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『つまんない』【短編・コメディ】

作者: 山田文公社

『つまんない』作:山田文公社


「これ…どうかな?」

 手渡した原稿を読み続ける少女に伺うようにして男が感想を催促した。しばらくの沈黙の後少女はしばらくし、ひとこと。

「うん、つまんない」

 そう言い手にした原稿を地面へと落とした。男は慌てて原稿を集めようとしたが、少女は容赦なく原稿を踏みつけ追い打ちのかける。

「それを他の誰に読ませるの?」

 必死で集めてから男は恨みがましい目をしてからボソリと呟いた。

「し、知ってるよ僕に才能が無いことぐらい」

 その言葉を聞いて少女は男を目で殺す程の勢いで睨んでバッサリと切って捨てた。

「うん才能ないから辞めたら?」

 その言葉を聞いて原稿を集めるのを諦めて男は走って去っていった。後ろ姿に少女は容赦なく言葉の矢を放った。

「時間を返せ、クソ豚野郎!」

 少女はそう言い深く息を吐き出してから、鼻と目を時折引きつらせ走って行く男を睨んだ。


「ああ時間を無為にした!」

 一事が万事この調子で少女は生きている。

「あんたそのうち友達いなくなるわよ」

 ボブカットの怪しげな黒ずくめな占い師風の女が腕を組みながら、地団駄を踏んでいる少女の背後から言った。

「誰が友達かっ!」

 その声に敏感な迄に反応をしめした少女は振り向きざまに、男が走って行った方角を指さして振りながら、占い師風の女へと抗議した。

「あれが友達なら秘境の人食い部族共とも友達になれるわっ!」

「酷い言いようね」

「第一に道行く人を呼び止めて『少しで良いから読んで欲しいんだ』なんて言うから読んであげたのに、この仕打ち!」

「確かにそうだけど」

「人生は短いの!だけどあんなつまんないものを通りすがりの人に読ますのって犯罪に等しい!」

「同情はするけどね」


 少女が喚いていると先ほどの男…豚野郎が戻ってきた。

「次の作品を読んで欲しいんだけど」

 そう言い豚野郎は性懲りもなく、再び少女の顔に原稿を押しつけるようにして渡そうとした。

「ちょ、ちょっと…ああウザイ!」

 少女は顔に豚野郎から押しつけられた原稿をはねのけた。

「読んで」

 しかし尚もしつこく豚野郎は原稿を少女へと押しつけた。

 少女の背後で一連の様子を見ながら占い師風の女性は小さく笑っている。心底気分を害した少女は原稿を手に取り冒頭文から、ゆっくりと読み始めた。


○○○○○○○○○○○○○○○


 時はアウステロ歴75年、行き交う人々の顔からは活気が消え去っていた。そんな人々の中に一人の少女が居た。少女の髪は茶色で内側に巻いていて、目は青く肌は白い、誰が見ても可愛いのが特徴だった。少女の名前はメリッサ・ポロンカ。これは少女が世界を革命する物語…


○○○○○○○○○○○○○○○


「あー!」

 少女はそこまで読んで限界を感じた。そもそも読書の習慣も無い少女に気力と根気を求めるのが間違っている。

「つまんない!」

 少女は原稿用紙を空に投げ捨てた。

「ああっ、僕の原稿が!」

 そう言い豚野郎は地面にばらまかれた原稿を拾い集めた。

「なぜ、説明口調!なぜ誰が見ても可愛いのだ!」

 原稿を集める豚野郎を尻目に少女は原稿用紙を踏みにじりながら叫んだ。

「それはイラストで説明するから…」

 叫ぶ少女を見上げながら豚野郎は呟いたが、少女は聞き逃す事はなかった。

「コレは読み物なのだろう!なら文字で説明しろ!」

 とうとう後ろに居る占い師風の女は腹を抱えて笑い出した。

「何がおかしいのだ!」

 背後で突然笑い出した占い師風の女に少女は吠えた。

「だって誰も私がノーパンだなんて思ってないでしょ」

 そう言い占い師風の女は笑っていると、その言葉に豚野郎が食いついた。

「良ければその、見せてください!」

 至って真顔で豚野郎は占い師風の女に正面から一度も目をそらさずに言った。

「いいわよ、でもその前にこの書類にサインして、親御さんから保証人の項目に直筆のサインと印鑑を貰ってきてからね…あ、そうそうシャチハタは駄目だからね」

 そう巻くしたてるように言い、懐から書類を取り出して豚野郎へと手渡した。

「か、家宝にします!」

 大事そうに受け取って、占い師風の女へと頭を深々と下げた。

「出来ればサインして持ってきてね」

 その豚野郎の様子を見た占い師風の女はペンで書く真似をしながら、豚野郎へと告げた。

 そんな様子を少女は唖然としながら見ていた。

「胡散臭え、誰が見ても詐欺臭え、あんたさては詐欺師だな?!」

 少女の叫びに占い師風の女は不適な笑みを浮かべた。

「ふふふ、失礼ね通りすがりのレディを捕まえて詐欺師呼ばわりだなんて、見ての通り私はただのコンビニのレジ打ちよ」

「嘘つけ!そんな怪しげな占い師風のレジ打ち店員が居るコンビニがあるか!!」

「あら、コンビニのレジ打ちは常に進化を続けてるのよ、知らないの?!」

「どこのダーウィニズム進化論だ!」

「あら若いのに難しい言葉を知ってるのね」

 少女が吠えていると、ひとしきり家宝の書類に頬ずりが終わった豚野郎が少女へと、新たな原稿を手に顔の主に左頬を重点的に押しつけてくるのだった。

「こ、これも読んで」

「ちょ、ちょっと…ああウザイ!」

 少女は豚野郎から顔に押しつけられた原稿をはねのけて、原稿を手にして冒頭から読み始めた。背後から占い師風の女の苦笑が聞こえるが無視して読み始めた少女だった。


○○○○○○○○○○○○○○○


 時はペテロテス歴95年、行き交う人々の顔からは活気が溢れていた。そんな人々の中に一人の少女が居た。少女の髪は茶色で内側に巻いていて、目は青く肌は白い、誰が見てもとても可愛いのが特徴だった。少女の名前はメリッサ・ポロロンカ。これは少女が世界を革命する物語…


