episode 6
その外観はまるで巨大な要塞のようだった
鉄壁と呼ぶにふさわしい鋼鉄の外壁は、恐らく核ミサイルでも破壊することは不可能に思えた
彼らが来た場所から西に500フェルク、グラルモ自治政府は、その威厳をたたえて、荒野にたたずんでいた
二人は思わず息を飲み込んでしまう
「彼女はここで生まれたんだ、中に入れば、誰か知っている人に出会えるかもしれない」
「どうやってぇ?」
「・・・・」
そこへ向こうから運搬用ロボットが、荷物を積んだ荷車を引いてくるのが見えた
「あれで・・・」
この場所に見覚えがあった
彼はここにいたことがあった
外があれだけ荘厳だったにもかかわらず恐ろしく暗かった。空気がひどく淀んでいた
喜びのような感情が一切感じられない、寂しい、寂しい空間だった
街はあったのだが、人気が全くなく、明かりもほとんどなかった
向こう側に、一件だけ明かりがついている家があった
近づいていってみると、中では老人が一人、机に突っ伏していた
「お邪魔します」老人は目覚めない
「あのー」肩に手をかけた瞬間、老人の体は砂になって、崩れ落ちた
「うわっ」「うあぁぁぁ」ザックが腰を抜かしてしまう
彼は家の中を見て回った、古い写真立てに、家族の写真があった
老人の若いときの姿があった
「そっそれにしてもなっなんだかここ、100年前の家みたいだねぇ」なんとか腰を上げたザックがつぶやく
言われてみれば、家の形や、家具などが現代の物とは異なっている
この場所では時間が進むことをためらっているようだった
「あれっ、ここだけ床板の色が変だよぉ?」ザックの立つ床板が、黒く変色していた
「これ、取り外せるんじゃ無いか?」やってみると、床板は簡単に外れ、下へと通じる階段が現れた
「いくぞ」「ええぇ?ほんとにぃ?」
階段はどこまでも続いている気がした
気を抜けば、このまま落ちていってしまいそうな感覚に陥った
背中に感じていた彼女の重みだけが、彼の存在を明確にしていた