第3回 エレファントガン 初期型の連射式ライフル
色んなタイプがあるので、もっと長いのもあったはず。
次回はまともな銃器・火器を出します。
エレファントガン
リボルバーライフル
コルトM1855 エレファント
コルトM1855 リボルビングライフル
銃を連射するというのは近年に入ってから確立した技術です。
最近でこそ、銃は連射ができて当たり前という発想ですが、当時は単発式がほとんどでした。
手軽に発射ができるようになったもの実包という、火薬・弾頭・発火装置をまとめておけるようになってからです。
連射できるようになり、一般に普及したのは誰もが知っているリボルバーです。
このリボルバーを基本的にハンドガンに使われていたため、長距離のライフルをはじめとした大型の銃にはリボルバー構造を用いた物はほとんどなく、連射するためには砲身の数を増やすなどの構造にするしかありませんでした。
この砲身を増やしたタイプは、水平に銃口が並んだ水平2連式のショットガンなどが有名です。
これは安定した性能を持っているため、現在でも製造がされている程で、映画やゲームなどにも登場していますね。
当然、連射できるライフルというものを世界に先駆けて開発できれば、他国と武力の面で大きく差をつける事ができます。
そこで、当時の最新技術を集めて、連射できるライフルを作ろうとされたのが、このエレファントガンです。目指したのは水平2連なんていうチャチな物ではなく、5~6連射できる強力なライフルという、当時の銃の技術の水準から考えると幻とも思える程の高い目標でした。
その理想を体現するために、エレファントガンには5発の弾丸が装填できるリボルバー機構が採用、弾丸の加速させるための砲身も長く、全長は148センチメートルという小柄な女性の身長ほどにもなりました。
重量もなんと10キログラムにもなり、抱えて発射する事はできないほど、見た目的にもインパクトが大きい物が出来上がりました。
ガトリングガンのような大型の連射銃器もありましたが、これも弾丸が引っかかったり、連射しすぎてパーツの破損などの致命的な事故の可能性もあるばかりが、大型で台車ごと移動させなければならなかったため、銃のように持ち運びができなかった欠点もあります。
エレファントガンは巨大とはいえ、個人が持って運べるサイズの連射ライフルです。
これに期待されることがどれだけの事か、ガトリングガンは2階の窓に持ち上げられませんが、エレファントガンは2階の窓から構える事ができます。
ガトリングガンは草むらに隠してもその姿は丸見えです。エレファントガンなら、伏せて隠すこともできます。
多大な期待を込められたエレファントガンを今回は見て行きます。
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リボルバー銃をそのまま大型にするという発想は確かに合理的でした。
成功した連射機能をそのまま取り込めるという訳ですから、一見合理的だったんです。
しかし、リボルバーとライフルは最悪の相性だったと言う事に当時はだれも気が付かなかったのです。
リボルバーにはシリンダーギャップという物があります。
シリンダーの中で放たれた弾丸は火薬のエネルギーを砲身の中で弾頭に伝えて、銃口から勢いよく発射するというのがリボルバー銃の構造です。
連射するときにはリボルバーが回転するので、回転させて連射するためリボルバーと砲身の間にはごくわずかな隙間があり、ここから弾丸を発射した時に火薬に引火した時のガスや鉄粉が混ざった高温の空気が噴き出すようになっています。
これはリボルバーという都合上、逃れられないこの構造。
ハンドガンサイズであれば、高温の空気もそれほど多くないので、密着していてもTシャツを貫いて火傷を負わせる程度です。
弾丸を発射するときにリボルバー周辺に手を置かないといった基本的な対応で十分に安全を確保できますが、エレファントガンはそうもいきません。
かなり大型のため、吹き出る空気の量も熱もハンドガンの比ではありません。最悪、狙いを定めるために近づけていた顔まで焼かれてしまうほどになっています。
リボルバーギャップからの廃熱だけでも十分失敗作なのですが、ここでガスが噴き出していると言う事は、砲身の中で弾丸を加速させるためのエネルギーが漏れている事に他なりません。
つまり、大型のライフルにも関わらず、射程が短く、貫通力が低いという元も子もない結果をもたらしています。
さらに大型すぎるため、弾丸を発射するためのハンマーがリボルバー部分の後ろではなく、横についています。
ハンドガンの場合、リボルバーの後ろの撃鉄を起こしてから引き金に指をかけるのですが、このハンマーがリボルバーの真後ろについているので、銃全体のバランスが整っています。
エレファントガンの場合、ハンマーの位置が横にあるので、全体のバランスが上手くまとまらずに安定した射撃がやりにくいという、これもまた致命的な欠点を抱えていました。
結局の所、連射できるライフルというロマンはこうした欠点のおかげで、ロマンのまま開発が終わってしまいました。
もっとも、開発が終わった最大の要因は、シリンダーギャップから漏れ出た高温のガスがシリンダーに納めてあった別の弾丸に引火して暴発する可能性があったため、結局安全のために単発でしか運用ができなかったためだったでしょう。
デカくすりゃ、いいって、もんじゃない!
連射って難しいんですよね。