○○○○○○○○○○○○○○○


 「あー!」

 少女はそこまで読んで限界を感じた。そもそも読書の習慣も無い少女に気力と根気を求めるのが間違っている。

「つまんない!」

 少女は原稿用紙を空に投げ捨てた。

「ああっ、僕の原稿が!」

 そう言い豚野郎は地面にばらまかれた原稿を拾い集めた。

「なぜ、説明口調!なぜ誰が見てもとても可愛いのだ!しかもさっきと同じ内容の気がするんだけど!そして『ロ』を増やすな!」

 原稿を集める豚野郎を尻目に少女は原稿用紙を踏みにじりながら叫んだ。

「だって、もったいないから、それに不足部分はイラスト…」

 叫ぶ少女を見上げながら豚野郎は呟き終わらない内に、少女は聞き逃さずに吠えた。

「コレは読み物なのだろう!なら文字で説明しろ!」

  とうとう後ろに居る占い師風の女は腹を抱えて笑い出した。

「何がおかしいのだ!」

 背後で突然笑い出した占い師風の女に少女は吠えた。

「だって誰も私がノーブラだなんて思ってないでしょ」

「関係ねー事で笑うな!」

 少女の突っ込みはスルーして、占い師風の女が笑っていると、その言葉に豚野郎が食いついた。

「良ければその、見せてください!」

 至って真顔で豚野郎は占い師風の女に正面から一度も目をそらさずに言った。

「いいわよ、でもその前にあなたの預金をこの口座に振り込みして、それから親御さんのタンスから通帳と印鑑を貰ってきて、それで貴方が引き下ろして口座に振り込んでね…あ、そうそうシャチハタは駄目だからね」

 そう巻くしたてるように占い師風の女は豚野郎へ言った。

「出来れば今日中にね」

「胡散臭え、誰が見ても詐欺臭え、どう考えても振り込み詐欺だ!」

 少女の叫びに占い師風の女は不適な笑みを浮かべた。

「ふふふ、失礼ね通りすがりのレディを捕まえて詐欺師呼ばわりだなんて、見ての通り私はただのフラワーショップの店員よ」

「待て!さっきレジ打ちとか言ってなかったか?!」

「あら、状況は常に変化を続けてるのよ、知らないの?!」

「どんなご都合主義だ!」

「あら若いのに難しい言葉を知ってるのね」

 少女が吠えていると、ひとしきり家宝の書類に頬ずりが終わった豚野郎が少女へと、新たな原稿を手に顔の主に左頬を重点的に押しつけてくるのだった。

「こ、これも読んで」

「ちょ、ちょっと…もうウザイ!」

 少女は豚野郎から顔に押しつけられた原稿をはねのけて、原稿を手にして冒頭から読み始めた。背後から占い師風の女の苦笑が聞こえるが無視して読み始めた少女だった。


○○○○○○○○○○○○○○○


 時はロテスペロ歴35年、行き交う人々の顔からは活気とか関係ない。そんな人々の中に一人の少女が居た。少女の髪は茶色で内側に巻いていて、目は青く肌は白い、誰が見てもとてもすごく可愛いのが特徴だった。少女の名前はメリッサ・ポロロロンカ。これは少女が世界を革命する物語…


○○○○○○○○○○○○○○○


 

 「あー!」

 少女はそこまで読んで限界を感じた。そもそも読書の習慣も無い少女に気力と根気を求めるのが間違っている。

「つまんない!」

 少女は原稿用紙を空に投げ捨てた。

「ああっ、僕の原稿が!」

 そう言い豚野郎は地面にばらまかれた原稿を拾い集めた。

「なぜ、説明口調!なぜ誰が見てもとてもすごく可愛いのだ!しかもさっきと同じ内容の気がするんだけど!そして『ロ』をむやみやたらに増やすな!」

 すべて言い終わり肩から息をする少女は、占い師風の女が笑いだそうとしているのを察知してすかさず振り返って言った。

「関係ねー事で笑うな!」

 少女の突っ込みはスルーして、占い師風の女が笑っていると、なぜだか豚野郎が食いついた。

「良ければその、見せてください!」

「何をだ!」

 少女の突っ込みも虚しく、占い師風の女は少し困った様子をしてから言った。

「じゃあ…ちょっとだけよ」

「おい!」

 そうすると占い師風の女は懐から取り出したバナナを剥きはじめた。

「僕、もう…もう駄目です」

 そう言い豚野郎はバナナへと喰らいついたのだ。

「駄目よ、そんなせっかちなんだから…」

 なぜか手にしたバナナを食べられながら、占い師風の女は身もだえしている。

 少女は真っ白になった。

 別にトーン(漫画用の陰影や模様などを表すパターンが印刷されたフィルムの事)が無くなった訳ではない。

 口をパクパクとさせて少女は呟いた。


「つまらない」


 そう、とかくこの世はつまらない、少女は世の無常を感じ秋の吹きすさぶ風を感じるのであった。

お読み頂きありがとうございました。

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