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015

 ドロシーの用意したカカシ。

 それは、十字に組んだ棒に藁で肉付けし、白布に黒い塗料で描いた顔を持ち、ベストのような服と麦わら帽、それと手袋をつけた代物だった。

 顔が「へのへのもへじ」だったら個人的には完璧だな。


「ほほう、なかなか精悍なカカシじゃないですかドロシーさん」

「わかりますかねローラさんや」


 クリエイター同士、何か通じるものがあるらしい。俺にはさっぱりわからんが。


 早速、カカシに糸を括り付ける。


 ……お? と、手ごたえを感じる。

 失敗作だった『式神』や『やっこだこ』とは違い、「これは動かせる」という確信。

 しかし、カカシはピクリとも動かない。


「ダメでしたか?」

「いや、手ごたえはある。ただ、力が足りていないって感じだな」


 スキルの修練度とかそういうのが足りないのだろう。俺は指から糸を外そうとした。

 と、そこにドロシーが話しかけてくる。


「ねぇ、ルーカスのスキルって指1本でカカシとかシュナイダーを動かせるもんなの?」

「ああ、そういうスキルらしいぞ【人形使い】って言うんだが」

「へぇ、すごいね。私だったら両手の指全部使っても無理そう」

「いやぁさすがに両手使えば――」


 ――その時、俺に電流走る。


 そういえば、1体の人形を複数の糸、指で動かしたらどうなるかやったことが無かった。

 日本で『人形使い』といえば1体の人形に何本もの糸を使って操作するものなのに。


 俺は、試にカカシにもう1本糸を括り付け、反対側を右手の中指に括り付ける。

 これで人差し指と中指、2本の指とカカシが紐付いている状態だ。これで改めて【人形使い】を発動させる。


 ビクンッ!


 確かな手ごたえとともに、カカシが震えた。


「ひゃ!? い、今、カカシ動かなかった?」

「ああ、成功したっぽいな」


 俺はカカシを揺らす。クッキーズよりも動かしにくいし、そもそも手足に関節が無い、というか足が無い。畑に突き刺さる木の棒の1本足だもんな。

 動かせるのは――頭が少しと、腕と胴体で木の棒が交差してる所。手袋の手は動かせないな。木の棒が突き刺さってるだけだからか?


