episode 5
グラルモにつくまでのミューリの中で、彼はずっと彼女のことを考えていた
「なあザック?今俺たちシェルターの外にいるんだよな?」
「なにいってんのぉ?昨日脱出してきたばかりじゃないかぁ」あきれたように運転席のザックが答える
「だよな・・・」
「それにしても、すごい空だねぇ。教科書で見たのよりもっと汚れてて濁ってるよぉ。今の子供はもう教えられないんだってねぇ」
「ああ、でもとにかく生まれて初めて外へ出れたんだ。思いっきり空気を、って分けにはいかないけど」
「新聞見たぁ?今は東と西で連合軍が組まれて対立してるんだってぇ」
「俺たちはもう所属を失っちまったんだよ。関係ないさ。敵でも味方でも、見つかれば殺される。」
ザックがレーダーを確認する。脱出してから彼はもう吹っ切れていたようだった
「100km圏内には何もいないから大丈夫だよぉ。グラルモは・・・西についたみたいだねぇ」
ミューリのステルス機能の状態を確認し、オートパイロットに切り替えて、ザックは後部座席へと移った
「この娘、ほんとに人間みたいだねぇ。君の言うことが本当なら、僕らはとんでもないことに巻き込まれるかもしれないよぉ」
「・・・」
「そうだな・・」
途中、いくつもの荒廃した街を目にした
数世紀にわたる戦争で、ほとんどすべて焦土と化していた
かつて栄華を誇ったのであろう宮殿や、巨大な塔の残骸も遠くに見受けられた
もう、資源などほとんど枯渇してしまっているのだろう。理由を超えた、名目だけの戦争が無意味に続けられているのだ
もはや人間など、アンドロイドを管理しているだけの存在に等しい
人間は生き過ぎたのかもしれない。滅びると分かっていても、差異を見いだし、序列をつけようとするのだ
人間がいなくなれば、彼女は救われるのかな?
彼は、虚ろな目で、そんなことを考えていた