜平が現れた。

 隼介を見て、起きられたか?と笑いやがった!だからこいつは嫌いだ。

「喜平、そう苛めるな。」

昨日はおもしろい奴と思ったオレが馬鹿だった。

「隼介、用意しろ、帰るぞ。」


 三郎の精悍な顔をした馬『北斗』5歳と我が愛馬『クモ』8歳が並足で進んで行く。

 前には、武藤喜平が、どうみてもクモより立派な馬に乗っている。やっぱり腹の立つ奴、どうやって懲らしめてやろうか、と考えているまに富士川の川原に着いた。


 対岸には50ほどの兵と北条長順が来ている。その中から一騎が静かに動き出した。

 また、会おう。機会があれば。と三郎と喜平の挨拶が済むと北斗とクモは歩き出した。

 川の浅瀬を渡って行く、中程でも水深はクモの腹まで達しなかった。

 向こうからやって来る四郎殿と丁度中央を少し過ぎたあたりですれ違った。ボソッとこの借りは必ず返す。と聴こえた。

う〜ん、どういう意味かなあ、いい意味だといいなぁ。さてさて吉と出るか凶と出るか。


 長順が「御苦労様でした、城で父(宗哲)が待っております。」

と先頭に立ってその場を離れた。

後背を気にしながら、早足であっという間に蒲原城に付いた。


 蒲原城には興国寺城で待機していた宗哲がやって来ていた。

「御苦労じゃった。」

「なかなか楽しかったです。甲斐は猪武者しかおらんと思っていましたが、面白い漢もおりますね。」

「証人(人質)に行って、そのような事いう三郎が一番面白いわい。」

 信玄公には会ったか?

「はい、会いました。疲れた顔をしておりました。」

 ほう、

「跡継ぎは返してやりましたので安心して死ねましょう。」

 阿呆ぅ、

「お前の口の悪さはどうにかならんか?」

 ところで

「隼介は考え事をしているようじゃが、何かあったか?」

「自分でもよくわかりません、整理がついたらお話しします。」


 父上、と横から氏信が、あの話をと促した。

「そうじゃった。三郎、駿河守と相談して今回の褒美を出すことにした。」

「どこか城でもいただけますか?」

 それもある。

 その方『はつ(宗哲の娘)』のことをどう思う。」

「どう思うと仰られましても、幼き頃より一緒に過ごしておりますから・・」

「嫌ではないんじゃな、では嫁に貰ってくれるか?」

 へっ、と珍しく三郎が動揺している。

「褒美は城だけで結構です。」

「相模守(氏康)も承知じゃ。」

「では、断れないでは無いですか。」

そう言うことじゃ、と宗哲の笑い声が響いた。

へぇ~何か面白いことが起きそうだ!


宗哲の娘の名は伝わっていません。ここでは仮に『はつ』とさせていただきました。

隼介はどうも現代では1児の父のようです。

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