2 町と登録
とりあえずの3話目です。
説明を受けた地点より幾らか歩き、町の入り口までたどり着く。
来た道を振り返れば、狭間の間の出口は小さい祠のような建物になっているのがわかる。
町は近くに来て気づいたことだが、中世風の町ではよくあるものが無い。
「外壁とかは無いんですねぇ」
「ここは平和だもんねー」
「外側に壁を作らなくても平気な作りになっているんですよ。ほら」
壁も無いので門番もいない。そんな町のメインストリートへ続く入り口付近を通ることをシールさんに促され通る。
「なんかふわっとした違和感が・・?」
「外壁代わりの結界です」
「すごいでしょう!」
無駄に自慢げにするアトホル。
「結界は壁の役割だけでなく、入退場の管理も行っているんですよ。先ほどふわっとした感じがあったでしょう?」
「あれで管理してるのですね」
「邪な者は弾かれるような仕様でもあるんです」
「わたしも何度弾かれたか・・・」
いったい何をしたのかアトホルは結界に邪悪認定されたことがあるようだ。
そうこうして町のメインストリートを眺めると結構賑わっている。
町の入口のすぐ傍には灯台くらいだろうか、他の建物よりも少し高めの塔も立っている。
「結構賑わっているんですね」
「お店も色々ありますので後ほどご案内させますね。この子に」
「あれ、シールさんも同行してくれるのでは?」
「今日はこの子が実習科目として、対象者と同行しながらの実習を選んだ対象者決定日だったのです。なので顔合わせが主目的で来たので、このようなピシッとした格好で来たのですが、さすがにこれで町の案内はちょっと・・・」
そう言われ見渡してみるとまぁ、スーツの人がいれば浮いてしまうような光景である。というか浮く。
俺も拉致時は営業に向かう最中だったので上着は着てなかったがスーツ姿である。
あとで何かしら服も揃えようと思う。
「なので今日の残りは手続き位なので、監督官の私は一旦退散し、ここから実習を始めてもらおうと思います。」
「えーシール姐もう帰っちゃうのー?」
「既にたくさん不手際あったのですからちゃんとやるように。いいですね・・・?」
「はい・・・」
「では明日はそこに見える展望塔の一階で待ち合わせとしましょうか」
「はーい」
「はい」
「時間は後ほどこの子宛に連絡入れますね」
「わかりました」
「では、また明日」
そう言ってシールさんは手を振りメインストリートの向こうへ去っていった。
「今日は早く終わったし明るいうちからビールでも飲もーかなー」
神と言えどもサラリーマンなのだろう。気持ちはわかるが聞かなかったことにしよう・・・
「それじゃ改めてわたしことアトホルが案内するね!」
「はいはい、よろしく」
「なんかシール姐との落差がすごいんだけど」
「そりゃあの第一印象とやられたことを振り返れば当然だろう」
「ひゅーひゅひゅー」
音が出ていない下手糞な口笛でごまかそうとするアトホル。
「気を取り直して、まずは町とこの世界を見てもらった方が話は早いわね」
切り替えが早いのは一部においては美徳だと思う。一部においては。
「とすると・・・」
「そこの展望塔へ行きます!」
そうしてすぐ傍の展望塔へ向かった。
入口も外観も普通に中世な感じであるのだが、中に入るとそこは別世界だった。
いや、見慣れた感じの世界だった。
ぶっちゃけると、とある電波塔のエントランスの様である。
違うのは中央にエレベーター代わりなのか魔方陣が敷いてあるガラス張りの筒が伸びている位だろうか。
売店まであるぞここ・・・
そして広さが外観と合わない。
「思ったより広いでしょうー」
「広さもそうだけど、外観と内観のギャップに驚いたぞ」
「空間拡張してるんだ。他のお店とかも外と中の広さはまったく合わないのよ。民家とか中には牧場が入っているとこなんかもあるくらい」
「さすが神様はなんでも有りか・・・」
「内観なんかは色んな世界と繋がってもいるから一貫性なんか無く、作った人の好みかな」
「ふーん、それであの真ん中の魔方陣?で上に上がる感じか?」
「そうそう、じゃあ行きましょ!」
さりげなく手を掴んで引いて俺を連れて行くアトホル。
こうなったら色々仕方ないかと諦めつつ魔方陣へと足を進める。
魔方陣は乗ったら二人の目の前にエレベーターの操作盤の映像がブゥンと現れ、アトホルがそれを操作し魔方陣が上へと運んでくれた。
乗っている時間からみて、中の広さだけでなく高さまで外観に作用されないようだ。
「結構な高さまできたんだなぁ」
「ここなら町もその先も見渡せるでしょ?」
見下ろすとたしかに町が一望できる。
歩いて全部をまわるとなると結構骨が折れそうな広さの町だったようだ。
建物の中身が見た目にそぐわない点を考えると更に規模は大きそうである。
そして町の更に遠くに大きな山が見える。
山の途中が規則的に輪切りになり、切った部分は浮いているそんな山が。
「あの山がここの中心で、偉い神様たちはみんなあそこにいるんだ。上の方なんかちょっと光って見えるでしょう?」
