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ツァラトゥストラの火  作者: MOJO
6/7

※※※※※※

 ピンチョスというのは串に刺した料理のことで、具材は色々で、何でも串に刺したものをピンチョスと呼ぶそうだ。

 日本とアジアの数国を除けば、ヨーロッパで蛸を食べるのはスペインくらいだそうで、柔らかく茹でた蛸とジャガイモの取り合わせは抜群だ。

 スペインは場所によって料理のスタイルが異なり、魚介をふんだんに使ったパエリアなどの料理が有名だが、この店のシェフは主に肉料理をメインに学んで来たとのこと。

 延々と続くカズミの愚痴に適当に相槌を打ちながら、私はやってきた料理に手を伸ばした。

 串を頬張る。

 蛸が思ってた以上に柔らかく、ちょっとした感動を覚える。

 白いお皿に映えるオレンジ色のソースは何だろう。

舐めてみると酸味はあまりなく、仄かな甘みと塩気、生クリームが入っているのか滑らかだ。トマトのペーストを生クリームで伸ばしたのだろうか。酸味がないから、種の部分は取り除いたのかも知れないな。

「あんたさあ」

「ん?」

「本当に食べてる時って幸せそうな顔してるよね」

「え、そうかな」

「そうよ。あと、メニュー見ながら食べるのやめなさい。子供じゃないんだから」

 カズミがグラスのワインを飲み干して言った。

 目頭を揉みながら、お代わりを店員に頼んでいる。

「目移りしちゃうのよね。食べてみたいものいっぱいあるし。本当はここにあるの全部頼んでみたいくらい」

「やめてよー。あんたの胃袋が無限でも、アタシの財布は無限じゃないんだから!」

「あは」

「ワリカンするこっちの身にもなってよねー」

 カズミが眉間に皺を寄せて文句を言った。

 もちろん、本気じゃなくて冗談交じりだ。

 大体、そういう当の本人は私以上にワインをガブ飲みしている。

 まあ、それには触れないでおくことにするけど。

「でもあれよねー。本当、楽しそうに食事すんだもん。仕事も今の部署じゃなくてさ、女性誌とかの担当やらせてもらえるように希望出してみたら?」

「そうだね」

 元々、今のところが希望じゃなかったし、食べるのは好きだ。

 ファッションや身だしなみにはそこまで興味はないけど、飲食店の記事などを書かせてもらえるのなら、それは願ったりかも知れない。

「でもどうかな。今のデスクに言っても通らないと思うな」

 デスクの沢田自身、今のところから移りたいと思っているだろうから、私の配置換えの希望には快く思わないだろう。

 そんなことを考えながら、カズミへ残した最後の一本を除き、四本のピンチョスを食べ終えて、何か言いたそうなカズミを目で制し、私は自家製ソーセージとカメノテを追加オーダーした。


 ソーセージは注文後すぐに出てきた。

 ボイルしたにしてはやけに早いなと思っていたのだけど、想像していたものとは大分違っていた。形は四角で、お肉のパテの中には緑や赤の色彩が混じり、お店の方に聞くと、中央の赤みがかった部分は血のソーセージが入っているそうだ。

