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エンジェルウォー・フロントライン  作者: Regulus
第一章 物語の始まり
9/33

天使襲来-2

 時間は戻りシャッターが開けられた直後、ミユキはシャッターの先にある光景を見ると血相を変え、シャッターへ走り出す。

 目線の先に広がる光景はある一種の恐怖が植えつけられるほどであった。


「おいおい遅刻してきた嬢ちゃんどこ行くんだよ!」

 モリタが片手を取りミユキを止める。

「遅刻してきた嬢ちゃんじゃありません!  ミユキです!」

ミユキはその表情を渋らせモリタの手を振り払い顔を近づけると、手を振り払われたモリタは申し訳なさが表情やしぐさに現れ、振り払われた手をさするようにミユキの顔を遠ざけた。

「分かったよ。悪かった。それじゃあミユキ、何しに行くんだ?」

「司令官にミツキと私の出撃許可を出してもらいに行くんです!」

「なんだ、そんなことか、それなら大丈夫だ」

 そう言うと、廊下の先からミツキが歩いてきた。

「ミツキ!」

 ミユキがミツキ目掛けて走り出し、自身の機体にしか興味を持っていないその手をとる。

「やっぱりそうだ! ミツキだ!」

「誰?」

「誰って酷いなミユキだよ!」

 ミツキは何かを隠すように首を傾げる。

「無駄だよ嬢ちゃん。こいつは記憶を無くしてるんだ」

 ミユキはその言葉を信じることができず、ミツキの体や顔を弄るように触るも、ミツキは嫌がるそぶりすら見せず、しまいには横を通り過ぎモリタの前へ立った。

「嘘でしょ、ねえ、ミツキ本当に私のこと覚えてないの?」

「お前なんて知らない。それよりもモリタ。出撃しても大丈夫?」

「勿論だ、それに、秘密兵器も仕込んである。そしてな、今回からこの嬢ちゃんがお前の部下として一緒に出ることになった」

「俺は要らないけど。まあ邪魔だけはしないで、えーっと…」

「ミユキだよ! それに安心して私こう見えても操縦技術だけは士官学校で一番の成績を残したんだから」

 わざとらしくしらを切るミツキに対して、誇らしげに胸を貼るミユキ。

 ミツキはその横をすまし顔で通り過ぎた。

「全く何なのよ!」

「まあ、気に病むな。ほら、お嬢ちゃんにもポーンが当たってるから」

「分かったけどそのお嬢ちゃん呼びだけは直しておいてください! って、待って! ミツキー!」

 ミユキはモリタの背中を強く叩きミツキの後を追う。

 モリタは背中に残る痛みを紛らわすため背中をさすろうとするも、手が届かずその場にいた誰もが滑稽と思える動きをしていた。

「痛ってーな、ちょっとは加減しろよ。ってもう居ねーし」

 背中に手が届かないとわかり、諦め後ろへ振り返るとミツキとミユキは、既にABFに搭乗していた。

 ミツキは背面にマウントしてあった鎌を手にシャッター前まで歩き始める。

「整備長!私の武器は?」

 ミユキの乗ったポーンから叫ばれる。

「そこにあるだろ!」

 モリタが指を指した先には2丁のハンドガンと、4つほどマガジンが置いてあった。

「弾はこれだけ?」

「まだ奥に4つマガジンがあるぞ」

「ホントだ」

 ミユキは、マガジンを両サイドアーマーに3つずつマウントさせ、ハンドガンの弾をリロードする。

 リロードした2丁のハンドガンを手に死神の後を追う。


 2人がシャッターを抜けると、戦場は大通りを境に両端に別れていた。

 右方ではオーディンが人馬型の天機と交戦。左方ではヴィーナス率いる第二兵団が大型の天機3体と熾烈な戦闘を極めていた。

「ミユキ、お前は左側に行け」

「何よそれ、私は……」

 続きを言おうとするとミユキのポーンの首元に鎌が構えられる。

「行け」

「はい……」

 死神から感じた殺意を感じ取ったミユキは、抵抗するもむなしくミツキに従う他なった。

 逆らえないと察し、ミユキとミツキは二手に分かれて戦地を駆け抜けていく。



 トオル率いる第一兵団は特殊装備を纏った天機と五分五分の戦いを強いられていた。