「後光のような感じだな」
「まさにそれよ」
このあと聞かせてもらった説明で基本的にはこの町でほとんど用が足りることが判明した。
「他にも町はあるんだけど、知り合いでもいない限り行く用は無いと思っていいわよ。様式とかも一緒だし」
「ほーう」
「それじゃざっくりわかったところで、本題の手続きしに行っちゃいましょうか」
「あぁ」
そして展望塔を出てメインストリートの中ほどまで進む。
「なぁ、ちょっと聞いていいか?」
「なんですかー?」
「通りを歩いてる人達?神様達?見た目様々なタイプいるのはわかるが、きらきらしてるのとしてないのがいるのはどうしてだ?」
そう、通りを行き交う者達は人型から一部だけ無機物や機械になってる者、全部がそうな者、半分動物や完全な動物、意味不明な形状など様々だった。
そしてその中でも周囲がうっすらきらきらする者とそうでない者が存在した。
「あーあれはですねー、きらきらしてる方は神に属する方々なんですよ。そうじゃない方はあなたの様な関係者や眷属とかの所謂その他です!」
「そういやシールさんもきらきらしていた気がするな。」
そこで隣のアトホルを見て気づく。
「お前は・・・してなくね?」
「はぅわ!人が気にしていることを・・・!いいですかよーく見てください!」
と言って目を見開きながら詰め寄ってくる。
「ほら、ここ!すこーしきらきら見えるでしょう!ほら!!」
頭頂部のつむじが若干ラメ入っているようにも見えなくはなかった。
「辛うじてそう見えなくも無いことも無い気がしないでもないかな」
「つーん、いいんですーこれから実習でメキメキ神格上げてきらっきらになるんですからー!」
「はいはい」
「むー」
こうしていると威厳も何も無い普通の残念な女の子のように思える。
だが忘れてはいけない。こいつの所為で俺がこうなっていることを。
そしてある建物の前に到着する。
「さて、ここが手続きをする場所、通称ギルドです!」
「わーお約束ー」
「感動薄いですねー」
「そりゃな、暇な時とかそういうラノベをよく読んでたからな。」
「ま、定番ですよねー」
「ここの神々はそういう趣向なんだな」
「あ、わたしも漫画とかそういうの好きなんですよ!」
建築にしろ好みや見た目にしろほんと自由だな神族。
「では入店ー」
「お店扱いなのかこれ・・・」
建物に入ってみるとやはり外以上に広かった。なんかのイベント会場かっていうほど広い。
入ってすぐの正面中央にカウンターがあり、受付が出来るようだ。
親切にも上に案内板がぶら下がっており、目に映る範囲だけでも「各種登録手続き」「職業斡旋」「依頼受付」「迷子センター」「フードコート」等々色々あるのがわかる。
ごちゃ混ぜに過ぎるだろうってほどに。
当初の目的どおりそんな中の「各種登録手続き」へ向かう。
道中アトホルがぐぬぬっという感じの表情で「職業斡旋」と「迷子センター」を見ていたが触れないでおく。
きっとお世話になりかけているのと、既にお世話になったのだろう。
受付カウンターまでそこそこの距離がありたどり着いて受付をしようと受付嬢へ話しかける。
「すみません、登録手続きをしたいんですが」
「いらっしゃいませ、どのような登録でしょうか?」
「そういえば何になるんだ?俺は」
とアトホルに聞く。
ここに至るまで勢いに流された感じが否めない。
俺はどういう扱いで、これから何をするかもわかっていないのだ。
「神候補実習の使徒、パートナー登録をお願いしますー」
「かしこまりました。」
使徒、パートナー・・・この実習生付きに登録後いきなりどこかに転生させられるとかでは内容で安心半分、こいつと一緒という不安半分な気持ちである。
「では実習生の方、パートナーの方、お名前をこちらに」
差し出された用紙に名前を書いていく。お互いがお互いの知る言語で書かれている用紙だったのかアトホルの方の文字は読めなかった。
「はい、これで問題ありませんね。では実習端末をお貸しください」
そしてアトホルがどこからか出したのは例のスマホ風端末だった。
それを受け取った受付嬢が片手に端末を持ち、両手を肩幅に開き何かを唱えたところ、何もない方の手に同様の端末が現れた。
「こちらがパートナーの方の端末になります。手にした後両手で挟んでそのまま少しお待ちください」
言われたとおりにすると、受付嬢が端末を挟んだ俺の両手に向けて手をかざして呪文を唱える。
するとお互いの手が光り、端末がスッと消えてなくなった。
「消えた・・・!」
「これで手続きは完了です。これであなたが念じることで実習生の端末の機能を部分的に念じるだけで操作できるようになりました。具体的には相互連絡とあなたの状態などが見れるようになります」
「へー便利なもんだ」
「これはパートナーと神候補の繋がりでもあります。これからはいつでも一緒。新しい門出を心よりお祝いいたします」
受付嬢の言葉の後、アトホルを見れば満面の笑み。
これからこのアトホルといつでも一緒と思うと・・・
なんかやるせなくなった。




