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最強辺境伯の受難  作者: レオン
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プロローグ

メインに煮詰まるとついこういうのに逃げちゃうw


気分転換に書いているものなので、あまり期待せず気楽に読んで下さい!

―――ダーウィン辺境伯―――


国の中枢たる中央からはとても遠い、最南端の辺境に位置するダーウィン領を治める。産業に突出した物は無く、これといった資源も観光名所も無い、田舎中の田舎を治める家格の低い上に貧乏な最底辺貴族。


……―――


これが中央の貴族どもがダーウィン家に抱く感想らしい。ダーウィン領にいた時に()()()から聞いてはいたがそれを身を以って思い知ったのは、規定の年齢に達した貴族の子供が通う学園に入学してからだった。


「アレが田舎貴族か…。ふん、たしかに品性を感じない男だな」

「辺境の癖に貴族扱いされるなど…。あんな奴が何故この俺様と同じ学び舎に通えるんだ!」

「まあ顔立ちは悪くなさそうですけれど…辺境伯では話になりませんわ」

「やっぱり田舎者は野蛮そうですわね。近付かないように気をつけましょう皆様」


これが入学時に囁かれた言葉の数々。


「あのような卑しい者とあのお方が婚約しただなんて…信じられないわ!」


これは二年生になってから増えた言葉。


学園に通いだしてからずっとこの調子だよ…。令嬢達は俺が教室に入る度にヒソヒソ、廊下を通る時もヒソヒソと陰口ばかり。男どもに至っては罵詈雑言の嵐だ。まあ最後のは身分的に考えたら仕方ない気もするけど。


(男は直接手を下す事も出来ない腰抜け…。令嬢は家格や財産しか見ない醜い連中ばかり。はぁ〜あ…やっぱこんな所に通わずに領地にいたかったなぁ〜)


これでもそこそこ酷い待遇だろうに、それより悲惨な奴らもいるのが更に始末に負えない。


特待生という枠で学園に来た平民代表とされる者達。まともに勉強もしていない貴族のボンボンなんかと違い、彼らはそれこそ血も滲むような努力をして試験を突破した、謂わば優等生なんだ。


それを家柄だけで判断する愚者達は平民だからと、逆らえば一族郎党皆殺しだと脅迫。逆らえないようにした上でサンドバッグ扱いして、殴る蹴るの暴行を当然のように行ない、蔑んでいる。


(まさか中央の貴族がここまで腐っているとはね…。まあそれは傍観している俺も同罪か…)


こいつらは分かっているのか?国を支えているのは誰か、貴族が貴族でいられるのは誰のおかげなのか。お前達が蔑み平気な顔でいたぶっているその平民達のおかげなんだぞ。もし国が王家と貴族だけで保てるというならやってみろよマジで。


(こんな腐った狭い学園という世界に三年も閉じ込められる事になるとは…。なんて無駄な時間だ―――)


そもそも俺は学園に入るつもりなんてなかった。両親も既にダーウィン家の人間として十分な()()を重ねていた俺を当主に据えるつもりだったので、わざわざ通わせる必要を感じてはいなかったらしい。


そこを()()()が説得に乗り出してきた。自分も通うことになるのだが、心細いから一緒に来て欲しい、と。そしてその意見を無視するわけにはいかない()()のあるダーウィン家としてはこれを渋々承諾。俺はそれがダーウィン家の当主である父の決めた事なら従うしかないと、自分の意志を抑えて仕方なくここに来たのだ。


「それだけならまだ耐えられたんだけどなぁ〜」


憂鬱な日々だが言葉だけしか飛んでこないならさほど気にもならない。所詮ボンボンが喚いてるだけだからな。令嬢に関しても俺はまだ結婚なんて考えてもいないし、こんなハイエナみたいな女なんてこちらからお断りだ。そう、楽しくはないがどうでもいい、どうせ三年我慢して学園を卒業すれば関わる事もないんだから。


そう思って周囲から距離を置きながら平穏?な日々を過ごしていた俺の環境は二年生になった時に変わってしまう。


国王陛下への謁見の機に……―――


二年になり少し周りが騒ぎ出し始めた時期…。まだ婚約者が決まっていない者達はこの一年で相手の家格を調べ、本人のステータスも吟味して、実家に連絡を入れて婚約の話を持ちかける。貴族同士の婚約というのはまあそういうものだ。俺には関係無いなと騒がしい周りの後目に寮に戻ると入口に豪華な馬車が止まっていた。