 部下の乗るポーンでは天機と互角ないし下回る戦闘力程しかないため、誰一人としてトオルの援護に向かうことが出来ずにいた。


「アモン、敵の数は?」

『想定から考えておおよそ15機程です』

「こいつの活動時間は」

『残り2分30秒です。まさか』

「そのまさかだ。根絶やしにする」

『余り無理はなさらないように』

 コックピットから見える天機を全てロックオンしたミツキは、口角を上げ目を見開きグリップを握りしめた。


「さあ、蹂躙の時間だ」


 住宅街に立ち並ぶ家屋を避けつつ死神が大型の鎌を構え、走り抜ける。

 一般兵が肉眼でようやく認識できるほどの速さで走る死神は、その大鎌を振り回し立ちふさがる天機を切りつける。

 死神が鎌を振り下ろすと目の前には天機と交戦するポーンの姿がカメラに映った。

「くそ、何なんだよこいつら!」

 ポーンが天機を押し返すも、天機は再び立ち上がり手に持っていた槍を構える。

 第一兵団の兵士が死を覚悟した刹那、天機の身体が縦に二つに裂けた。

「お前、なかなかやるじゃん。そうだ、部隊のみんなに伝えてほしいことがあるんだけど」

「な、何をですか」

「ここは全て俺が引き受ける。カオルの部隊の援護に向かってくれって」

「分かりました、それよりも本当に1人で大丈夫何ですか?」

 兵士の呼び掛けに反応し鎌をポーンの首元へ向ける。


「俺を舐めるな、いいから早く行け。殺すぞ」


 ポーンは死神の殺気に慌てふためきその場から逃走する。

『ミツキ様、少々驚かせすぎです』

「五月蝿い、それよりも後どのくらい?」

『おおよそ1分40秒程です』

「出力上げられるか?」

『問題はありません』

 ミツキはアモンの返答を聞くと口角を上げニヤリとほほ笑んだ。

「上々」

 その刹那、死神が構え自身の大足をアスファルトが抉れるほど踏みしめ、前方へ向け一気に攻めよる。

 死神は禍々しい足跡を残し、その地点から消えると同時にに一通の無線が入り死神は急減速し、その場で立ち止まる。


「何?」

「ミツキ殿、第一兵団、隊長以外退避完了しました、これより第二兵団の援護に向かいます。どうかご武運を」

「頼んだよ」


 ミツキは無線が切れるのと同時にフットペダルを踏みこみ死神を走りださせ、目の前に立ちふさがる天機を腹から真っ二つに切り裂いた。

 最も近い天機を、真っ二つにした死神は、その次またその次と切り裂いていく。

 

 死神が最初の天機を切り裂いてから数分、死神を取り囲むように人を組んでいた天機は抵抗する暇もなく死神に切り刻まれ、その場で崩れ落ちていった。

「これで終わりか?」

『はい、雑魚はこれで終わりです』

 その場に残った14機の天機をものの数分で切り裂いていく死神は、機体を天機から漏れ出したオイルを浴び、その容姿は死神を超え戦場を駆ける悪魔となっていた。

 死神の足元に広がるスクラップで出来た山の先ではオーディンが行動不能になり、その目の前では異形の天機がトドメを刺そうとしていた。


「どうやらここまでのようだな。雑魚と言って悪かったな、お前はなかなかいい戦士だったよ」


 人馬の天機から発せられた人声を聞きミツキの表情は豹変し、死神は人馬目掛けて走り出す。

 何か焦るようにフットペダルを踏みこんだミツキを見たアモンはその表情が憎悪に満ち、このままではトオルもろとも殺してしまうと考え、強制的に出力を下ろすもミツキは止まることを知らず天機への歩みを止めることはなかった。

『ミツキ様! 落ち着いてください! このままでは付近にいるトオル様も巻き込んでしまいます! あなたは仲間を殺してまで自分の目標を果たしたいんですか!」

 アモンの呼びかけはミツキの耳へ確実に通り、焦りを見せていたミツキの表情は徐々に冷静さを取り戻し、荒々しい操縦は的確に相手を攻め込むものへと戻っていた。


「お前の信念しかと見届けたぞ」

 人馬が槍を構えオーディンのコックピットに突き立てる。


(ここまでか……!)