 緑はインゲン、赤いのは人参だろうか。

 パテの周りをゼリーでコーティングしてある。この透明なゼリーはコンソメをゼラチンで固めたものだろうか。味付けも上品で、とても手間暇のかかった料理に思えた。

 塩茹でされたカメノテがテーブルに届く頃には、すっかりソーセージを堪能しきり、空のお皿と交換に白ワインをもらう。

 カメノテは名前の通り、一見、亀の手のように見えるが、実際は蟹や海老などの甲殻類の仲間だ。

 中の白い身を啜りながら飲む白ワインとのマリアージュは抜群だ。

 今日は女同士で口臭も気にすることもないし、あとはブルーチーズと固めのゴーダチーズか何かあれば最高かな。

 そう思い、ふと目線を上げると、すっかり出来上がったカズミの顔があった。

 寝不足もあるのだろうけど、今夜は少しお酒の回りが早いように感じる。もちろん、グラスを空けるペースもだけど。

 これ以上酔わすと話を聞いてもらうどころじゃ無くなるので、一先ずチーズは諦めてミネラルウォーターを二つ頼むことにした。

「こないだの仕事さ」

 私はミネラルウォーターのグラスをカズミに勧めながら言った。

「何か、反応イマイチなのよね」

「ああ、脳ミソのー?」

 脳ミソとは身も蓋もない言い方だけど、カズミの酔い具合から、脱線したら話が長くなりそうなのでツッコむのは止めておくことにした。

「うん。私さ、あそこの研究所の所長に歴史の証人になって欲しいとかまで言われたんだよ」

「へー、なんだか大仰ね。でも、すごかったんでしょ?実際」

「うん、かなりね」

「それで?」

「うん、何ていうのかな。私が出来たのって、ちょこっと記事載せたくらいでさ、大層なそんなこと言われても、大した役にも立たなかったのかなって」

「ふむ」

 カズミは相づちともた溜め息とも取れるような息を吐いて、ミネラルウォーターのグラスを傾け、ゴクゴクと喉を鳴らして一息にグラスの半分近くの水を飲んだ。

「それで、どうしたいの?」

「え?」

「ゆかりは何か心残りがある。やり残したことがあるんでしょ」

 そうなのだろうか。

 画期的な研究の成果を耳にし、話を聞きに行った。ただ、それだけの事だったはずだ。

 何度か話を伺って、それ以上に興味を持ったのも事実だし、私自身がそれを記事にしたいと思ったのも事実だ。

 彼、エマノンにかつて起きたことは不幸な出来事だったかも知れないけど、今の彼や、彼の置かれた環境について、無責任な人権家に安っぽいヒューマニズムを振り回して語って欲しくはないとも思う。

 人類の未来などと言うと大げさかも知れないけど、可能性の一端は垣間見れた気がした。

 新しい世界の扉を開いたようにも感じたのだ。


 ーーそれで、どうしたいの?


 さっきのカズミの言葉が頭の中でこだまする。

 私は自問自答した。

 私はどうしたいのか。

 私はこれ以上、彼に対して何が出来るのか。

 ……いや、何かをしたいって、そもそも何でそんなことを考えているのだろう。

 仕事は既に終わっている。私の出来ることなど、もう無い筈だった。


 メールの着信に返事を打っていたカズミの瞼が重くなってきているのがわかる。そろそろ限界が近いのかも知れない。

 私はテーブルを通りかかった店員を呼び止め、会計をしてもらうように頼んだ。

 会計の際にタクシーを二台と普通のお水も二杯頼む。

 愚図るカズミに半ば無理やり水を飲ませて、タクシーに押し込んだ。

 明日は休みのようだけど、担当している漫画家の為に資料を集めるのだと言っていた。今日のお酒が残らなければいいのだけれど。

 私はカズミへとタクシーのドア越しに手を振った。

 カズミが窓の向こうで携帯電話を持ち上げ、指差している。

 メール送れということなんだろう。

 私は笑って頷き返し、走り去るタクシーに向かって手を振った。

 待たせていたもう一台のタクシーに乗り込もうとした時、見送りに出てきていた店員の男性に声を掛けられた。

 スペイン語の意味はわからなかったけど、多分、また来て下さいとかそんな内容だろうと思い、私は「ごちそうさまでした」と言って頭を下げる。

 タクシーの運転手に行き先を告げ、私はシートに深く背を預けて、バックから携帯を取り出した。

 ここからカズミの住んでいるマンションまでは車で十分ほどの距離だったけど、流石にまだ着いてはいないかな。けど何かメッセージを入れておこうとロックを外し、画面を開くと、電話の着信とメールが入っていた。会社にいる時にマナーモードにしたのがそのままになっていたみたいだ。


