0 素敵な出会い?
読み専でしたが、試しにと書いてみました。
素人文章で拙いですが、長くするつもりは無いので軽い気持ちで読んでいただければと思います。
わたしリンドウ!
夏も間近で若干暑いけど、今日も元気に取引先へ営業に行くためダッシュ中!
あそこの曲がり角を曲がれば目的地はもう目の前。
定番っちゃ定番だけど、何か出会いの予感!
キキーッ! ドッ!
回想終了。
・・・うーむ、おかしい、何度思い返しても素敵な出会いにしては音が激しい。
ありきたりだが、ときめきを覚えるようなシーンとして回想してみても、音が重厚すぎる。
サラリーマンしてても青春なことを期待してもいいんじゃないかと抗議したい。
「・・・・-い」
しかしどんな出会いがあったにせよこの状況はどういう状況だろう?
と、眼下を見下ろしながら記憶を廻らす俺。
「・・・おーい、もーしもーし」
最近妙に運が良かったので、曲がり角とか少し期待してたんだ。
もしかしたらがあるかもしれない!
期待するくらいはいいんじゃないかな。
と俯きながら考えていると
「もしもーっっぷぇ!」
突然視界に何かが現れたので思わず腕で振り払ってしまった。
妄想という名の現実逃避を中断して、振り払った先を見てみると、お尻を突き出すような体勢で顔面から倒れこむブレザータイプの制服を着た赤みがかった金髪の女の子?が倒れていた。
なんだ幻覚か疲れているのかな、と視線を元の眼下へ戻しそろそろ現実を見ようと思う。
現在地、病院の一室、の「天井付近」。
ピッピッという規則正しい音と共にベッドで寝る自分。
その周りに実家の家族と医者。
幽体離脱・・?
もしくは事故にでも・・と考え、あの曲がり角の重厚な出会いは・・・と振り返ろうとした矢先のことだった。
パァーっと視界が明るく正面がまったく見えないくらいになり、声が聞こえてくる。
「人の子よ、あなたは不慮の事故で死んでしまいました。ちょうど私が通りすがった時にその現場に居合わせたのであなたの魂を回収、留めさせて頂きました。ありがたく思いなさい」
そしていきなり恩着せがましいセリフと共に、ギリシャ神話などの神様が着るような衣装を着た先ほどの金髪の女性が正面に現れた。
営業職の経験から言わなくてもわかるほど胡散臭い。
「悲しむことはありません。これも縁。私が色々便宜を図りましょう・・・」
目を瞑って無駄に発光している、この状況から言って怪しい女神?が勝手に色々のたまっている。
あまりにも怪しく、ハリボテ感のする演出のため、目を瞑っているのをいいことに背後にそろ~っとまわってみることにした。
・・・先ほどの制服姿が目前に現れる。
さっきの幻覚か・・・?
確認のため前側を見てみると神様っぽい出で立ち、でも背後は制服。
なんだこのリバーシブル不審者は・・・と首をひねっていたところ、
「ってちょっとなんで後ろに!見ないでくださいー!」
と先ほどまでの雰囲気はどこへやら吹き飛ばすよ様子で背後に気づく。
「なんなんだお前は?」
「見ての通り女神様です☆」
「はぁ・・・?」
「あなたを迎えに来ました!ささっ早く早く!私と一緒に来てもらいます!」
と慌てて俺の手を掴み、自称女神の背後に現れた扉へと見た目とは裏腹に強力な力で俺を引っ張る。
「なっっちょっ」
予想外な剛力と勢い、そして掴まれた手から何かが流れてくくる違和感。その状況に為す術もなく俺は扉へと引きずりこまた。
そう、拉致されてしまった。
「ふぅ、これでひとまずは・・・」
声が聞こえ、一瞬視界がぐわんと歪み、違和感含む諸々が過ぎ去った後俺の目に映ったのは白基調の部屋。
「むぅ・・ここは・・・?」
俺の手を離し正面に立つ自称女神。
常に正面をキープする。まだ正面だけの衣装なのだろうか。
「ここは狭間の間です」
「狭間だ・・?」
「そう、神が死せる魂を転生に導いたり、使途として拾い上げる際に通過する部屋です。」
「俺は死んだと・・?」
「今はまだ・・ですがもう助からないでしょうあなたを神の使徒として私の世界へ連れて行こうと思います先ほども話しましたがそんなあなたへの便宜としてあなたの残す者に少し幸運を授けました」
なぜか決定路線で一気にまくし立てる自称女神。
不信感が加速する。
「神というなら残してきた家族の今後を少しだけ・・・未来を見せてもらうことはできるのか?」
と思うのもこの部屋、ぶっちゃけ待合室のような装丁である。
外観は白基調の神殿風ではあるのだが、ベンチにテレビ的なオブジェが置いてあり、その前に置かれたテーブルには「未来」という文字が見れるリモコンが置いてあったのだ。
