第11回 チェーンソー キックバック!
チェーンソー
最近はあっちこっちでチェーンソーが取り上げられていますね。
以前からゾンビが登場するゲームや映画などでも武器として登場してきてますが、アニメの影響などもあって特に注目されているアイテムです。
ゾンビや殺人鬼がチェンソーを構えて、ハンドガンで数発撃たれたくらいでは怯むことなく、主人公達に向かってうなりをあげるチェーンソーを振り下ろしてきたりします。
危ないなんてもんじゃないです! ブオンボオンといった駆動音に振動と、チェーンが回転するという動きも加わって、五感に働きかける恐怖感があります。
躊躇することなく人間に向かって振り下ろす! なんと恐ろしい!
これが出来るのも、倫理観を投げ捨てて、人間じゃないパワーや危険性を理解するということが出来ないからこそ……
「ゾンビだ、俺のチェーンソーを喰らえ!」
あ、ちょっと! それ危ないですよ!!
「うわぁぁ!! チェーンソーが俺の方へ飛んできた! 返り血もだぁぁ」
まったく、言わんこっちゃない。武器として使っちゃだめなんですよ。
まずチェーンソーの動き方から、確認していきましょう。
チェーンソーは、混合燃料というガソリンとエンジンオイルを混ぜた物を燃料として使い、これでエンジンを回して、チェーン部分を勢いよく回転させます。
原動機付自転車こと、ゲンチャリのエンジンがタイヤを回すためにチェーンを動かすようにです。
最近は電気式の物も出てきているようですが、パワーに関してはやっぱりエンジンのほうに軍配が上がります。
このチェーン部分に大工道具のノミの先端を小さくしたような刃がびっしりと取り付けられています。
チェーンを回しながら、チェーンソーを押し付けると、この小さな刃が次々と打ち込まれるようになり、目にもとまらぬスピードで対象を「削り切って」行きます。
これがチェーンソーで切断する時の原理ですね、削り切るので固い物や重い物なども途中で刃が止まりにくく、削り続ける事で切断まで持っていく事ができます。
いまでこそ、こうした機械的な物が主流ですが、刃の付いた鎖の両端に持ちてを付けて、右左と交互に引いて対象を切断する工具がチェーンソーです。
まあ、これも使い方を失敗すれば、チェーン部分を自分にまきつけてしまったりする事故にもなりますね。
機械の方のチェーンソーは手動のチェーンソーと違い、鎖の動きは一方向です。
上からチェーンを出して、下で引き込んで行くという向きになります。
どうやら、全世界を通じてこの回転方向は共通なんだそうです。それは、タイトルにもある「キックバック」など、チェーンソーを扱う上でのトラブルの可能性を少しでも下げるためです。
これが、武器として使えない理由の最大のポイントなんですけどね。
「じゃあ、どうやってチェーンソーで戦うんだよ!」
だから、直接の攻撃にチェーンソーは使っちゃだめなんだって。
では、武器として使うとどんな風になってしまうのか、確認しましょう。
昨今ではレスキュー用としてもチェーンソーが配備されており、こちらは特に高出力、金属の板すら切断する事も可能なほどの物があります。
「おお! それならゾンビも一刀両断できる!」
いや、だから、その、武器じゃないんですが……
相手のバリケードなどの防御設備を破壊したりする事には使えるかもしれません。
◇◇◇
~危険現象~
まず、チェーンソーを扱う上で発生する危険現象が3つあります。
「キックバック」「プルイン」「プッシュアウト」の3種類です。
どうやら、この3種類の現象全てをひっくるめて『キックバック』として説明している事もあったりするようです。
キックバックから順番に確認していきましょう。
チェーンソーから刀身のように伸びているパーツをガイドバーと言います。このガイドバーの回りを勢いよくチェーンが回転しているのがチェーンソーですね。
特に危険しやすいのが、ガイドバーの先端部分の丸みがある所の上部に切断しようとした対象に触れた瞬間です。
勢いよく回転するチェーンが引っかかり、チェーンソーに強い反発力がかかります。
その瞬間、ガイドバー部分が自分の方向に勢いよく跳ね上がってきます。両手はチェーンソーを握っていますから、自分の顔を守る物はありません。
パッと両手でコントロールしなおせば「驚いた」という程度で済みますが、これが一瞬でも遅れれば、自分の顔面が真っ二つになってしまいます。
これがキックバックです。
続いてプルインですが、これはチェーンソーが切断中に引っ掛かってしまった時に無理に動かすと発生します。
引き込もうとするチェーンが引っかかっているので、チェーンソーの方に体が引っ張られてしまいます。これがプルインです。
予期せぬ引っ張りなので、転倒などの事故の原因となります。