(コレも俺には関係無さそうだわぁ〜)とその横を通り過ぎた時、後ろから声を掛けられる。


「貴方様がダーウィン辺境伯の御子息、アインハルト・ダーウィン様ですね?」


おっと〜…無関係だと思ってたが俺に用があるらしい。洗練された出立ちをした老紳士に呼び止められた。


(このご老人…かなり()()()。これは厄介な相手っぽいぞ…)


燕尾服を着ているところからして、おそらく執事だろう。だが執事でありながら纏う雰囲気は歴戦の戦士のようだ。こんな人間を寄越せるほどの身分が相手にあるということだろう。


「ええ。私がアインハルトで間違いありません。して執事と思われる貴方は?」


「これは、申し遅れてしまい大変申し訳ありません。私、王家にお迎えするセバスチャンと申します。此度は国王陛下の御命令で貴方様をお迎えにあがりました。詳しい事は馬車の中でお話致しますので、どうぞお乗り下さい」


有無を言わせない、って感じだな…。それにしてもまさか王家ときたか。ここは素直に従うしかあるまい。


「それはそれは。国王陛下のお呼びとあらばこちらから参るのが礼儀だというのに、お手間を取らせてしまい申し訳ありません。陛下をお待たせするわけにはいきません。すぐに参りましょう」


「ではこちらにお乗り下さい」


執事セバスチャンと共に豪華な馬車に乗る。学園の制服のままだが、由緒正しい学園のものだ、失礼にはならないだろう。そして俺とセバスチャンを乗せた馬車を目的地へと走り出す。その道中―――


「それで国王陛下がかように急な謁見を設けられたのは何故でしょうか?ましてや、御命令があればこちらから参上せねばならぬこと。貴方のような紳士まで遣わした理由をお聞きしたい」


態々迎えまで寄越すなど王族と同等の扱いに等しい。そこまでしたのには何か理由がある筈だ…。


「………今からお話するのは私の独断にごさいます。陛下にお会いになる前に余計な情報は出すな、とさるお方に申し付けられましたが、私は陛下にお仕える身。陛下にとって不利益になりそうなら、そのような讒言は聞く必要は無いと判断致しました」


「…つまり国王陛下を好ましく思わない者からの横槍があったと。そしてその者の言は陛下のご意志ではなく、例えその者に煩わしく思われようと自分が矢面に立つと…。陛下には素晴らしい忠臣がおられるようだ。一地方の領主の息子如きが無礼であると思いますが、貴方のような臣下がいる事は陛下の誇りであられるでしょうね」


「勿体ないお言葉にございます。されどさすがにその者の名を明かすまでは出来ない事をお許し下さい」


「勿論です。もしそれで陛下が貴方を失うような事になれば国の損失です。どうぞ、伏せるべきところは伏せたままお話下さい」


王家の執事であるこの方にくだらない発言が出来る、つまりはそれ程の身分が相手にあるということ。名を明かさないと言いながら、しっかりその存在を匂わせる…本当に素晴らしいお方だ。


「今回、陛下がお急ぎなられたのは、学園での貴方様に対する不当な扱いをお聞きになられた事が始まりです。国を守護者たるダーウィン家の御子息をまさか見下すとは…。陛下はその事に対しての謝罪と任務を果たし続けている事に対しての褒美を取らせ、これを払拭しようと急遽謁見の場を設けようとされました」


ふむ…陛下は父上と知己であるとは聞いていた。だが知己という間柄程度で、その息子が変な扱いを受けているからとここまで迅速に動きはしないだろう。…思った以上に陛下と父上の仲は深いのだろうな。


(まあ陛下がダーウィン家に与えた()()によるところもあるだろうが…)


そこから先を話し始めるようとしたセバスチャンの表情が苦渋に歪む。


「されど陛下がこの事態にどのような処置を取られるおつもりだったのかは今はもう知りようがありません。話を聞き付けたさるお方がこの件を同じ学園に在籍する娘なら対処が可能だから任せてもらいたいと進言してきたのです。辺境伯に偏った態度をその方にお見せするわけにはいかない陛下はこれを承諾なさいました」