「す、すごいよローラさん! カカシが、カカシが手を振ってる!」

「ふっ……ドロシーさん、それは私がすでに通過した道ですよ。気持ちは良く分かります」


 うん、やっぱりよく似た者同士ということなんだろう。


「なぁ、これ手足にどうにかして関節作れないか? そうすればもっとよく動かせると思うんだけど」

「関節? ……こう、バキッと折ってプラプラさせるとか?」

「いやまぁ、それでもいいんだけどそれだとすぐ千切れ飛ぶぞ多分」

「あー、うん、それならそうだねぇ……足はともかく、腕ならスパッと切ってからロープで結ぶとか?」

「お、それやってもらってみていいか?」

「うん、すぐできるからちょっと待ってて」


 そう言って、ローラは小屋の中からノコギリとロープを持ってきた。

 手慣れたもので、5分で作業は終了。肘の関節が増えたカカシで改めて【人形使い】を試す。

 結果としては、大成功だった。

 ひゅんひゅんとヌンチャクのように手を振り回すカカシ。手袋は早々にすっぽ抜けて飛んで行ったが、角度も自由自在にキメられる。

 むしろシュナイダーより力強さがある手ごたえだ。これは指を2本使っているからか、木という固さのある素材だからか。要因は色々ありそうだ。


「フゥー! カカシ最高! カッコいい! 抱いて! 抱きしめて! むぎゅーっと!」

「お、おう」


 俺はリクエストに応えてカカシを動かし、やたらハイテンションなドロシーを抱きしめる。


「あ、あかん……これはあかんですよ。ダメになるぅ……!」


 だらしなく蕩けた顔を見せるドロシー。嫁入り前の娘が人前でしていい顔じゃないな。

 と、それを見ていたローラが俺の服をちょいちょいと引っ張っる。


「……ちょっと、シュナイダーで、同じく」


 うん、そんな頬を赤らめた照れ顔でおねだりされたらオジサン逆らえないな。

 というわけで、ローラにもシュナイダーで抱きついてやることにした。左手の人差し指&中指で戦闘用シュナイダー&シュナイダー改によるサンドイッチだ。


「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛…………しゅ、しゅないだぁ……!」


 そしてローラも人前で晒すべきではないトロ顔を……なんだろうこいつら。

 ……あ、やばい目を閉じたらドアップになっちゃう。瞬きだとむしろサブリミナル効果的にトロ顔が視界に入ってくる。うわぁ、オジサン誘惑されちゃう。がんばれ理性、理性がんばれ。全力で目をそらすんだ俺。

 ヘタすりゃ娘みたいな年齢の娘相手に誘惑されるとかッ! ないからッ! 心頭滅却、なんまいだーなんまいだーはんにゃーたーらーはーうんたらーかんたらー……!


「あの、そろそろ止めてくれない?」

「「ふぁーぃ」」


 と、2人は名残惜しそうに離れてくれた。


 ……危なかった。

 だが、偶然にもシュナイダー2体とカカシを同時に動かせることもテストできたし、結果オーライということで……


 それにしても、失敗したのと成功したので何が違うのだろう。

 人に作ってもらう必要があるのか? 今度ローラに『式神』を作ってもらうか……いや、俺がクッキーズの1匹でも縫う方が建設的だな。それで動いたら人に作ってもらわなくても、ってことになるし。


 そんなことを考えていたら2人とも落ち着いてくれたようだ。


「ふぅ、落ち着きました。またお願いします」

「いやぁ、ごめんねルーカスさん。たはは、恥ずかしい……ッ」


 満足げなローラに対し、照れて赤い顔を隠すドロシー。


「うん、まぁそのなんだ。とりあえずローラは自重しろ」

「なぜですか!? シュナイダーはぬいぐるみなんだから抱きしめるのが正しい使い方じゃないですか!」

「そうだな。じゃあシュナイダーから抱きしめられるのは正しくないわけだな」

「……くっ、これは一本取られました……いいでしょう、ではシュナイダーに限り抱きしめられるのも正しい使い方ということにします」


 うん、それただ自分がシュナイダーに抱きしめられたいだけだよね。


「まぁそれはさておき。ドロシー、動くカカシはどうだ?」

「えっ! さ、最高だったよ……」

「……今のは俺の聞き方が悪かったな。えっと、落とし穴のフタに刺して使えそうかって意味で、どうだ?」

「あ!? うん! そうだね、それはばっちり使えると思う!」

「実際に何回かテストしておこう。うまく行ったら、コボルト達を誘い込む形で」

「うん! いやぁ、カカシがコボルトと対決かぁ……楽しみだなぁ」


 カカシが使えるなら、落とし穴のトラップと合わせて一網打尽にできるだろう。

 くっくっく、さーて何匹狩れるかな? それによって報酬も増えるから楽しみだ。


「ついでにカカシの改造でもしましょう。剣を持たせるとか」

「ふむ。これもロープで縛りつければいいんですかね?」

「むしろ肘から先を剣にしたら早いんじゃないか? あ、シュナイダーと合わせてあと6本指が余ってるから、さらに3体はカカシを動かせると思うぞ。どうする?」

「舐めないでいただきたい。私のカカシはあと18体は居ますからね!」



 そして、カカシにさらに改造を加えつつテストを終えて翌日。

 コボルト達をおびき寄せる準備ができたところで、コボルト達が村の付近をうろうろしてると物見やぐらで見張りをしていた村人エルフから報告があった。


 いよいよカカシ&シュナイダー連合のお披露目である。俺は10本の指に4体のカカシと2匹のシュナイダーを結んで、物陰に隠れた。

 クッキーズ? 今回は指足りないしお休みで。コボルト達の位置を把握するのは村の物見やぐらから十分できるからね。




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