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03:魔導師日記



 この世界に転生した時、魔導師ほどの力があると言われた。

 嬉しくて、凄く魔術の練習をした。

 そして成人になった頃、勇者が召喚された。

 同じ、日本人である勇者。ああ、馬鹿らしい。



【牛の月/火の日(晴れ)】


 今日は朝早くに殿下に呼ばれ、王城にいた。王城の客室はこれでもかというほどに豪家だが、実にシンプルだ。

 この国の第一王子――ドミニク様は、愚かな貴族どもが好きな、派手なものは嫌いなようらしい。それは助かる。日本生まれなためか、こういうのは好きじゃない。

 王子は忙しい身であるがゆえに、自ら伝えられた要件は簡単なものだった。この国一番の魔術師を育てるための大きな学園に、講演会をしに行くとのこと。ついでに、異世界人二人の様子を見に行ってほしい、とのこと。

 仕事があると断ることもできたが興味があったため、その言葉に頷いた。さて、好き放題やっている勇者を見に行くか。ついでにオマケの子もな。


【牛の月/木の日(曇り)】


 異世界人二人と、第一王女メイミ様と会った。

 メイミ様は噂通り可愛らしい人だった。淡い金髪にマリンブルーの目。何度かお会いしたが、メイミ様は覚えておいでだろうか。いや、覚えていないだろう。貴族よりは身分が上だが、メイミ様は王女。何人もの知り合いがいるのだから。

 そのメイミ様が腕を組んでいるのが、勇者――異世界人の一人だった。自分と同じ、日本の者。黒髪黒目の、特徴のない勇者だ。だが、その目は人を見下している、嫌な目。だが、自分が想像しているのはどんな美形か、だった。



「なんだ、見たところ平凡だな?」



 そう言うと、勇者は顔を歪め、その隣にいた少女が笑顔になった。

 その少女――ハルカ・ヒムロ。本名は氷室はるか、だろう。その少女はずっと、お飾りの勇者の監視役を求められている可哀想な子。こんな男の傍にいなければならないとは、苦労しているのだろう。ずっと無表情だった顔が笑顔になった。



「名前も名乗らず、第一声がそれですか?」



 一見、怒ってないように笑顔を作った勇者が、そう言った。



「どうせ知っているだろう。いや、知っていてほしいなあ。偉大なる勇者様?」



 そう言い返せば、般若のようになる顔。真っ赤な般若とは。ああなんて恐ろしい。――いや、本当はまったく怖くないが。

 温和な仮面が取れ、口論になってから煩い勇者。そろそろ黙ってくれないか。オマケの少女のほうに興味があるんだ。オマケとしてこちらの世界に来て、こんな男の監視を務めることになった可哀想な少女。今、怒っている少年に対して、どう思っているのだろうか。


 ――ああ、



「あの子が可哀想だな、こんな餓鬼に付き合わされて」



 目を見張る勇者。だって、当たり前だろう?



「お前が本当に〝優しい勇者様〟ならば、どれだけの人が喜んだだろうな」



 いろんな人が喜ぶさ。

 娘に本来いらぬ仕事をさせて、男の傍にいさせていることに哀しんでいる国王様。

 その娘であるメイミ様。魔術の卵。貴族の娘。まだいるハーレム員。

 監視役の少女。その報告を受けている理事長キネイ。


 お前、いらないんだよ。



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