いつものこと
雛紅は服に付いた土を叩き落としながら立ち上がる。立ち上がっても雛紅の身長はグランディの膝にも届かなかった。
グランディはしゃがんで雛紅のことを覗きこんでいる。
「ごめんなさい。私このマントよく落とすの」
「もう良いわよ。ケガもなかったし」
「ホント? ケガがなくて良かった」
ホッとしたグランディは立ち上がろうとして、頭上の木の幹に思い切り頭をぶつけた。頭を抱えて再びしゃがみこむ。
「ちょっと大丈夫?」
「う、うん。いつものことだから……」
グランディは伏せていた顔を起こして、雛紅に微笑む。
「ありがとう、えーと……」
グランディは雛紅を見て、困ったような顔をした。
「ああ、私の名前? 名前は雛紅。龍谷雛紅よ」
雛紅が名前を答えると、グランディの顔が明るくなった。
「ありがとう雛紅ちゃん」
グランディはそう言って、再び立ち上がる。
「あ! ちょっと!」
雛紅に止める時間はなかった。
同じ場所で立ち上がったグランディは、また同じ幹に、同じ頭をぶつけ、そして同じようにしゃがみこんだ。
「……そこで立ったらまたぶつけるのは当然じゃない」
雛紅は呆れた目でグランディを見た。
グランディは救いようがないほどのドジっ娘だった。