表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

初めての……

 パンケーキを皿にのせて持ってきた槍が、雛紅とグランディの前にパンケーキを置く。

「はい、どーぞ」

「わぁ、美味しそう!」

 パンケーキには生クリームとジャムがトロリとかけられ、その上にのっている艶々とした桑の実が食欲を誘っていた。

「今年、初めての桑の実を使ってジャムにしたのよ。今年も大豊作だったわ」

「いただきます」

 雛紅は自分の身体ほどはあろうかというパンケーキに、小さなナイフとフォークを差し入れる。小さく切り分けるも、雛紅には十分大きなサイズのパンケーキを口に頬張った。

「ん〜ん。なめらかな甘さと爽やかな酸味が身体の疲れを癒すわ〜」

 頬っぺたに手を当てて、雛紅はとろけそうな顔をした。

「喜んでもらえて何よりよ。頑張って収穫したかいがあったわ」

「ジャムも上手に作れたと思うの」

 槍と椀と感想を話していた雛紅は、ふとグランディの方を見た。

 グランディのパンケーキは、雛紅のパンケーキより大きめに作られていたが、グランディの前に置いてあると小さく見えた。

 グランディはそれを四つに切り分け、ひょいぱくひょいぱくと口に入れていく。

 雛紅の見ている前で、パンケーキはあっという間になくなってしまった。

「美味しかった。ごちそうさまでした」

 グランディは両手を合わせてペコリと頭を下げる。

「何だか……」

 他のパンケーキより小さいけれど、まだまだある雛紅のパンケーキ。

 他のパンケーキより大きいけれど、あっという間になくなったグランディのパンケーキ。

 雛紅は何度となく自分の身体が大きければと羨んできたが、ここに来るまでの道のり含め、大きいことがこんなに羨ましくないのは初めてだった。

「大きいっていうのも大変なのね」

 雛紅はしみじみと思った。

「ん? どうしたの雛紅ちゃん?」

 グランディが雛紅を見ながら首を傾げる。その口の端には生クリームが付いていた。

「口に付いているわよグランディ」

 雛紅はポケットからハンカチを取り出し、両手をグランディに伸ばした。

 それを見て、グランディは素直に顔を雛紅につき出す。

「よし。これでキレイになったわ」

 雛紅は生クリームをキレイに拭き取った。

「今日、会ったばかりとは思えない仲の良さね」

 雛紅とグランディのやり取りを見ていた槍が呟く。

「そんなこと――」

「だって友達になったんだもん」

 雛紅の言葉に被せるように言ったグランディが、にっこり笑った。

「そうだよね! 雛紅ちゃん!」

 先ほどは訂正した雛紅だったが、何故かもう否定する気にはならなかった。

「……そうね。友達だわ」

 雛紅は新たな友達の顔を、笑って見返した。




end

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