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オリベラの街から少し離れた場所にマイホームを設営して野営中。
ムリアーノさんのお宅には、お泊まりどころか接近禁止。
いえ、出禁にされたとかでは無く、自主的にですよ。
大急ぎで帰還してきた旦那さんと、うれしそうに出迎えたムリアーノさんの、
あまりのアツアツっぷりに退避せざるを得なかったわけで。
『私も、ちゃんと空気読んだ!』
いや、あんなにぴったり寄り添うご夫婦の間には、
流石のチミコさんもお胸ダイブは無理でしょ。
「本当にらぶらぶでしたね」
「おふたりの幸せそうなお顔といったら……」
ツェリアさんも心配してましたからね。
まあ、案ずるより産むが易し清しこの夜、ってことで。
さて、オリベラでの冒険も一区切りついたけど、
俺ってどうやらここのダンジョンそのものから問題児扱いされてますよね。
また潜ってもまともな冒険が出来ないなら、
ダンジョン踏破絡みの面倒ごとに巻き込まれる前に、
次の冒険の準備でもしておきましょうか。
ピンポーン
……またですか。
ってか、おかしいでしょ。
うちの玄関には呼び鈴なんて付いてませんってば。
---
えーと、宅配便でした。
『黒猫嵐の魔導急便』、ですって。
ってか、凄いね、流石は異世界。
この住所不定マイホームにも、ばっちり配達出来ちゃうんですから。
『荷物、早く開けて!』
はいはい、ちょっと待ってね。
念のため箱を開ける前に、強化『鑑定』で荷物を丸ごとサーチしますよ。
……"中身は不明だけど安全"って、
よく分からんサーチ結果なんですけど。
まあ、安全なら開けても平気ですよね。
ごそごそ
……はて、
中には、小さな宝箱と手紙が一通。
どれどれ、まずは手紙を拝見。
〜〜〜
いつもダンジョンをご利用いただき、ありがとうございます。
オリベラダンジョン管理部門責任者、ミルルシュモと申します。
このたびのオリベラダンジョンの件では、シジマ家御一行様には大変なご迷惑をお掛けしたこと、心よりお詫び申し上げます。
当社の管理に不十分な点があったことを関係者一同深く反省しております。
至急、お詫びの品をお送りいたします。
また、大変お手数ではございますがお受け取りいただいた品にご不満がございましたら、着払いでご返送いただけますようお詫びとともに謹んでお願い申し上げます。
宛先は次の通りです。
エルサニア王国 魔灸の森 中央広場 フォリス様方 ミルルシュモ宛
弊社では以後問題が生じることがないよう、管理体制向上とチェック体制を徹底してまいる所存でございます。
ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
今後とも変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。
〜〜〜
……ダンジョン管理部門って。
当社ってことは、ダンジョンって会社で管理してるものなの?
『手紙、もう一枚!』
おっと、見逃すとこでしたよ。
ありがとね、チミコさん。
えーと、どれどれ……
〜〜〜
追伸
この件におきましては、是非ともご内密に。
ダンジョン管理のことが表沙汰になると、
お姉さん困っちゃう。
だから、ふたりだけの秘密ってことで、
よろしくね (ハート)
あの最終試練の問題、
一生懸命考えたんだけど、お気に召さなかったみたい……
渾身のネタがスベった傷心のお姉さんは、
フォリスさんにいっぱい慰めてもらってきます。
あなたのダンジョンライフに幸せが訪れますように。
ミルルシュモ
〜〜〜
……いかにも慌てて書いたっぽいラフな追伸。
ってか、素が出ちゃってますよ、ミルルシュモさん。
ネタとか言っちゃってるし……
そもそも、ふたりだけの秘密って言われましても、
うちの家族も読んでますから。
まあ、この件はこれ以上突っつきたくないし、
俺たちが黙っていれば面倒ごとになったりしないでしょ。
たぶん……
「宝箱、開けちゃいます?」
……おっと。




