第7回 ラーテル 世界1位の勇敢な動物より
リクエストで動物を頂いておりましたので、書いてみました。
ラーテル
ラーテル歩兵戦闘車
イタチの仲間に分類されており、南アフリカ全体から、インド・アラブ・エジプトなどまで幅広く分布されている動物。
この子がラーテルという世界1位の勇敢な動物とされており、今回はその名前をとった車両を紹介していきたいと思います。
まず、ラーテルの解説からいきましょう。
体長60~70センチ、体重7~13キロ、背中の毛は灰色で体の毛は黒になります。背中の毛と体の毛の間は白く縁取りが入って、この白い毛が頭から尻尾まで繋がって独特の模様を描きます。
前足と鈎爪が発達しており、穴掘りから木登りまで、器用になんでもこなします。
なんか、ハクビシンを大きくしたような印象がありますね。
肉食に近い雑食なのか、哺乳類・鳥類・爬虫類・果実・幼虫・ハチミツなど色んな物を食べます。
ニシキヘビとは『龍虎相討つ』とでも言うべきか、お互いに捕食関係にあり、ニシキヘビがラーテルを捕食することもあれば、逆にラーテルがニシキヘビを捕食することもあります。
ニシキヘビって全長700センチはあるリアルモンスターですが、これを全長70センチのラーテルが捕食するんですよ。
ラーテルはまさに巨人殺し、自身の10倍もの体調を持つ肉食の蛇すらも恐れません。
繁殖期の興奮状態となると、ライオンや水牛にまで襲い掛かります。
命知らずも大概にしなさい、とか言いたくなる捕食対象の広さと、猛獣に自分から襲い掛かるラーテルは「世界1無鉄砲」とも言われることがありますが、命知らずの無鉄砲では簡単に絶滅してしまいます。
ラーテルは防御力も非常に高く、中側の皮膚は非常にぶ厚くて、丈夫でありながら高い柔軟性も兼ね備えていて、ライオンの牙や爪を突き立てられても切り裂く事ができません。
この防御力と持ち前の素早さがあるので、単なる無鉄砲ではありません。
裏返しにされて、弱点である腹部分を攻撃されるか、水牛などの巨体に踏みつぶされたり、ニシキヘビに絞められたりしない限り死にません。
動きも早いので、このような攻撃は中々当たらない。ササッとかわして、カウンターで鈎爪と牙を突き立ててきます。
ちなみに、コブラの毒も効きません。大量に毒を注入されたとしても、ちょっと麻痺するくらいです。数時間もすれば元気にすばしっこく走り回るようになります。
自身の10倍を超える大型の猛獣にも襲い掛かり、素早い動きで攻撃をかわし、猛獣の攻撃を耐え、コブラの毒にかかろうとも死なず、逃げずに立ち向かってくる。
とんでもない動物がラーテルです。
◇
ラーテルの持つ勇敢さ、高い防御力、素早い動き、これらにあやかったのかラーテルの名前がついた歩兵戦闘車両が南アフリカに登場しました。
1968年に開発が始まり、1974年には量産に至っています。
装甲は20ミリと同じタイプの車両に比べると少し低いのですが、この装甲が機動性が高く、砂漠などの乾燥地帯でも問題なく運用できる要因にもなりました。
運転席は車両の丁度中心に埋め込まれるように設置されて狙われにくくしてあります。もちろん強力な防弾ガラスでガードしており、前方と左右を見渡せる広い視野も確保してあります。
歩兵戦闘車という名前の通り、4名の乗員の他に7名まで兵員を乗せることができました。
時に戦車にも分類されたりすることがあるようですが、私たちのイメージにある戦車のようなキャタピラとか大砲とかは持っていません。
代わりに大きなゴムタイヤ6輪を持ち。主砲に機関砲、副砲に機銃2挺を備えています。
タイプによってはゴムタイヤまで覆うように装甲が付けられたり、改造してミサイルや迫撃砲が搭載できるようにした車両もあります。
タイヤを使う装輪車両はキャタピラを使う装軌車両よりも凸凹道や泥などの不整地の走行が苦手だったり、小回りが利きにくかったりという欠点があります。
それでも、生産コストが安かったり、メンテナンスの時間が短くなったりという特典がありました。何より装輪車両は燃費が良いので、燃料の節約にも直結します。
特に南アフリカが戦地としていた場所は平地が多く、ジャングルのような地形がなかったため。貴重な物資を節約しながら、長距離を移動できる装輪車両が効果的でした。
そこそこ整地されている地形なら最高時速105キロという猛スピードで突っ込んできて、兵員7名を展開しながら、機銃掃射をしてくる車両です。
刑事ドラマとかで、パトカーが3台くらい現場に急行して急停車するシーンがありますよね。
あのイメージで、ラーテル3台が突っ込んできて、武装兵員21名、機関砲3門、機銃6挺を構えられるんですよ。
小さな施設ならあっという間に制圧できるほどの装備と人数を一瞬で展開できる上に、それを簡単に輸送してしまう車両がラーテルです。
南アフリカでは軍の近代化に伴い、パトリアAMVという装輪式多目的輸送車両に役目を譲り、ラーテルは退役する予定となっているようです。
1970年代からこれだけ長い期間運用されていた車両だったので、それだけ有能であったことが良く分かります。
頑丈で! 早くて! 勇敢!
命知らず、無鉄砲、恐れを知らぬ、勇敢などなど。
物は言いようだけど、ラーテルが世界1位の勇敢さという評価は納得です。
ハイエナ、ワニ、ニシキヘビ、ライオンとか居ない地域だと、ラーテルが生態系ピラミッドの頂点らしい。




