episode 8
「どういう・・・こと?」ザックの口調が変化した
「お前はこの世界の人間じゃない」
「俺は薄々気づいてたんだ。なんでグラルモには誰もいる気配がなかったのに、グラルモの部品は届いたんだ?教科書は100年前に廃止されているのに、なんでおまえが知っているんだ?。それに昨日お前は、あの家が100年前の物であると言ったが、なぜ特定できたんだ?お前はそこで、俺にあの階段を見つけさせるように誘導してた。お前は俺がここへくることが分かっていた、違うか?」
「それは・・・」
「俺もやっと思い出したよ。100年前の戦争で、人類は滅亡している」
「これは、この世界は、全て俺が作り出した幻想だ」
その瞬間、背中にいた彼女から、まばゆい光が発せられ、彼の体を包んだ
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「ここ・・どこだろう?」
闇の中で、彼は一人だった
彼は宙に浮いていた
目の前には彼女がいた
「よかった。目が覚めたんだね」彼は笑いかけた
「・・・」
「こわい・・・・こわいの」彼女は震えていた
「大丈夫さ。ここには戦争はやってこないから」
「君、夢の中でずっと泣いていたね。嫌だって言ってたんだ」
「あなた」
「えっ?」
「あなたが怖いの。あなたが私を飲み込んでく」
「!?」
「あなたはわたし、わたしはあなただから」
「あなたの正体を教えてあげる。あなたは100年前グラルモで作られた戦闘用アンドロイド。私はその記憶よ」
「なんだって?」
「あなたは、人間からアンドロイドに改造されたの。あなたの製造は国家機密で、外部へ決して漏れなかった。でも100年前の戦争に、あなたは参加できなかった。なぜだか分かる?」
「?」
「あなたに感情があったからよ。あなたは戦うことを拒否したの。あなたは平和の象徴だった」
「だからあなたは、人間が死んでも生き続けた。ずっと、ずっと、100年もの間」
「その間、あなたの体はさまよい続けた、記憶とはその間に分離したの」
「私はあなたをずっと探していたの。だけど、あなたの思いが強すぎて、見つけられなかった。」
「寂しかったのね。過去を否定してまで、現在を生きようとした」
「あなたのその強い思いが幻を生み出した」
「幻?」
「そう、全てあなたが見せた幻、知らず知らずのうちに、周りも飲み込んでた」
「じゃあ、ザックも?」
彼女は無言でうなづいた
「僕のいた街も?・・・」
「そうか。やっぱりね。知ってたんだ、ずっと」彼は涙を流していた
「だけど、あなたには、自分から過去を見つめる勇気があった」
「あなたは帰らなくちゃ。もとの居場所へ」彼女がゆっくりと遠ざかっていく
「待って!! 行かないで!! 僕を一人にしないで、ああ!!」
「夢から覚めるのはいやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ある荒廃した街に、一体のアンドロイドが立っている
100年間ずっと