プロローグ 「終わりが見えないこの世界で」
今、俺はとんでもない場面に出くわしている。
さっきまで緑一色の密林を歩いていたが、どうやら罠のようなスイッチを押してしまったらしく、そのまま別のルートに転移。その先は、あたり地獄のような火の海。さっきまでの陽気な天気と裏腹に体中が汗ばむ程の暑さ。この汗が本当に暑さの汗か、はたまた緊張から滲み出てくる汗か自分には分からなかった。
今から起こりそうなことは大きく分けて2つ。
1.このルートから転移装置を探し出し元いた場所に戻るか。幸い自分の目に前にはこの場所にはふさわしくない青い神々しい光がある。
これが一つの起こりうること。
2.なんらかのアクションが起き殺される。
俺が思うに、後者の方が圧倒的に可能性がある。
さあ、結果発表と行こうじゃないか。
俺はこの地獄のようなこの場所から一歩前に出た。そしてまた一歩と慎重に歩いて行った。
すると、だ。ガタガタと地面が揺れる。そして壁も揺れる。地面の下にゴポゴポと煮だっている火の海も揺れる。
まあ、もうわかってますよね……。
全体の揺れと共に目の前からは天井を突き抜けそうな勢いで大きな火柱が立ち、明らかにヤバそうな化け物が目の前に召喚されて、殺意のある目で静かにジッと俺の事を睨みつけている。
どうやら俺は最大の危機。いやこれは『詰み」と言った方が正しいのか。
「はははっ……」
渇いたような笑い声。
人間こうゆう状況に直面した時笑ってしまうのは何でだろう。
最後になんてのんきなことを考えているんだろう。自分でも不思議なくらいだ。
悔いはあるのに、まだ生きたいのに。
渇いた笑いが狂気に満ちた笑いへと変わって行く。
ハハハハハッッ―――
永遠に繰り返され、その声は壁に跳ね返る。
化け物はユラユラと持っているカマを引きずり不気味に近づいてきた。カマを引きずる音が断末魔の様に聞こえる。
普通なら容易に逃げれるスピードだが足が動かない。
あっという間に俺の目の前に到達し、
オ ワ リ ダ 。
聞き取れるか分からない程度の声で化け物はそう呟いた。
自然と俺の右目からは一筋の涙が滴り落ちた。
化け物はニヤリと笑って慈悲も無く首に向ってカマを振り下げた。
リンゴが木から落ちるように、俺の首もポトリと地に落ちた。
ここで俺という存在は消された。
なぜだか今俺は猛烈に頭が痛い。
そうか、俺は…。
俺は………
また、死んだのか。
俺は密林をゆっくり歩き出した。