適当感パナイがそれよりも気になることはあるのだ。
「では未練を残さないためにも少し見てみましょうか」
と自然な動作で常に俺に正面を向けたままリモコンをポチる自称女神
そこに映る俺の家族は・・・
「一命は取り留めたから後は目を覚ますだけなんだけど・・・」
と見覚えのある病室でつぶやく姿。
カレンダーは10月・・秋が見えてくる時期だった。
そう、例の出会いから一季節後の俺は病室で植物状態だが生きてた。
「「・・・」」
ギギッっと音のするような動きで待合室の出口へ向き直る不審な自称女神。
「これ、生きてるよな?死んでないよな・・?」
「ででででも手遅れです!さっき慌てて手を引いた時に余計な力が入って私の存在が少し流れ込んでしまったみたいなんです!異物混入です!これはもう戻せませんし戻れません!さ、さぁ、これで思い残すこともなななないでしょう!さぁ、ここを抜ければ新天地です!」
「うぉわっ」
と泳ぎまくった視線で捲し立てながらあの剛力で俺を拉致し、待合室の出口を通り抜ける自称女神。
出口を抜けた先は晴れ渡る草原と少し先に見える中世風な町。
「「ようこそ神界へ!」」
・・・出口を抜けたら一人増えていた。
「・・・ダレ?」
「お待ちしてました。私はこの子、アトホルの監督官を務める者。シールとでもお呼びください。一応既に神として働いております」
少しキリッとした感じのできるOL風の女性がそこにいた。
自称女神とは違い、こちらは青みがかった銀髪とでも言うのだろうか。
「はぁども・・・山田竜胆です」
「改めて神界へようこそ、リンドウさん。この子から説明は受けていると思いますが・・・」
「いえ何も。どうやら死んでもいないのに拉致された感じです。あとなんか混じったらしい。」
あからさまに顔色が悪くなりはじめた自称女神。
そういえばこいつ、神様風の衣装から完全にブレザーな制服になっている。
ぱっと見、高校の頃のの制服を持ち出した大学生のようである。
「・・・詳しく聞いても?」
そこで俺は病室に至る所からを掻い摘んで説明した。
シールさんはその間アトホルの首をがっちり鷲掴んで逃がさぬようにしながら聞いてくれていた。
腕に青筋たってる、なにこれこわい
「そうですか・・・神界へ至る過程での違和感---神力とでも言いましょうか、この子のそれがあなたに混じってしまったことで結果的に今は戻すことの出来ない状況になってしまったと思われます・・・。また便宜云々のところも怪しいので少し確認して見ましょう」
といって片手でなにやらスマホのようなものを取り出し操作し始めるシールさん。
今は神もスマホ使うのかよ・・・
「わかりました」
シールさんから怒りのオーラを感じる・・・
「は、早いですね」
「申し訳ありません・・・あなたの最近の幸運、および今回の事故、犯人はこの子です」
怒りで力んでいるのか逃げないようホールドしたシールさんの手の先、アトホルの顔は青くなり白目をむいている。
まぁ神なら平気だろうと見なかったことにした。
「この子、アトホルがあなたをここに連れて来るため、まずあなたへ幸運を与え、それによる結果を残すことであなたの喪失を補填しようと考えたのでしょう。そして少し強引な運命操作でトラックにあなたをはねさせたと」
「まるで俺が目的のような行動だ・・・」
「ちょっと事情聴取してみましょうか」
と言って手を離し、指を天に向けるシールさん。
カッっと稲光が白目をむいているアトホルへ直撃し、一瞬ビクッっとしてから意識が戻るアトホル。
「はっ、川の向こうでおじいちゃんが!」
神にも等しく三途の川が見えるらしい。
「この人を攫った動機の説明を」
「ヒィッ」
そして臨死体験など無視するかのようにシールさんの聴取が始まった。
・・・聴取と言う名の見るに堪えない残虐ショーだったとだけ残しておこう。
「えーえーと、神実習で導くパートナーを選べってのがありましてー、どうせなら好みのタイプを・・・と言うタイミングで見つけてしまったんでつい行動に出てしまいました。てへ☆」
言い切ったところでちゅどーん!と再度アトホルへ落雷。
白目向いてプスプスいっているアトホル。
「本当に申し訳ありません。謝ってすむ事ではありませんが私からも謝らせてください」
と申し訳なさそうなシールさん。
「この状況ですし、あなたの置かれてしまった状態と、私たちについてを今一度説明させてください」
「お、お願いします」
神の怒りを間近で目撃した俺は、激しくも素敵な出会いから始まったこの状況について説明を受けることにしたのだった。