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楽園の守護者  作者: 神崎真
第二部1
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第十二話 縺れゆく糸 序章

 老人達の語る昔語りによれば、かの恐るべき妖獣共は、かつて星から墜ちてきたのだという。

 それは、よく晴れた、美しい夜のことだったらしい。

 幾つもの流星が夜空をよぎり、さながら輝く驟雨しゅううのごとく天蓋を彩った。

 それらあまたの流れ星たちは、大地や海へと降りそそぎ、激しい炎と衝撃をもたらしたのである。

 そして、

 以降、それまで見られることのなかった奇怪な生き物達が世界を跋扈するようになり、人々は恐るべき妖獣に命と財産を脅かされることとなったのだという。

 未だ、暦すら整備されていなかった頃のこと。正確な時代も、また実際の因果関係も定かではない。それでも、かつて大陸全域で目撃された、大規模な流星群が存在したことは明らかである。

 またここに、各地において星に由来する地名が数多く見られることへと触れておきたい。

 その代表的なものとしてまず挙げられるのが、国家セイヴァンの王都に存在する湖、星の海(ティア・ラザ)だ。

 この名の来歴については、一般に風のない晩、凪いだ湖面に映る星空がとても美しいところからきているのだと言われている。だがお伽噺のひとつとして、あるとき天空より星が墜ち、それが大地を穿った穴に水が溜まり、湖と化したが故にだと語る者もいる。

 同様の説話はセイヴァン南部のパルディウム湾についても語られており、これを口伝えによる伝承の変異ととるべきか、はたまた類似する地形に対する人間の発想の近似と考えるべきか、それとも事実、同様の状況が二つの土地を形成したのか……それを確かめるすべは、もはや遺されていない。

 また、同じく昔語りにのみわずかに語られる、星と共に現れたという不思議な技術を持った人々の存在。

 妖獣の起源以上に荒唐無稽とされ、忘れ去られて久しいそれらについても、遺された伝承はごく、わずかなものでしかなかった。



             ―― ディース=ベリィ著【伝承を語りし言の葉】より

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