第59話 何も困っていない街
レンバートから二日歩いた先に、小さな街があった。
石畳は整い、
露店は穏やかに並び、
怒鳴り声も、揉め事もない。
「……平和ね」
ミアが、あっさりと言う。
「はい」
アレンは、街をゆっくり見渡した。
水路は澄み、
橋は軋まず、
掲示板には“解決済み”の印が多い。
---
ギルドに立ち寄る。
「何かお困りですか?」
受付が、丁寧に聞く。
「いえ」
「依頼は?」
「受けません」
「視察ですか?」
「いいえ」
一拍。
「見に来ただけです」
---
街を歩く。
畑は整い、
子どもが走り、
商人が笑う。
問題は、ゼロではないだろう。
だが、止まってはいない。
「……何も、することないわね」
「はい」
アレンは、小さくうなずく。
---
橋の上で、立ち止まる。
川は、穏やかに流れている。
「困っていない街、どう?」
ミアが聞く。
「安心します」
「寂しくない?」
「少し」
正直な答えだった。
---
「昔なら」
ミアが、空を見上げる。
「何か探してたわよね」
「はい」
「今は?」
一拍。
「探しません」
---
夕暮れ。
ギルドの前で、若い冒険者たちが話している。
「判断は?」
「仮でいい」
「何を守る?」
その言葉は、
どこかで聞いたものだった。
だが、もう自分の声ではない。
---
宿に戻る途中。
「ここ、どうだった?」
「大丈夫でした」
「それだけ?」
「それだけです」
ミアは、笑う。
「物語にならないわね」
「はい」
「それでいい?」
アレンは、ゆっくりとうなずいた。
「はい」
---
夜。
日記に書く。
> 何も困っていなかった
> 何も言わなかった
> それでよかった
助けなくていい。
直さなくていい。
決めなくていい。
それでも、
街は回っている。
**それを確認できたことが、
今日の収穫だった。**
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




