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一目惚れ3

作者: WAIai
掲載日:2026/10/13

春の暖かい日差しの中、ジョンはキャサリンと馬車に乗っていた。

2人は密かに手を繋いでおり、仲睦まじかった。

太陽が嫉妬するほどで、馬車の行く手を照らしてくれる。

「わあ、気持ちがいい!!」

キャサリンは嬉しそうにジョンを見、笑ってくる。

今日は青空を思わせる水色のドレスで、レースやリボンがついていた。

ー可愛いな。

ジョンはふふと笑い、キャサリンに声をかける。

「もう少しで着くよ。そうしたら、もっとわくわくする」

「ええ。楽しみですわ!!」

キャサリンの髪が頬にかかり、彼女が手で取ろうとするのを止め、唇で取ろうと試みる。

「じ、ジョン様ったら…!!」

「ふふ。嬉しいだろう? 私の可愛い人」

軽く口づけると、キャサリンは自分の唇に触れる。

「も、もう…!! その、初めての、その、キスですわ」

「そうなのかい? それは良かった。1番の男になりたいからね」

頭を撫でると、キャサリンが目を細めてくる。

どうやら触れられるのは嫌ではなく、むしろジョンに構われたいようだった。

ジョンはそれならばと、ゆっくりとキャサリンの顎を取る。

ゆっくりと、ぷくりとした唇を奪おうとしたその時。

「ー着きましたよ、ジョン様」

御者が声をかけてきたので、ジョンは悔しそうに手を放す。

キャサリンも息を吐いたので、期待していたのだろうかと思ったのだが、横を向いてしまう。

多分、赤い顔を見られたくないのだろうが、ジョンはそこが可愛いと思い直し、繋いだ手に力を込める。

「よし、降りよう。キャサリン」

「は、はい」

先にジョンが馬車から降り、キャサリンに手を差し出す。

キャサリンは小さくて可愛らしい手を前に出すと、ジョンが力を込める。

「ー愛しているよ、キャサリン」

「ま、まあ…!! もうジョン様ったら」

「本当のことだもの。…ほら、青空も君のドレスに敵わない」

キャサリンは馬車を降り、青空を見つめる。

浮かぶ雲は柔らかく、レースのような美しさのあるものや、翼のあるものを集めたかのような迫力のあるものもあった。

「私のほうじゃなくて、ジョン様も素敵ですわ」

黒のモーニングにチョッキ、トップハット姿は、ジョンも気に入っており、キャサリンを引き寄せる。

2人は見つめ合うと、無言の時を過ごす。

それは心地の良いもので、身体がリラックスしてくる。

「ーあ、バスケット」

キャサリンが慌てて手に持つと、ジョンは少し不満に思いつつも、聞いてみる。

「そのバスケット、何が入っているんだい?」

「内緒ですわ。後のお楽しみにしてくださいませ」

キャサリンが意味深に笑うので、ジョンは期待することにした。

「お前は少しここで待っていろ」

御者に命じると、彼は静かに礼をしてきたのだった。

「じゃあ行こうか。私のお姫様」

「お姫様…!! では、ジョン様は王子様ですわね」

「ありがとう」

どう見ても仲の良い2人に見え、周りが霞んで見えるほどだった。

2人は腕を組んで歩いていくと、アーチが見えてくる。

そこには「いらっしゃいませ。ようこそフラワーショーへ」と書かれている。

そう、2人の目的は花を愛でることだった。

キャサリンを楽しませたくて、ジョンが招いたものである。

「わ。私達の他にも、たくさんのお客様がいらっしゃいますね」

「そうだね。皆、春を楽しみにしていたからね。まあ、冬は冬で楽しいのだけれど」

ジョンがそう言うと、キャサリンに確かめる。

「足の速さはこれでいい?」

「十分ですわ。行きましょう」

キャサリンは興奮しているらしく、声が明るかった。

ー良かった。誘って。

そう思うと、フラワーショーへ入って行く。

すると水仙が咲いており、2人を出迎える。

水仙はラッパ水仙と呼ばれ、春を告げる花の1つだった。

「まあ!! 黄色が可愛らしい!! 香りをかいでも?」

「いいよ。ほら、楽しんで」

手を放すのは淋しかったが、キャサリンが嬉しそうに、水仙に顔を近づける姿は美しかった。

ー周りの人間がちらちら見ているから、気をつけなければ。

ジョンは気を引き締めると、キャサリンの側に立ち、守るつもりだった、

キャサリンはそんなことは知らず、ジョンを呼ぶ。

「ジョン様、良い香りがしますわ!! ほら」

腕を引っ張られたので、ジョンは一緒になって匂いを嗅ぐ。

香水よりは弱いが、好意を与えてくれる香りで、ジョンも微笑む。

「いい香りだね。うーん、キャサリンだと思って、えい」

ジョンが軽く水仙にキスすると、キャサリンが「きゃ」と声を上げる。

「どう? 嬉しい?」

「も、もう!! ジョン様ったら…!!」

行こうとするキャサリンを掴まえ、頬にキスをする。

「花とキスはいかがかな、キャサリン?」

「し、知りませんわ!! もう私はその…」