「なるほど…。私が辺境からこちらに来て一年。中央の情勢に疎い我が身が恥ずかしいです。国王陛下がそのような厄介な事情を抱えておられるとは…」


(貴族の情報は一通り頭には入れているが、ここは濁しておこう!学園を卒業したら領地に戻る俺にとって中央のイザコザなんて関係ないことだし)


それにしても陛下が相手の対応に困るレベル…ね。これは侯爵以上の身分の家が関わっているな。そして陛下にすぐに進言出来るという事は、爵位以外に要職にも就いてて王城への行き来がある人物か。更にそこから俺と同じ学園にいる娘に任せるという発言。


(……―――この条件に当て嵌まるのは公爵家の二つだな…)


他の侯爵以上の中には陛下にすぐに進言を行える程の要職に就いている者はいない。または令嬢がいなかったり、いるとしてもまだ学園には通っていない年齢の子ばかりだ。


……そうなると―――


当主が現宰相を務める国で最も歴史ある筆頭貴族、ベルンシュタイン家。

もしくは国の食糧関連を一手に担う農林大臣を務める、ノーヴィング家。

このどちらかだろう。


だが、()()()以降、俺と断絶状態になっている娘の事を知っているノーヴィング家のあの方が俺の事を任せるなどと言うはずがない。ということは…。


「…ベルンシュタイン公爵、か……」


俺がそう呟くと―――


「………っ!!…な、なるほど。陛下がダーウィン家を、何より貴方を気にかける理由の一端を思い知りました。まさかこれだけの情報からそこまで辿り着かれるとは――」


(えっ?いやいや!そこまで難しい事ではないだろ!?逆に候補として残る二つの家の片方は無いと判断出来る俺にとっては簡単な問題だよ!)


まあ学園の貴族のボンボン達がこの国の基準なのだとしたら、それも仕方ないのかもしれないが…。それにあんな平和ボケしてる奴らと同じ土俵にいたら、俺はもう死んでるよ……。


「貴方ほどの方にそう言ってもらえると自信になりますセバスチャン殿」


「そのご様子だと私の力量も看破されているようですね。その知謀だけでも脱帽ですのに、貴方様の本来の力はそちらではないのでしょう。私もそこそこは修羅場を経験したきたつもりでしたが、貴方様は私などに見抜けるようなお方ではない。覗こうとしても、そこには深淵が広がるのみです」


そう、だろうな…。この人がどんな生き様をしてきたかは分からないが、俺からしたら所詮()()相手など容易だと写ってしまう。


俺が……いや、ダーウィン領の者達が相対してきた敵と比べれば児戯に等しいのだ、人間を相手取ることなんて…。力も残虐さも狡猾さもレベルが違う。


「…私は全てが力で片付くあちらの方が楽だと思えますよ。失礼を承知で申し上げれば、たしかに貴方と私では力に大きな差があるでしょう。単純に一騎討ちで勝敗を決するなら私が敗北することはない。ですがもし貴方がダーウィン領に来て死線を潜り抜けたら、その時は分かりません」


「仮に私がそうしたとしても貴方様には敵う気が致しません。私の推測程度ですら、貴方様のお力は王国を焦土に変えることも出来るものと考えます」


「それは買い被りというものですよ」


いやホント買い被りだよ?焦土になんかしたら後が大変じゃん?復興にどれだけのお金と時間が掛かることやら、途方もない金額になってしまうよ!……論点ズレてきた。


まあいいや。そんなこと考えても無駄だしな!それからもセバスチャンと世間話で盛り上がってると…。


「アインハルト様、間もなく王城に到着致します」


「分かりました」


セバスチャンの言った通り、王城の入口が見えてきた。そのまま入口を越えて庭を通り過ぎ、馬車を降りて長い廊下を歩く。さすがに王城に入ってからはセバスチャンも案内に徹している。


(長いよ廊下…。田舎者は建物の中でこんな長い距離歩く事ないんだ!立っている兵士はなんか睨んでくるし、馬車の中ではあんな楽しく話せてたセバスチャンとは話せないし…王城の廊下で喋りながら謁見に行くわけにはいかないだろうけどさ!もう早く着いてくれ!)


そんな俺の願いが届いたのか、いくら広い城と言ってもそこそこ歩いたからなのか(絶対こっちが正解)、一際重厚な扉の前でセバスチャンが止まった。


「アインハルト様、こちらにございます。どうぞ中にお入り下さい」


「分かりました。案内ありがとうございました」


いよいよ国王陛下とご対面だ―――

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