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017

「なぁ、ところでこの柵だけど……土魔法で塀を作ったらダメなのか?」

「え? やだなぁルーカスさん。そんなことしても人が離れたら消えちゃうんだから使えるわけないでしょ?」

「いやさ、落とし穴は土魔法で作ったんだろ? だったら、それで掘り出した土を盛ってやれば……むしろ堀と塀ができるだろ?」

「……はっ!? なにそれルーカスさん天才!?」


 いや、普通に思いつくだろ……

 と、そんな風にアドバイスしたら村長曰く「そういえばそんな手があったな。土の操作は苦手だから昔爺さんに習ったのを忘れてたぜ」とのこと。


「私のひい爺様も天才……つまりその血を引いている私も天才ってことよね?」

「そうだな、じゃあその天才の我が娘よ、村を囲う壁を作ってくれ。頼んだぞ」

「えっ」


 というわけで、村を囲う壁を作るので1日や2日では終わらないことが決定した。

 さすがにそれに付き合って村に滞在するわけにもいかないので、俺とローラは町に帰還することになった。

 カカシができたら冒険者ギルドに連絡を入れてくれるそうだ。


  *


 さて、討伐依頼をこなしたおかげで懐が温かい。基本的に今まで雑用みたいな仕事ばかりしていたが、討伐依頼は命がかかっているだけあって収入が段違いだ。

 お金もあるししばらく休養してもいい気がするが、ここは戦力の強化に使おうと思う。装備に金をケチる奴は早死にする、コレ常識な。


「ルーカスさん、シュナイダーを防水にしませんか?」

「……金がいくらあっても足りなくなりそうだ。それよりもっといいアイディアがある」


 というわけで、俺は鍛冶屋に行くことを提案した。目的は、鎧である。


「なるほど、シュナイダーをさらに鎧で固めようというわけですね。返り血も鎧が守ってくれれば大丈夫ですね!」

「それもアリだが、まずは鎧単体で動かせないかと思ってな」


 布製のシュナイダー、木製のカカシときたら、次は鉄製の鎧とかどうだろう。

 中身を見たらがらんどうの動く鎧とか、いろんな漫画やゲームに出てきそうな感じのイメージだ。もし動かせたらそれはそれで。


「ただ、問題は……丁度いい知り合いの鍛冶屋が居ないってことだ。俺の行きつけは雑貨屋だしなぁ」

「それじゃあ私の行きつけの鍛冶屋に行きますか? 多少は融通してくれると思いますよ」

「へぇ? ローラの行きつけ……シュナイダー関連で?」

「その通りです。分かってきたじゃないですかルーカスさん、針とか布切りばさみかも作ってくれますからね。あとタライなんかもここで買いますし」


 鍛冶屋が作ってるのは武器や防具だけじゃないんだな、とか思ったが、当然のことだった。むしろ金属製品を作るのが鍛冶屋で、武器や防具はその一部にしか過ぎないんだよな。

 今世でも普段適当なナイフとか鍋とかを買うときは商店で買ってたから気にしてなかったわ。

 鍛冶屋は鍛冶屋で、店頭に武器防具しか並べてないし。


 ともあれ鍛冶屋に入るとする。

 店に入ると、子供……いや、合法ロリ(女ドワーフ)が店番をしていた。


「いらさーい。お、ローラちゃんじゃん、また裁縫針?」

「こんにちはミルスさん。今日は違います」


 と、あいさつを交わした合法ロリ――ミルスが俺をちらっと見る。


「ねぇねぇ、この人彼氏かい? まさかローラちゃんがオジ様趣味だったとは……」

「ふぇ!? ち、違いますよっ! る、ルーカスさんは私のパーティーメンバーですっ! 前に話したでしょう!?」

「あー、なんだやっぱり彼氏じゃん」

「違うって言ってるじゃないですか! ルーカスさんに迷惑ですよ!」

「えっ、違うの? だってこの人でしょ、ローラが好――」

「わぁあああああああ!」


 ローラがミルスの口を塞ぐ。大丈夫、ちょっと聞こえた。俺は難聴系主人公とかではないからな。嫌われていようでなによりだ。

 ……でもあれだろ? 好きって言ってもLikeだろ? ま、それでも恥ずかしい気持ちは分かるけどさ。


「おーい、そこのシュナイダーに理解がある人ー」

「ん? 俺か?」

「返事した! ほらやっぱり!」

