二つ目の話。
少女は、僕をじっと見つめた。
零れ落ちそうなほど大きくてパッチリとした瞳は、
赤く怪しげに光っていた。
しかし、僕は今ここで起こっていた状況が
うまく飲み込めず、うるさく鳴り響いている心臓を
必死に抑えることしかできなかった。
「聞こえてないの?あなた……」
少女が言い終わらないうちに、僕は
恐る恐るつぶやいた。
「ひ………、人殺し………。」
呼吸がどんどん荒くなっていく。
少女の後ろでは、とどめを刺された女性の
腹部から鮮やかな朱色が溢れていた。
「人?人間が、どこで死んでるの?………アハハッ!!!」
少女は、おかしそうに笑った。
僕は震えが止まらなくなり、その場にしゃがみこんでしまった。
「どこって………、今!君が殺したじゃないか!!!
君の後ろに倒れこんでいる、その女性だ!!」
「?………、あぁ、これね。これがどうかした?」
冷たく言い放った少女は、
後ろいる女性を足で蹴飛ばした。
「…………スペルタンは、人を殺すのか?」
「勘違いしないで。これは、人間じゃない。
スペルタンと人間の敵にあたる、"チュアーム"だよ。」
人間ではない?チュアーム?
少女の言っていることがよくわからない。
まるで、違う国の言葉を聞いているような気分だ。
「スペルタンは、間違っても人間は殺さないの。
殺すのは、チュアームだけ。
………そろそろあれも正体を表すと思うよ。」
そう言った少女は、倒れこんでいる女性を見る。
すると、女性の肌がドロッと溶けて
背中から紫色の翼が生えた生き物が出てきた。
そして、金属のような体になっていった。