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「来るのをずっと待ってたんですけど」

「しょうがないからここまで来ちゃったけど、いつの間にか家なんか建ててるって、どういうこと?」



 ……玄関開けたら、いきなり責めたてられた、俺。


 お顔を真っ赤にして口撃してくるのは、


 めっちゃ怪しげな装束の娘さん。



 えーと、家に入ってもらっても、事案にはならないよね……




 ---

 



 訪問者は、魔王さんでした。


 遠くに見えるあのお城から、わざわざ来てくれたそうです。



 ところで、こんなにあっさりおうち訪問されちゃったってことは、


 俺がマイホームに付与した各種強化結界が、


 この階層では全く役立たずだってこと?


 いや、魔王さんの実力がマジ魔王だったっていう可能性の方に賭けたいね。




「そもそも、魔王城をガン無視するなんて酷くない?」

「怪しげなお城があったら、どんな危険を乗り越えてでもそこを目指すのが冒険者としての矜持でしょ」


 いえいえ、怪しきに近寄らずってのも、冒険者としての心得かと。


 とりあえず、自己紹介、お願いします。




 魔王オーシェルゼニアさん。


 お仕事は、オリベラダンジョンのラスボス。



 とある存在から、このフロアの管理を一任されて、


 以来、ずっとラスボスとして君臨してきたそうです。


 本人は、箔付けのために魔王を名乗っているとか。


 つまり、魔王 (自称)



 衣装の方は、実にそれっぽいのですが、


 顔立ちは、童顔で可愛らしすぎるし、


 頭の両脇の立派なツノは、取って付けたみたいで全く似合ってないし、


 スタイルは、誠に遺憾ながら迫力不足だし、


 そもそも、お茶とお菓子に夢中な様子が、もう普通に乙女。




「なんか、目付きが怪しいし」


 よく言われます。


 それはともかく、ご用件は?



「だからっ、せっかくこの階層まで来たのにラスボスを待たせるなんて、冒険者として駄目駄目でしょ」


 いえ、確かに俺たちは冒険者ですけど、


 ダンジョン攻略に来たわけじゃないので。



「じゃあ、ナニしにここまで来たの?」


 えーと、不測の事態と言いますか、不慮の事故と言いますか、


 突然こんな所まで飛ばされて困ってます。


 決してヤル気満々な攻略パーティーではないのです。



「……おかしいと思った」

「久しぶりに仕事関連の連絡が来たと思ったら、変な冒険者が来たから早めに追い返してってことだったし」


 はい、おっしゃる通り、変な冒険者ですよ。


 行く先々で言われますから。



 それで仕事絡みってことは、つまりは上司からの無茶振りですよね。


 ってか、最近はラスボスにも上司がいるんだ。



「上司じゃなくて、友達」

「それはいいんだけど、お城に来ないんだったら自宅でお茶なんかしてないで早く帰ってよ」


 えーと、出来れば正式な方法での帰り方を教えてほしいのですが。


 俺の能力を使えば脱出可能とは思いますが、


 正規の手順を踏まないでさらっと帰っちゃうと、


 後々、冒険者ギルドとかラスボスさんにご迷惑が掛かりそうで。



「だったら、お城まで来て最終試練を受けてちょうだい」


 それってひょっとして、


 これまで受けた冒険者たちが、二度とヤリたがらなくなったアレでしょ。



「……だって、ラスボスだし」


 いやいや、リピーターが皆無になるような試練って、


 いくら最難関の最下層とはいえ、ダンジョン的には大問題でしょう。


 ひょっとして、クリア報酬に全然魅力が無いとか。



「失礼ねっ、私が何でも願いを叶えてあげるの!」


 ……微妙。



「……呪うわよ」


 正直、あまり怖く無いですよ。


 むしろ業界ではご褒美案件。



「……」




『この期に及んでフラグ立て!』


 よしなさいって、魔王さんも困ってますよ。


 それじゃとりあえず、正式な帰還方法とやらを試してみましょうか。



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