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 ヒュドラを倒した後、俺はぐっすりと丸1日寝てしまった。スキルの力を使った反動……というより、普通に力尽きて寝てただけだろう。

 一見死んでいるようにも見えたそうでローラやドロシー、ミルスを心配させてしまったりもしたらしいが。


 で、起きた俺は体に走る激痛に身悶えた。

 すわ、スキルの反動か。と、思ったが何のことは無い。お医者さん曰くただの筋肉痛だった。うーんやべぇ。筋肉痛やべぇ。誰か、誰か助けて……え? 回復魔法で筋肉痛は治らないのかって? すでに筋繊維断裂しまくってた体を治癒してもらったんだよ。これ以上

を回復魔法に頼るとあんまりよろしくないんだと。だから大人しく寝て直せってさ。


 いやぁさすがに20倍の強化は体に無理がありすぎたらしい。回復魔法がなきゃ再起不能になってたかもね! 回復魔法ありがとうだね!


 尚、見舞いに来たミルスに早速カカシで20本全力モードを試させられたんだけど、思いっきり腕を振り下ろしたら腕がブチって千切れて飛んで天井に突き刺さったからねアレ。体への反響やばかったわ。危うく俺の腕もブチっと飛んでくところだったとか怖すぎ笑えない。あと室内でやるべきじゃなかった危なすぎる。


 あ、ちなみに【人形使い】のスキルを自分に使えるのは変わらなかった。うん、まぁ筋肉痛で激痛が走ったけど。……筋肉痛がマジきつい。身の回りの世話はカカシにお任せして俺は大人しく休んでおくとしよう。

 ドロシーがお見舞いに作ってくれた手付きのカカシ。片手分のパワーを使うが、モノも掴めるし便利だよこれ。もはやカカシっていうよりマネキンだけど。


 ちなみにシュナイダーだが、毒の血を浴びまくっていたものの、ローラは気合いで洗濯することにしたらしい。ヒュドラ退治で知り合った【毒消し】スキル持ちに協力してもらうそうな……まぁ、シュナイダーもヒュドラ退治の英雄だしね。俺も相棒が助かってくれて嬉しいよ。


 ……ていうか歳のせいか、筋肉痛長引くんだけど。もう起きてから3日目なのにまだ動けそうにないわ。



「さて、それじゃあルーカス。詳しい話を教えてもらおうか?」


 と、アパートの部屋でのんびり寝ている俺に、ギルド長が話を聞きにやってきた。

 丁度マネキンにリンゴの皮を剥かせている時だったんだが。おかげでリンゴの皮の長さが2mで途切れてしまったんだが。新記録でそうだったんだが? まぁいい。俺は子供じゃない、そんな細かいことをネチネチ言ったりはしないさ。


