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7.悪役姫は、離縁に向けて画策する。

 狩猟大会のレセプション会場は華やかなものだった。会場中色とりどりの花が咲き誇り、舞台上で奏でられる音楽や艶やかな催しがゲストをもてなし楽しませる。

 レセプション自体は滞ることなく進み、毎年のことながらゲストを満足させる持てなしとしては最高のものと言える。

 狩猟大会は国内の上級貴族だけでなく各国の要人も招待する大規模なイベントだ。

 本日は開催のレセプション。そして2日目に狩猟大会が行われ、表彰式のち閉会の宴となっている。その後数日間に渡って各国との会談の場が設けられるので、皇太子であるロイにはこれから1週間はほぼ休みと呼べるものがないだろう。


(基本的にロイ様は過重労働なのよね。皇太子なのだから仕方ないんだけど)


 そんな状態の彼に前回は自分の子守りまでさせた。それではいい思い出とは言えないよなぁとアリアは改めて思う。

 隣にいるロイの事をチラ見する。麗しい皇子様は、涼しい顔をして挨拶を受けアリアを紹介してまわる。

 きっと、今日に至るまでほとんど休めていないだろうに、疲労や気苦労など全く感じさせない。


「お疲れではないですか? 姫」


 一通り周ったところで、ロイはボーイから飲み物を受け取り、アリアに渡しながら彼女を労る。


(うわぁぁあ、キラキラオーラ眩しいっ。麗しい皇子様が皇子様みたいなことしてる)


 やばい、かっこいいと内心で騒ぎつつ、アリアは、ロイと同じくらい嘘くさいキラキラした笑顔を浮かべて礼を述べる。


(でも私は知ってる。この笑顔も全部偽り)


 側から見たら美男美女カップル。だが、この自分達が内心で互いの出方と腹の探り合いを繰り広げているなんて思うまいとアリアは飲み物とともに黒い感情を流し込む。


 アリアはずっと、考えていた。ロイに必要なモノを。


(2回目の人生でロイ様の過去を読んだから、今の私は知っている。なんで、ロイ様が私と結婚したのか)


 本来ならアリアはキルリアから出る予定はなかったのだ。だが、アリアの強い希望でこの政略結婚は成立した。

 それほどまでにアリアに気に入られようとロイが仕向けた理由は、アリアの引く血筋とキルリアが持つコネクションが欲しかったから。


(ロイ様は実は陛下と王妃の侍女との子なのよね。今の時点で私は知らない情報だけど)


 リベール帝国はその血を尊ぶ余り、過去近親婚を繰り返した。繰り返し過ぎて血が濃くなり、陛下と王妃の間に子ができなかったのだ。

 そしてロイの出自は、彼の政策を良しとしない血筋主義の神殿派たちの攻撃材料となっている。


 彼は今も水面下で王弟殿下やその子と権力争いを繰り広げているし、小説後半では家臣からの裏切りと反乱に見舞われる。


(だから、古くから王族である者の血が欲しかったのよね。けれど、結局ヒナを選ぶのだから、ロイ様にとってはキルリア王家の血など多分そこまで重要事項ではないはず。もっと、ロイ様にとって大事なのは)


 アリアは会場内にチラッと視線を走らせ、じっとロイを見上げる。


「どうしました、姫?」


 そんなアリアにロイは眩しいほどの微笑みと気遣いを向ける。


(ロイ様にとって大事なのは、諸外国との繋がり。特に、軍事国家ウィーリア。こことの同盟を結ぶ糸口が欲しいはず)


 ロイにとってアリアが結婚相手としてちょうど良かった理由の大半は、アリアをきっかけとして、アリアの姉達の嫁ぎ先や兄達が繋がっている諸外国との外交を円滑に行うためだ。

 つまり、外交さえ上手くいけばアリアを妻としておく必要がないと言える。


(リーベル帝国とキルリアの関係は同盟条約が覆らないように取り決めが守られれば必ずしも婚姻で繋ぐ必要はないわ)


 元々キルリアにいる父達はアリアを嫁に出すつもりなど無かったのだから、この辺の問題はどうにかなるだろう。

 つまり、ロイが繋がりたい相手国との外交目的を達成できれば、私たちは円満に離婚できるはず、とアリアはそう考えていた。


「お話ししたい方達がいますの。もちろん、殿下もご一緒に」


 アリアはニコッと微笑んで、ロイについて来るよう促す。

 いい感じに外交をこなして、いい感じにロイにとって用済みになり、いい感じにロイに嫌われ、いい感じにヒナがくる前に離縁され、この物語から退場する。

 それがアリアの立てた円満離婚、破滅ルート回避計画だった。


(ふふふ、我ながら完璧っ! 完璧過ぎるわ。見てなさいよ、ロイ様。今回のこのイベントが終わったら見事あなたから離縁状をもぎ取ってみせるわ)


 そんな決意とやる気に満ちているアリアは、悪女っぽい妖艶な微笑みを浮かべコツコツコツコツとヒールを鳴らしながら目的の人物たちに近づいていった。

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