「だだだ、だから違うんですってば!」

「違うって言っても時間の問題でしょ? 大丈夫ローラちゃん可愛いし告白したら一発オーケーだって!」


 なんか呼ばれたと思ったから返事したのに放置されている。オジサン寂しい。


「だ、だから、ルーカスさんとはそんなんじゃないんですっ」

「あらそう。それじゃあアタシが狙っても良い?」

「何言ってんですかミルスさんドワーフじゃないですかっ!」

「大丈夫大丈夫、年齢的にはあっち40くらいでしょ? アタシ30。むしろローラちゃんより近くない? あれ、むしろローラちゃん若過ぎ?」

「見た目の若さはミルスさんに負けますけどね! そうですよ年齢差倍以上ですよ」

「あー、それじゃあ確かに尻込みもしちゃうわね。けど大丈夫! 男は若い女が好きなモンだから! ドワーフと結婚してる人間のオジサンとか結構多いし」


 あ、ミルスさん30歳なんすね。ドワーフ(女)ってマジ合法ロリ。外見で年齢判別つかないわ。……男は毛むくじゃらでオッサンなんだけどな。

 合法ショタの種族とかもあっていいと思うんだが、どっかにいないもんかね? いたとしても特に何するわけでもないけど。


「と、とにかく! 今日来たのはシュナイダーじゃなくてルーカスさんの関係なんです!」

「何、結婚式でも挙げるの?」

「だ、だからぁ!」


 っと、ミルスがいじりすぎててローラが涙目だ。そろそろ俺も会話に入れてもらおう。


「えーっと、ミルス、さん?」

「ミルスでいいよ、ルーカスさん。『鍛冶屋ミルス』へようこそ」

「おお、ならそう呼ばせてもらおう。ミルス……えっと、もしかして店長なのか?」

「そりゃドワーフだからね、バリバリ鍛冶するよ? オーダーメイドも受け付けてるからお財布とご相談の上お気軽にどうぞ」


 どうやらミルスは女性で鍛冶師らしい。そして店長。それなら話が早そうだ。

 ミルスは自分の腕の良さを見せつけるかのようにぐっと力こぶ――の全くできない、子供っぽくぷにっとした二の腕を見せる。

 ……本当に30歳なのか? これで?


「ねぇ、ローラちゃんとなんでもないって言うんだったら、アタシとはどう? それとも他にいい子でもいる?」

「……いやまぁいないけど。それより見たいもんがあるんだ」


 見たいもの? と首をかしげるミルスに、俺は言葉をつなげる。


「えーっと、鎧を見たいんだが。フルプレートのやつ」

「はーい、鎧ですねー。……って、フルプレートだと高いよ? お金大丈夫?」

「……だよな。買うかどうかはさておき見てみたいんだがダメか?」

「んー、お客さん全身に鎧つけて戦うタイプじゃないでしょ。何か理由でもあるの?」

「ああ。俺のスキルに関わることなんだが――まずはコイツを見てほしい」


 説明するにしても、実際に人形を動かしているところを見た方が早いだろう。

 俺はシュナイダー改を取り出し、首に紐を括り付けた。


 魅せるぜ、シュナイダーの舞をな!





 オッサン人形劇中…………終了。



「なるほどねぇ、ローラから聞いてたけどそれが【人形使い】ってスキルなわけ」


 俺の人形劇をひとしきり見て、ミルスは手を叩いてひとしきり賞賛してくれた。

 で、興奮が落ち着いたところでそう言った。


「まぁそんなわけでな。この間の依頼で木のカカシを動かすこともできたもんだから、鎧も動かせるんじゃないかなって」

「はー、なるほど。そいつはいいね、鎧が勝手に動いて攻撃を受けてくれるなら、人間は安全な場所にいるだけで無傷。そりゃ鎧にとって最高の成果ってことよ」

「まぁそんなわけで鎧を見たいんだが」

「いいよ、動かせるか試してみよう。ついでに色々試してみていい?」

「うん? ああ、いいけど」


 と、その時キュピンとミルスの目が光った。


 この時の俺は、知らなかったのだ。ミルスが「色々試す」というのが1日がかりでガッツリ行うことを指すということを。そして、ミルスが周囲の人間から「実験バカ」「検証フェチ」と呼ばれているほどの好奇心旺盛な性格をしているということを。




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