「詳しい話も何も、報告受けたんじゃねぇのか?」

「お前を迎えに行ったヒューイ……うん、名前じゃ分からんって顔だな。【飛行】持ちのヤツにも話は聞いたが、どうにも信じられなくてな」


 まぁ俺も、みんなで倒しに行ったヒュドラに負けて逃げたのに、足止めに残った一人が返り討ちにしちゃいました、みたいな報告受けても信じられないだろう。


「もっとも、現実としてスタンピードは終息した。だから、俺が聞きたいのはどこまでが本当かって話だ」

「まぁいいけど、俺も正直よく生き残れたもんだなって思ってるからな」


 そう前置きをして、俺はギルド長に俺が一人残ってから救出されるまでの顛末を話した。素手でヒュドラの頭を殴り飛ばしたあたりは、さすがに目が点になっていたな。


「――というわけで、俺はヒュドラをその場でぶっ殺した」

「……うん、その、一応聞いていた話と一致するが……あの巨体を振り回すとかどんな身体強化だよ」

「単純に考えて、20倍かなぁ」


 握力40kgが800kgだ。両手で掴んですっぽ抜けそうだったし、ヒュドラは1tは超えてたんじゃねぇかな。

 我ながらどうかしてた。これが火事場の馬鹿力ってやつだろうな。

 むしろ火事場の馬鹿力×20だ、そりゃ強い。悪魔将○も目じゃないね。


「それほどの身体強化……よく回復魔法で治る程度で収まったものだ。そもそも体を見た医者が言うには、激痛で動くこともままならなかっただろう、って話だったが」

「そこはほら、『石化の視線』で麻痺ってたからさ。運が良かったかもしれん」


 全身麻痺、いわば全身麻酔だ。あれが無かったら激痛にのた打ち回って戦いどころじゃなかったに違いない。それを考えれば、むしろ『石化の視線』があって良かったともいえる……無かったら普通にチームで倒せてただろうけど。


「最悪、俺は自分の体を常に【人形使い】スキルで動かすことになってたかもしれん」

「ああ、それでも動けるのは驚異的だな。とんでもない奴だ。……それで他人を動かせたりもするのか?」

「あー、そいつは無理だったわ」

「もう試したのか、手が早いな」

「試させられたんだよ。見舞客にな」


 ミルスに糸を結んで動くかどうかを試してみたんだが、普通にダメだった。こっちで動かそうとすると「ちょっと引っ張られる感じがする」とは言っていたが、それまで。少なくとも生きた人間を動かしたりはできないらしい。

 死体? さすがに試したくない。動かせたら動かせたで嫌な気持ちになりそうだ。


「まぁ事情は把握した。……おめでとうルーカス。君は英雄だ」

「そりゃどーも」

「なんだ、嬉しくないのか?」

「いやさ、嬉しいけど、なーんか実感湧かなくてねぇ」


 ふん、とそんな俺を鼻で笑うギルド長。


「なら、英雄らしく美女に囲まれてちやほやされてみるか?」

「えっ。そ、それはちょっと気になるんだけど。何、そういうお店に連れて行ってくれるの?」

「それもいいが、幸いこの部屋の前に美女が3人押しかけているようだ。話の邪魔しないように待ってくれていたようだから、そろそろ行くとしよう」

「マジかよ、3人! ひゅぅ、こいつは俺にも春が来たってなもんだな!」


 ギルド長が立ち上がる。


「では帰る。筋肉痛が治ったらまたギルドに顔を出してくれ」

「おう、帰ってくれ帰ってくれ。俺はこれから美女達と語らう大事な英雄の仕事があるからな」


 そう言って扉を開けて出ていくギルド長。入れ替わりに入ってくる美女――

 ――ってなんだ、ローラとドロシーとミルスじゃねぇか。


「うっふーん? 美女三人集がひとり、ミルスちゃんよー? ってこらルーカスさん。そこで露骨にテンション下げるんじゃないの、くすぐられたいの?」

「ちょ、それは止めてくれマジで。全身の筋肉痛に響くから」


 けらけらと軽く笑うミルス。


「私の作ったカカシ、だいぶ活用してくれてるみたいね。……あと、美女じゃなくてごめんね? 私どちらかというと可愛い系だと思うんだけど」

「あー、ドロシーは美人だと思うぞ。うん」


 じとっとした目で俺を睨むドロシー。


「ドロシー()ってことは、私は違うんでしょうか?」

「……いや、まぁ、ローラもいい女だと思うよ? しいて言えば美女って言い方だとミルスが外れるんじゃないかなって思うんだ、見た目子供だし」


 むすっと頬を膨らませるローラ。あ、ミルスまでそんな目で。


「いや冗談だって冗談。……まぁ美女っちゃ美女だよな、3人とも。うんうん」

「引っかかる言い方するねルーカス。……よーし英雄サマをちやほやするわよ2人ともー、アタシにつづけー!」

「「はーい」」


 あ、ちょ、コラ、やめて、やめてください脇腹はダメ、くすぐ、ぎゃひぃいい!



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