「はは。固まった君はとても可愛らしくて、楽しい」

「もう!! 私は心臓が止まりそうですわ」

キャサリンが頬を膨らませたので、ジョンは彼女の手を取り、先へと促す。

「次へ行こう。えっと、ああ、バラのアーチだ」

ジョンが指差すと、キャサリンがバラを見つめる。

ピンクに赤と色んな色があるのだが、キャサリンはピンクのバラに触れてみる。

「綺麗ですわ。まるで太陽のように華やかで、1輪1輪が目立つというか…。でもトゲで守ろうとしているので、実際は弱い花なのかもしれません」

「面白い解釈だ。キャサリンは詩人になれるね」

「そうですか? 私、変なことを言ってます…?」

「いや、言ってない。大丈夫だ」

ジョンがバラを指で弾くと、ふわりと香りが漂ってくる。

キャサリンは目を輝かせながら、道を進んでいく。

「絵を描きたくなりますわ」

「絵か…。キャンバスを持ってくれば良かったかな?」

「そうですわね…。でも胸に焼き付けるので、大丈夫ですわ」

キャサリンは上機嫌で、足取りが軽やかになっていく。

ジョンはその姿に微笑み、バラのアーチを進んでいく。

「あら!! まあ!! ミモザですわ」

黄色い花は1つずつ小粒なのだが、それが集まって咲いており、風に揺られて気持ちが良さそうだった。

「ジョン様、ミモザは綺麗ですわね」

「綺麗なのはキャサリンだよ。私を枝と例えると、キャサリンは満開の花かな」

「まあ!! ジョン様こそ詩人じゃないですの」

キャサリンの指摘に、ジョンは肩を竦める。

「そんなことはないよ。純粋に言ったまでだ」

「純粋に…。…その、私、花よりも綺麗でしょうか?」

「何を言っているんだ。キャサリンはいつも美しい」

引き寄せて髪にキスすると、キャサリンの頬が赤くなる。

「あの、他の御方が見ていますので」

「関係ない。必要なのはキャサリンだけ。私の心臓はキャサリンでできているんだよ」

「そうですの!! じゃあ私がしっかりしませんと」

「いや、今のままでいい。可愛らしいから」

「もう…。その、ジョン様も頼もしい御方ですわ」

「そう? ありがとう、キャサリン」

軽く持ち上げると、キャサリンが短い悲鳴を上げた。

周りは何事かと見てきたが、ジョンは構わなかった。

「お許しくださいませ」

「嫌だね。私を好きだと言ったら、放そう」

「意地悪ですわ。私は、その、ジョン様のことを好いていますのに」

「やっと言ったな。良かった」

満足そうにしつつ放すと、キャサリンは安堵したような、淋しいような複雑な表情となる。

ジョンは少しやり過ぎたかと思い、話をはぐらかせることにした。

「ーそれ。バスケットの中身は何?」

「ああ、そうですわね。そろそろお見せしませんと」

キャサリンはまだ顔が赤いまま、バスケットを開く。

ジョンが興味津々に覗くと、「わお」と声を上げる。

「パン!! しかも…レーズンパン?」

「そうですの。私が作りまして…その、ジョン様に食べてもらおうと思いまして」

「食べる。もちろん食べる。今すぐ!!」

「え、今すぐ!? あの、でもテーブルが…」

「そんなものはいらない。私の目にはキャサリンしか映ってないから。1個くれないか?」

「ーはい、どうぞ」

恥ずかしそうにキャサリンがパンを渡すと、ジョンはちぎって一口含む。

噛んだ瞬間、パンの甘味とレーズンの甘さが口の中に広がり、良い香りが鼻から出ていく。

「美味しい!! 美味しいよ、キャサリン!!」

「ありがとうございます。これ全部、ジョン様にあげようと思って持ってきましたの」

「もらう!! もちろんさ!! ああ、美味しい」

パンを全部口に入れると、ジョンはキャサリンの肩を叩く。

「自信を持っていい。キャサリンは私のお嫁さんにふさわしい。めでたい、めでたい!!」

「もうオーバーですわ」

そう言ったが、キャサリンは嬉しそうだった。

ジョンは手をハンカチで拭くと、キャサリンと手を繋ぐ。

「ーキャサリン、君は最高だよ。今日はゆっくり楽しもう!!」

「はい!! フラワーショー、楽しいですわ」

「まだ色んな花があるみたいだからね。疲れたら休んで、パンを食べよう」

「そうしましょう。ほほ」

キャサリンの笑い声は星の輝きよりも美しく、ジョンは素早く唇にキスをする。

「ま、まあ…」

「いいの。婚約者なんだから」

そう言うと、ジョンはキャサリンの手を握りしめ、太陽を指差す。

「ほら、太陽も君を歓迎している。フラワーショーじゃなくて、キャサリンショーと言ってもいいかもしれない」

「恥ずかしいですわ」

キャサリンはバスケットを上げると、ジョンはそれを受け止めながら言ってくる。

「これからよろしく、キャサリン」

「こちらこそ。お願いいたしますわ」

2人は笑い合うと、花のアーチを進んでいくのだった。


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