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マーリンVS猫娘

 二人は開始のブザーと共にリング中央に歩み寄る。トキネさんはまわりに聞こえない位の小さな声で

「あんまり派手にやって、ハオランに逃げられてもいけないからちょっとだけよ」と言った。

「ありがとうございます」マーリンは軽く会釈してそれに答えた後、両腕を曲げて正面に構えた。


 トキネさんが構える前に、マーリンは右肘をトキネさんに向かって、横から回し打ちしようとした。トキネさんは両手のひらでそれを受けるが、体ごと横にずれ動かされる。すかさずそれを追いかけて今度は左肘を逆側から入れてくる。トキネさんはそれを今度は体を後ろに動かして躱した。


「八極拳だナ」VIP席で見ていたイリヤが言葉を発した。

「八極拳てどんな拳法なんですか?」言葉自体は聞いたことがあるし中国拳法だとは思うが、よく分からないので僕はイリヤに聞いてみた。

「発祥については諸説アルが、特に接近戦が得意ナ破壊力重視の拳法ダヨ。肘を使った攻撃が特徴的ダネ」さすがイリヤは格闘家なだけあって詳しい。

「でも破壊力を重視スルあまり、間合いをとらレルと届く技が無い」そうイリヤは続けた。


 リング内でもイリヤが言ったように、トキネさんはマーリンと距離をとっている。しばらく間を空けてから、今度はマーリンは腕を伸ばして振り回すように攻撃を始めた。


「今度は長拳ダナ。八極拳の弱点は遠距離にアルので、ソレを補うために長拳ナドの射程の長い拳法を一緒に習得してイルものが多いと聞いてイル」再びイリヤが教えてくれた。


 トキネさんはしかしマーリンのその大ぶりの打ち込みを躱すと、そのまま彼の懐に入った。するとマーリンは今度はその腕を曲げて肘打ちに切り替える。トキネさんは今度は後ろに下がってそれを躱す。距離ができたところで二人は構えなおした。


「八極拳と長拳の切り替えがうまいですね」トキネさんはニッコリと微笑む。

「じゃあこういうのはどうですか?」そう言ってからトキネさんは上半身を全く動かすことなく、前に進んで瞬時にマーリンとの間合いを詰めた。


「縮地だ」VIP席で今度はダニエルが叫ぶ。

「縮地って?」僕はそっと草壁さんに聞く。

「先ほど三船氏の家でもダニエル達相手にやってましたよね。地面を蹴らず、前動作なしでいきなり相手との間合いを詰める古武術の足さばきと移動術です」


 急に間合いを詰められたマーリンであったが、瞬時に構えを変えて肘打ちに行く。するとトキネさんは今度もまた上半身を動かさずに瞬時に後ろに動いた。


「これも縮地なんですか?」そう聞く僕に今度はイリヤが答えてくれた。

「後ロに進む縮地なんて聞いたことが無いデス。伸地とでも呼ベバいいのか…」


距離が空いたところで、マーリンは長拳に切り替えて攻撃をしようとするが、それより早く振りかぶった状態のマーリンの懐にトキネさんは縮地で潜り込む。するとマーリンは今度は長拳の腕の振りを止めることなく、そのまま肘を曲げて八極拳に切り替えた。それをトキネさんは上腕で受けた。そうしてまた後ろに下がる。距離が空いたところで、今受けた方の腕をぶらぶらさせている。


「すごい威力ですね。腕がしびれました。長拳から八極拳への変化はもう二つが融合していると言ってもいいレベルですね。ここまで来るには大分精進したんでしょうね」トキネさんはそう言ってまたにっこりと微笑んだ。


 そうして彼女はまた構えなおすと、再び縮地でマーリンの懐に飛び込んだ。飛び込んで今度はマーリンの肘打ちが飛んでくる前に、横に動いた。上半身は動かない縮地の動きを横方向にしている。そこからが凄かった。前後だけではなく左右、それに斜め方向にも四方八方に体を動かし始めた。足さばきは速くて目視できないほどだった。

 ただ上半身だけは一切動かずに前方を向いている。その速度はどんどんと上がってくる。もうマーリンは攻撃の間合いを取ることができない。トキネさんの動きが早すぎるのだ。狙ったところに打ち込む前にもう次の場所に移動してしまっている。


 客席は先ほどのホーガンとの戦いとは逆にシーンと静まり返っていた。静まり返って初めてわかったのは、トキネさんは移動の際に一切音を立てていない。マーリンの攻撃がむなしく空を切る中、時たま『パーン』という音が場内に響きわたる。トキネさんがマーリンと距離を詰めるたびに体のあちこちを平手ではたいているのだ。

 平手打ちされた箇所はどんどん増えていく。こめかみや額、顎や首に始まって、胸部、みぞおち左右の上腕部、マーリンが蹴りを出せば太ももの内側、最後には金的にまで及んだ。


「参った!!」マーリンは大声で叫んだ。

それがどれほどの力の差なのか、格闘技を経験していない人間にも明らかだった。勝負がついた後も会場は静まり返っていた。

 その事に気が付くとトキネさんはマスクの上から頭を掻いて、その後両腕の拳を軽く握りしめ、肘から曲げて手首を曲げて前に構え、右足は膝から曲げる…これは猫のポーズだ…


「ちょっとやりすぎちゃったニャー」とカメラに向かってそう言った。

客席は全く反応せずに静まり返っている…。


でも猫ポーズも最高にかわいいですよトキネさん。

この小説はカクヨムにも投稿しているんですが、なろうの方は折角あとがきを書き足せる機能があるので、少しは書いていこうかなと思います。最初トキネさんの猫マスクは、タイムボカンシリーズのドロンジョ様の耳が小さい感じなイメージでした。でもタイガーマスクももう少しネコに寄せていくと可愛くなるかもしれないですよね?今のイメージはそちらに近いかもしれません。折角なので、このマスクは今後とも出番があったらいいなと思います。

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