 着信はデスクの沢田からだった。

 仕事が終わってから電話がかかってくることは滅多にない。

 会社に忘れ物でもしたか、或いは何か急な用事だろうか。時計は二十二時を少し回っていた。

 着信は五回。一時間ほど前から十分置きにあった。

メールも沢田からで、こっちはつい先ほど。内容は『すぐに電話しろ!』だった。

 私は慌てて、沢田の携帯に電話をかけた。

『おい、何やってんだ!さっきからずっと連絡してたんだぞ!』

「すみません。マナーモードにしたまま食事に行ってしまって」

『これだから、若い女は……』

 しばらく小言が続きそうな雰囲気だったので、私は早めに用件を訊くことにした。

「何か緊急の用だったんですか?」

『あ、そうだった』

 沢田が電話の向こうで咳払いをする。

『一条、お前さ、森村教授のところに行ってたよな。何ヶ月か前に。ほら、こないだの記事のさ』

「ええ、でも森村先生のところには取材というか、バイオテクノロジー研究所の木戸原所長にご紹介いただくために、お伺いしていたのですが」

『そんな事はどうでもいいんだよ!』

 電話の向こう側で沢田が鼻息を荒くしているのがわかる。

『その森村さんなんだけどな、どうやら火事で亡くなったらしいぞ』

「えっ?」

『警察関係者から聞いた話だから、間違いないぜ』

「火事で……御自宅で、でしょうか」

『ああ、そうみたいだ。原因はまだ解ってないんだそうだが、放火の線は薄いらしい。煙草かなんかだろうって言ってたな』

 沢田の同期に警察関係のお偉いさんがいるって自慢していたことがあったけど、本当だったのか。

 電話の向こう側がガヤついているのは居酒屋かどこかだろう。案外、その同期とやらと一緒に飲んでいるところなのかも知れない。

『それで、お前、明日暇だろ。ちょっと様子見に行ってこいよ。向こうさんのこと、知らないわけじゃないんだしさ』

 明日は休日だし、暇と言えば暇だけど、新聞記者でもないのに火事の現場に行ってどうしろというのか。

 それでも、火事の被害に遭われたのが森村老人だけなのか、それとも奥様もなのか、気にならないといえば嘘になる。

 何度となくお伺いし、色々と話をして下さった森村老人に花を手向けるくらいのことはしたいと思った。

「わかりました。明日、見に行ってきます」

『あ、わかってると思うが、これ仕事じゃないから。移動は自費でな!』

 電話の向こうにも聞こえるほどの溜め息を吐いて、私は「分かってます」と言って通話を切った。

 一日の、最後の最後にどっと疲れを感じたけど、とにかく明日、時間を作って森村邸へと行って来ようと思い、自宅へと向かうタクシーの中でわずかな時間、目蓋を閉じた。


  ・


 翌日は朝から強い雨が降っていた。

 前日の予報では曇りのち雨とのことだったが、台風が東にそれたせいで、ここら辺は一日ずっと雨が続くそうだ。

 この一年で通い慣れた道も、目的地が近づくにつれて自然と足が重くなるのがわかる。

 森村邸へと続く最後の角を曲がると、そこに見慣れた風景はなかった。

 もともと新聞は取ってなかったし、ここ数日はテレビのニュースもチェックしていなかったので、まさかこんなことになっているなんて知りもしなかった。

 ネットで検索してみたのだけれど、火事は二日前のことだったらしい。

 非常線が張られ、立ち入り禁止となった森村邸は、門とわずかな垣根を残して見る影もなくなっていた。

 焼けて崩れ落ちた屋根。黒い墨が塔となって数本、まるで苦しみ差し出した手のように伸びているのが見える。

 辺りには近所に住む町民だろうか、幾人かが道行く足を止めて焼け跡を眺めていった。

 ビールの雨合羽を着た警官が一人、雨に打たれた体を温めるかのように、体を揺らしながら立っているのを見て、私は少し躊躇いつつ声をかけた。

「あの、すみません」

「はい?」

「ここの、森村先生の知り合いの者なのですが、火事に遭われたと聞いて」

 私は警官と簡単なやり取りを交わし、ネットの記事で知ったことの再確認をした。

 火事の現場にはお二人のものと思われるご遺体があり、煙草の火が原因であるという現場の検証結果も出たとのこと。また、近いうちにここも片付けられるだろうとのことだった。