そもそもチェーンソーを使う場所が、山間部など医療機関から離れている上に、坂道や切断した木片などが置いてある怪我をしやすい場所なので、転んでしまえば怪我に直結する上に適切な治療を受けるまでに時間がかかるため、大変危険です。
考えたくもないですが、転んだ拍子に自分の体の上にチェーンソーが引っかかりから外れて降って来ようものなら、助かりません。
最後にプッシュアウトです。
これはも切っている間に発生するものです。ノコギリで板を切っている時に引っ掛かって動かなくなったりする事がありますよね。
チェーンソーだと、このように引っかかった時に本体が自分の方へ押し返してくるような力が発生します。
不意に押されたりすると尻もちついちゃいますね。
チェーンソーを持っている時に、尻もちって……
引っかかってくれているなら問題ありませんが、その拍子にチェーンソーが引っかかりから外れたら、自分の足に向かって落ちてきますよね。
他にもチェーンソーを扱う時には切断した直後に自分の足を切ってしまったり。
切ってる途中で刃が滑って、勢い余って振るような動きになってしまったり。
布や紐を切っている時に巻き込んでしまって、動作がとまってしまったり。
チェーンソーが手から滑って離してしまったら、勝手にキックバックして、エンジン音を響かせながらその辺を回転しながら飛び回ったり。
ね、危ないでしょ。
◇◇◇
~切ってみましょう~
「やっぱり! チェーンソー武器になるんですね!」
いやあの、違います。
まぁいいです、すでにゾンビの血液を浴びてしまって、ゾンビ化が始まっているようですね、可哀想に思考も鈍くなって……
それほど、チェーンソーに執着があるなら、そこの村人ゾンビを切ってみてください。
「よっしゃぁ!! 俺がゾンビになるまえに喰らえ!」
『ヴぁ?』
まず、チェーンソーの出力をめい一杯あげて下さい。
それで、ガイドバーの下の部分を押し当てるようにして使う事が基本です。でも、服とか着てるゾンビでしょ??
布とか紐とかチェーンに巻き込んじゃうと、チェーンソーの故障の原因になります。特に紐は駆動部の中にまで絡みついてしまうので即座にチェーンソーを止めないと大変危険です。
「あぁ!! 服がちぎれて巻き込まれた!!」
変な音と焦げついたような臭いがして、チェーンソーが止まりますっと、こんなふうになっちゃう上に……
『あぁ~、ヴぁ~』
「あれ!? ゾンビにあんまりダメージがない!?」
そうそう、実際にチェーンソーは削りという特徴がありますので、肉や臓器といった柔らかい所を切るには向かないんです。ただ切るだけなら、包丁とかの刃の方が柔らかい部分というのは斬り易いものです。
人間だったら、神経や太い血管がズタズタにされて治療しにくくなりますから、重症化しやすいんですが、ちょっとくらい肉が削げ落ちても動き回れるアンデッドタイプには効果は薄いでしょう。
『ぁ、ヴぁあ~!』
骨部分を切るなら、チェーンソーは効果があります。実際に手術で骨を切断するときなどにチェーンソー状の器具を使ったりします。
冷凍品でカッチカチの物もチェーンソー状の器具でカットして、食べやすく、運びやすく仕上げる事もあります。
腐りかけで、ボロ布みたいな物もくっついているゾンビのカットには向きません。
「そうか! 切ってだめなら、突いてみろ! ここに予備のチェーンソーがある!!」
さっきも言いましたが、ガイドバーの先端の上の部分が切断の対象に当たると、キックバックが発生して大変危険です。
つまりチェーンソーでの突き技はゾンビの体の上を滑って自分を切りつけることになってしまうので、絶対にやめましょう。
「その首もらっ……ぎぃややぁぁ!!」
だから、やめろって言ったじゃないですか。
『ヴぁ~!』
『ぁ~ヴヴぁ~』 バオン! ブゥゥオン!
あ~、もう、村人ゾンビだけだったのが、チェーンソーゾンビとセットになったじゃないですか。
え? じゃあ、どうするのってもちろん……
動きが遅いんだから、逃げるに決まってるじゃないですか。
あんな、重くてかさばる物持ってたら、早く走れないでしょ。
あ、そうそう、チェーンソー持ったまま走ったりするのも危ないので絶対にしないでくださいね。
転んだりしたら、自分や他人に致命傷をプレゼントしてしまいます。
便利な道具はそれだけ大きな事故にもつながるので、その凄惨さ、悲惨さから武器として扱えるように見えてしまうことがあります。
ファンタジーはファンタジーとして、楽しんで頂き、現実にはその危険性は持ち込まずに済むよう、正しく使いましょう。
うぉぉぉおおおお!!
レスキュー用に使われる高出力のエンジンを搭載したチェーンソーはガソリンを使用するようです。
まぁ、バイククラスのエンジン出力を持つチェーンソーって、それだけでモンスタークラス、恐ろしい物なのですが、これが事故現場・災害現場などで救助や避難の道を切り開いてくれるわけですね。