 目の前の敵の強大さ、そして自分自身のふがいなさを感じトオルが抵抗を諦めたその時、今まで槍を構えていた人馬の腕が金属音と共に吹き飛ぶ。

「何事だ!?」

 トオルはその音の正体を確かめるべくその目をゆっくりと開ける。

 窮地に立たされたオーディンの目の前に立っていたのは、一機の死神だった。

「遅いぞミツキ」

「五月蝿い、それよりも立てる?」

 死神はその勲章とも呼べる傷つき汚れた手をオーディンへと差し伸べ、オーディンは死神のその手を戦士の誇りと共に掴む。

 しかし、燃料が残っていてもオーディンはすでに活動限界を迎え、腰から下が動かず立ち上がることはできなかった。

「いや、無理そうだ」

 トオルは立ち上がることのできない原因を確かめるべく機体の損壊状況の表されたパネルを見ると、脚部や腕部の関節部や出力系統の損壊により立ち上がることが困難となっていたが、運よくバッテリーボックスの損傷は左程なく、システムを維持することに関しては問題はなかった。


「すまんなミツキ、バッテリー以外ほとんどダメになってるみたいだ」

「そう、だったらバッテリー分けて」

「は?」

 トオルはミツキの一言に思考が追い付かず思わず声を上げてしまう。

「ミツキ、助けてくれるんじゃないのか?」

「いや、知らないよ。それはトオルが勝手に助かっててよ。俺はただ目の前の敵を倒すだけ、それはトオルが一番わかってるでしょ?」

 ミツキの偏屈な態度に妙な安心感を感じ、思わず口角が緩んだ。

「わかったよ、さあ早くやれ」

 トオルは、コックピット内のパネルを操作し、オーディンのバッテリーハッチを開けると、少々焦げてはいるが、その機能自体に問題の無いバッテリーが、剥き出しになって出てくる。

「残りのバッテリー貰うよ」

「好きにしろ」

 死神は自身から出たケーブルをオーディンに接続すると、腕をそぎ落とされた人馬がそのすきを狙い襲い掛かってくる。

「油断大敵!」

 その行動をいち早く察したトオルは辛うじて動いたオーディンの右腕を動かし、人馬の左ひざを粉砕させると、すんでのところで人馬は膝から崩れ落ちる。

「礼は言わないぞ?」

「言ってろ」

 オーディンが人馬の攻撃を防いだことにより、死神との接続が完了し充電が開始された。

「アモン、充電状況を逐一報告頼む」

『了解。ただ今10%』

 アモンが報告をし始めると、死神のコックピット内部にあるメーターの数値が上がっていく。

『30%……40%……50%オーディンのバッテリーが切れました』

「50%かまあ、動けるだろう」

 ミツキは多少の妥協をしたものの、死神への充電を確認しオーディンからケーブルを引き抜く。

「トオル、終わったよ」

「やっとか、こっちは予備電源でどうにかなってるがそっちは大丈夫なのか?」

「うん、動ける程度には」

「そうか……ミツキ! 気を付けろ! アイツまた動き出したぞ!」

 トオルが見たのは粉砕されたはずの左ひざが再生され、自分の足で立ち上がろうとする人馬の姿だった。

「分かってる」

 死神が振り返るころには、両腕を失くした人馬の天機は自らの四つ足を利用し立ち上がっていた。

「お前ら、いい加減にしろ!」

 人馬の天機はコックピットに内蔵されたマイクのスイッチを入れ、再び人声を発した。

「やっぱり君は喋る方なんだ」

 初めから知っていた風を装ったミツキの発言に疑問を持つトオルは、その事を問いた。

「どういう事だミツキ」

「何のこと?」

「喋る方ってのは」

 トオルの疑問はミツキにとっては愚問であり、いともたやすく受け流されてしまう。

「帰ったら話すよ、それよりも早くこいつ殺らないと」

 ミツキがトオルと話している間にも人馬は着実にその足を動かし、ミツキが気が付くころには死体の山の頂上へと到達していた。


「死神、俺がこの日をどれほど待ったことが、俺はお前を狩ることだけを目標にここまで生きてきた。俺の名前は0025番これがお前を殺す男の名前だ覚えておけ!」


 0025番がそう叫ぶと足元に広がる死体の山となった破壊されたはずの天機たちが立ち上がり、光につられて群がる蛾のように人馬の体へとまとわりついていく。

 人馬へまとわりついた天機は徐々に形を変えていき、人馬の破損した部位を補い装甲を厚くする。

『ミツキ、気をつけてください!出力が上がっていっています』

 物の数分で人馬の姿は原型を留めないほど変わっていき、全ての天機が人馬へ吸収される頃には、阿修羅の如く何本もの腕が生えた人馬のその姿は、神々しさすら感る容姿になった。