「亡くなられた方って、お偉い先生だったみたいですね」

 人の良さそうな壮年の警官は、話しかけられたのがよほど嬉しかったのか、聞いてもいないのに火事が起きた時の様子などを語ってくれた。

 警官との会話の途中、手ぶらで来てしまった事に気がついたが、火事の現場には献花されてる様子もなく、もしかしたら今日まで現場の検証が済んでおらず、物を持ち込むのを止められていたのかも知れない。私は警官に礼を言って、その場を立ち去った。


「今日は、一条さん」

 大きな水溜りを避けながら足早に駅へと向かっていた私は、そう声を掛けられて、背中が濡れないようにと深く構えていた傘を持ち上げ、声の方へと顔を向けた。

 数メートル先に男性が一人、傘もささず私の方を見ながら立っている。

 柔和な笑顔が、でもどこか作り物のように思えて、私は背筋にわずかな怖気が走るのを感じた。

 辺りには他に人気はないし、あの人で間違いないと思うのだけど。

 私は軽く頭を下げて、男性の方へと歩み寄り、二メートルほど手前で立ち止まった。

 二十代半ばから三十代にかけての特に特徴もない、どこにでもいるような男性。

 やっぱり見覚えがない。

 仕事の関係で以前に会ったことがある人だろうか。

「どちらかでお会いしたことが?」

 私は沈黙に耐えられず、声を掛けた。

「ええ、お目にかかるのは今日で三度目になります」

 男性は口元の笑みを絶やさずにそう答えた。

「ですが、その内の一度は、こうしてお話しすることが無かったですし、最後に言葉を交わしたのも随分と前になりますが」

「そうでしたか、すみません。このような場所で知り合いに会うとは思わなかったもので……ごめんなさい、どこでお会いしたのか思い出せなくて」

「ああ、そうでした。この姿では初めてになります」

「え?」

「一条さん。貴女なら、なれますよ」

 その時、初めて彼が心から笑ったように思えた。

「貴女は僕の唯一の理解者ですから」

 そういって男性は手を差し出した。

 ーー左手?

