02
オリベラ目指して、いつも通りの徒歩の旅。
リグラルト王国内は、エルサニア王国よりもちょっとだけワイルド風味。
冒険者のヒャッハー率が高かったり、
地方の町や村に根深い因習が残っていたり。
つまり、異世界風味な中世ヨーロッパちっく文化が健在なのです。
法整備などの治安問題、上下水道や水洗トイレなどの環境問題。
エルサニアを中心とした召喚者文化は、
リヴァイス大陸全土に徐々に広まっているようですが、
当の召喚者としては、異世界らしさが侵食されていくようでちょっと複雑。
いわゆる観光地問題ですかね。
住んでる人が便利な暮らしを追い求めるってことは、
その地の独自文化を薄れさせることでもありますし。
どこに行ってもコンビニがあるって凄く便利ですが、
風情や景観、その地域特有の生活環境を壊していると考えると痛し痒しかも。
まあ、そんなことが言えるのも、
俺が『創造』能力持ちで生活に不自由していないせいかもしれませんが。
実際、今から中世ヨーロッパっぽい生活しろって言われたら困っちゃいますし。
『また難しいこと考えてる』
ごめんね、チミコさん。
でも、旅先の民度や暮らしやすさを理解しておくことは、
俺たちの旅の安全にも直接関わることだから、
それについては家長として真面目しなきゃいかんのです。
このリグラルト国内はヴェルクリほど安全じゃないから、
チミコさんは、あまりはしゃぎ過ぎちゃ駄目だよ。
妖精さんは魔物や悪党からモテモテだからね。
パタパタ、するり、むにゅり
『お胸マイスター・チミコ、隠密モードの準備完了!』
うん、毎度のことながら素早いフットワーク、
ツェリアさんのお胸目指してまっしぐら。
まさに日頃のたゆまぬお胸活動の成果。
ちなみに、お胸マイスターさん。
ロイさんのお宅ご訪問の際、リノアさんのお胸はいかがでした?
『圧倒的多幸感!』
……おやおや、残念ながらそれではマイスター不適格と言わざるを得ませんな。
その感想だと、多幸感が圧倒的であった、という凡庸な表現ともなりえます。
あの豊かすぎるお胸が真に圧倒的な存在であったことを、
もっと分かりやすく、素直な言葉で伝えるべきかと。
『悔しいけど、一理ある!』
ロイ家ご家族全員のお胸を見事にフルコンプしたチミコさんなら、
リノアさん、セシエリアさん、ヴァニシアさん、アリシエラさん、
あの多様性の宝石箱とも呼べるであろうアレの感触や居住性を、
より繊細に表現することが可能なはず。
つまり、真のお胸マイスターを目指すなら、
これからも精進あるのみ、ですよ。
『その挑戦状、受けて立つ!』
その意気や良し!
ところで、ルーリシェラさんのお胸に突貫しなかったのは、何故です?
『……黙秘』
……ごめんね。
---
えーと、めっちゃのんきしておりますが、それもそのはず。
シジマ家専用装備、対監視網指輪『見つめ返すジト目』に、
最近全く反応が無いのです。
どうやら例の監視員たちに、この指輪の件がバッチリ浸透した模様。
ありがとうございます、ルーリシェラさん。
ってことで、
祝! デバガメ殲滅。
これで心置きなく、観光やらイチャイチャやらに集中出来るってなもんですよ。
『エンドレス新婚旅行!』
良いね、それ。
俺たちのぶらり旅のキャッチフレーズにしましょうか。
『旅のお供のマスコット枠には可愛い妖精さんが必須!』
もちろんですとも。
チミコ先生あってのシジマ家ですから。
『シジマさんが優しすぎて何だか怖い……』
いえいえ、ヤツタカ シジマの半分は優しさで出来ております。
『あとの半分は?』
そりゃもちろん、鋼の自制心を誇る無敵紳士としての漢気ですよ。
『……ツェリアさーん、シジマさんが変!』
「大丈夫ですよ、今のシジマさんはロイさんに感化されたばかり」
「素敵なロマンスグレー紳士に憧れて背伸びしているだけですから」
「もうしばらく、優しく見守ってあげましょうね」
生暖かいまなざしは、時には冷たい目線にも勝る凶器……