「アモン、あれはどのくらい強い?」

『そうですね、死神が全力を出して2体分です』

 アモンの言葉はオーディンのコックピット内へと漏れ出しており、トオルはその不可能な予測に口を出さない訳もなく、思わずコックピットを開けミツキへ叫んでしまう。

「待てミツキ。タダでさえカスタマイズされてるお前の死神2体分って、さすがのお前でも無理だろ!」

 対してミツキはコックピットから降りることはなく死神の頭部に内蔵されたスピーカーでトオルをなだめる。

「無理かどうかはやってみなきゃわからないし、それを決めるのはトオルじゃない」

 トオルとミツキが話していると、死神のコックピット内部にあるアモンのモニターの表示が変化する。

そこにはトオルのオーディンと同じく、


『function unlocked ok ?』


の文字が表示された。


「なんだこれ?」

「なにか出たのか?」

 ミツキはオーディンへその表示のスクリーンショットを送ると、トオルは慌ててコックピットへ戻りその表示を確認する。

 トオルはそれがオーディンにも表示されたものと同じ表示だと認識できた。

「何にかわからない英語が出た。俺、英語読めない」

「それな、恐らくおやっさんの仕業だ、とりあえずyes押しとけ!」

「分かった」


 トオルに言われるとミツキはモニターの下にあるyesボタンを押す。

 その刹那、死神のローブが取れ死神の本体が剥き出しになる。

 黒を基調としたボディに紫色のラインが入ったそれは徐々に禍々しい光を帯びていき、頭部からは二本の角が生え、胸部のアーマーが開く。

 脚部についていたプレートが取れフレームが半分露出し、ギチギチと音を立て腕が伸びていく。

 バックパックはパネルが剥がれ翼のように変形し、リアアーマーからは尻尾のように長くセンサーが伸びていった。


 トオルが間の当たりにした死神のその姿は、死神というよりも悪魔のそれと酷似した容姿へと変貌し、口のあるはずがないその頭には裂けるように口が現れ、吐息のごとく空気が漏れ出す。