 私は躊躇したが、知り合いかもしれない男性から握手を求めているのに、それを無下にするのも悪いと思い、手を伸ばし、軽く触れる程度に握り返した。

 その瞬間、左手から心臓へと突き抜けるような痛みが走り、目の前が真っ暗になる。私は立っていられなくなって、その場にうずくまった。


「あんた、大丈夫?」

 誰かに声をかけられて、私はうずくまったまま顔だけを上げた。

 買い物袋を下げたおばさんが心配そうに私を見ていた。

「……あ、大丈夫です」

「顔色悪いけど、本当に大丈夫?」

「はい。すみません、ありがとうございます」

 私は立ち上がり、お礼を言った。

 さっきまでの痛みは消えていて、左手には僅かな痺れだけが残っているだけだ。

 心配顔のおばさんには何度も頭を下げて、それから私は思い出して辺りを見たけど、既にあの男性は私の前からいなくなっていた。

 痺れの残る左手をさすりながら、私はとにかく早くこの場から立ち去ることにした。


  ・


 火事ですっかり焼け落ち、見る影も無くなってしまった森村邸を後にした私は、その足でしばらくぶりに実家へと帰ることにした。

 道中、母の好きな洋菓子店でマドレーヌとイチゴのタルトを買って行く。それと私の好きなモンブラン。

 弟がいるとうるさそうなので、一応二つほど余計に買うことにした。

「ただいまー」

 玄関を上がり、居間に顔出すと、テレビをつけたまま父がソファーでうたた寝をしていた。

 母が台所から顔を出し「あら、随分とご無沙汰してたわね」と笑いながら皮肉を言った。

「これ、そこで買ってきたやつだけど」

「あら、わるいわねえ。気を使わせちゃって」

 母の目尻が下がるのを見て、食い意地が悪いのは遺伝かも知れないと思った。

「あら、あんたそれ、どうしたの」

 母がお土産を差し出しす私の手を見て言った。

 そう言われて見ると、私の左手の手首から肘の付け根にかけて火傷のような痕が出来てるのに気付く。

 痛みも痺れもなくなっていたので、すっかり忘れていた。あの時に出来たものだろうか。

 よく見ると炎が立ちのぼるような、そんな形にも見える。

「それ、リヒテンベルク図形ってやつだろ」

 いつの間にか弟が私の肩越しに覗き見ていた。

 高校に入ってから急に背が伸び出した弟は、昨年くらいには私の身長を抜き、今は頭一つ分ほど大きくなっていた。

「……何それ」

「雷とかに打たれた時になる火傷の痕だって。ねえちゃん、落雷にでもあったん?」

「そんなわけないでしょ」

 私は買ってきたケーキに手を出す弟の手を叩いた。

「大体、雷に打たれてたら、お土産持って実家に顔出せてないわよ」

「あれ、ねえちゃん。科学雑誌に記事書いてるくせに知らねーんだな。落雷にあっても意外と死なねーんだぜ」

「そうだった?」

「うん。今読んでるマンガに書いてあった」

「なんだ。ソース、マンガなの」

「そう言うけどさ、今時のマンガってばかに出来ないんだぜ。結構、専門的なことも書いてあんだから。あ、モンブラン、もーらい」

 そう言ってケーキを取り上げ、弟は久しぶりに会ったのにもかかわらず、二階の自室へと騒々しく階段を駆け上がって行ってしまった。

「あんた、それ大丈夫なの?」

 母が心配そうに聞いてきたので、私は痛みもないし大丈夫と答える。痕が残らないといいのだけれど。

「なんだ、喧しいな」

 お茶とケーキを持って居間に戻ると、父がちょうどうたた寝から目覚めたところで、そう呟いた後に私のことを見つけ、キョトンとした顔で「あれ、帰ってたのか」と薄くなった頭髪を撫でつけながら言った。

「用事のついでにちょっと寄っただけだから、直ぐに帰るけどね」

「なんだ、久しぶりに来て。夕飯くらい食っていったらどうだ」

「夕飯て、まだお昼過ぎじゃない。明日もあるんだし、そんなに長居しないわよ。それよりケーキ買ってきたから、お茶にしましょ」

 私がそう言うと父は嬉しそうにテーブルの上を片付け始めた。


「あらやだ、最近、火事が多いわね」

 ケーキを食べつつ、一通り家族談義を済ませた後、テレビのニュースを見ながら母が言った。

 確かにここ最近、火事のニュースをよく耳にするが、時期的なものもあるのかと深く考えずにいた。

「一人暮らしなんだから、あんたも火の元に気をつけなさいよ」

 一人暮らしと火の元に注意するのは別だと思うのだけど、何も言わずに頷く。

 そうしないとまた、良い人はいるのか、結婚はしないのかといつもの話題に持ち込まれてしまいそうだったから。

 ニ時間ほど、久しぶりの家族の会話を楽しみ、母が夕飯の買い物に立ちそうな頃合いを見計らって、私は両親に別れを告げた。

「次はいつ帰ってくるんだ」

 玄関先で、今度はうなぎでも食いに行こうと言う父に、私は笑って「次は帰る前に連絡するね」と手を振った。

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