『ミツキ、出力が上がっていきます。これなら、行けるかもしれません!』

 アモンはミツキに機体状況のメーターを見せると、出力系統などすべてにおいて数値が振り切れていた。

「なるほど。だいたい分かった」

 ミツキはその数値と、死神の姿から機体に起きた変化をすべて理解した後、足元のフットペダルを強く踏みしめるとバックパックから生えた羽から蒸気が吹き出す。

 その蒸気は家屋が崩れた際に生じた砂埃を巻き上げ、人馬の視界を奪った。


 0025番はその砂埃により死神を見失ってしまう。

「クソッ、死神はどこに行った?」

 妖々と光る紫色の線が人馬の周りを動き回り、人馬の装甲を徐々にそぎ落としていく。

 その線は二対の眼へと集中し、突如として人馬の目の前から消えた。

 消息を絶った死神を見つけることができず、うろたえるその傍ら死神は人馬の背後へ周り、脳天めがけて鎌を振りかざす。

 人馬はその攻撃を避けようと前進するも、死神の速さに追いつけず馬の胴体を切り離し、囮とした。

「へえ、器用だね」

「称賛敵ながら感謝するぞ死神、俺はどうやらお前を舐めて掛かっていたみたいだ」

 そういうと、天機の下半身は形を変え馬の前足のような形から、人間の足のような形状へと変化させ、機動力を死神と同等以上まで向上させる。

「ふーん。で? どうするの?」

 ミツキはそれを見て平然を装うように対応するも、内心の焦りは額からにじみ出る汗が物語っていた。

「俺には信念がある、仲間が死んでいった時に背負った業がある。貴様に受けた屈辱はこの手で晴らす」

 人馬はその信念を構えていた6本の槍に込め、攻撃態勢を整える。

「それで?」


「全身全霊を持ってお前を殺す」


 人馬の眼が照り輝くと、ミツキはその覚悟を受け止めるべくグリップを強く握りしめ、天機の攻撃に備える。


「やれるものならやってみてよ」


 ミツキは挑発するように死神の指先を動かすと、天機は死神目掛け槍を放つ。

 0025番はその槍が死神を貫通した姿を目撃するが、槍が刺さった死神は槍を残し天機の視界上から残像と共に消えた。

「どこだ!」

 人馬の天機はあたりを見回すも死神の姿は無く、その場には素早く飛び交う紫色の光が残っていた。

「クソ、ちょこまかと動きやがって」

 天機が乱雑に槍を振り回すも当たらず、その度に腕が1本ずつ落ちていき、いつしかその腕は二本まで減少していた。

 せわしなく動き回る死神のコックピット内は動くたびに赤く点滅していき、非常警報が鳴り響く。

「ったく、なんでkんなに警報なるんだよ。なあアモン、後どのくらい動ける?」

『30秒程です』

「警報を切ってくれ、あいつを殺すには十分すぎる」

『仰せのままに』

 アモンが警報を止め、ミツキの集中が一転へと絞られると死神の動きの無駄がなくなり、死神光る眼が天機の足元へと潜り込む。

「下か……!」

 0025番はその紫色の眼を目視出来たが、死神の機体性能は天機のそれをも上回り天機は股下から真っ二つに切り裂かれる。

 真っ二つに切り裂かれたもののミツキは器用にコックピットを残し、中からは気絶したパイロットが零れ落ちるように剥き出しになるのを確認すると、死神はその動きを停止させた。


『死神、活動限界です』


 アモンがそう口にすると死神の禍々しい光は収縮し、伸びた腕が元の長さに戻り、翼と尻尾が収納され、足のパネルは戻らなかったものの。その容姿は元に戻っていった。


 トオルはコックピットから降りると、元通りになった死神のカメラを叩く。

「やったなミツキ」

「いや、まだだ」

「どういうことだ?」

 死神のコックピットから出たミツキは半分開いた天機のコックピットを人一人通れるほどにこじ開ける。

 そのこじ開けたコックピットからは白いパイロットスーツを着た人間らしき生き物が乗っていた。

「殺すなら殺せ」

「言われずとも」

 ミツキは間髪いれず懐から拳銃を取り出し天使へと突きつけると、その白いパイロットスーツからは赤い鮮血が漏れていた。

 それを見たトオルは、それが人間と変わらない生き物だと思い、パイロットを殺させまいとミツキを羽交い締めにし、取り押さえる。

「おいおい、もう虫の息だ。それにここで連行すれば有力な手がかりが得られるかもしれない。今はその気持ちを抑えろ」

 トオルは無謀にも抵抗したが、ミツキの残された体力ではトオルを振り払うことはできず、あっけなくその銃口を下へ下ろす。


「なぜ殺さない……」


 トオルはその問いに対し、腰につけていた手錠を取り外しパイロットを拘束する。

「お前は重要な情報源だ。お前達の正体を話してもらう」

「俺は何も言うことはない、捕まえたところで有益な情報は無いぞ……」

「それでもだ、俺はそう簡単に命を奪わないし、奪うつもりもない。で、ミツキ、こいつ連行して行くけどいいか?」

 トオルは万が一を備えるためにミツキへ確認をとるも、ミツキはすでに興味をなくし死神のコックピットへと戻っていた。

「トオルの好きにしろ俺は帰る」

 ミツキ右手を軽く振り上げ、コックピットへ乗り込む。

「アモン、非常用電源を付けてくれ」

『了解、オーディンはどうしますか?』

「背負って帰る」

『了解。非常用電源準備完了しました』

 アモンが非常用電源を入れるとミツキは再び死神の巨体を動かし、トオルへ無線をつなぐ。

「トオル、帰りたかったらそいつを連れてコックピットに乗れ」

「あいよ」

 ミツキは外にいるトオルにオーディンに乗り込むよう促し、ミツキがオーディン乗り込んだことを確認すると、オーディンの巨体を担ぎその場を後にした。


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