第57話 もう、呼ばれない
その日は、本当に何もなかった。
ギルドに顔を出しても、
特別な視線はない。
「おはようございます」
「おはよう」
それだけだ。
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掲示板には、新しい依頼。
横には、更新された仮判断。
誰も、こちらを見ない。
それは冷たさではない。
必要がない、ということだ。
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昼。
セラが、静かに言う。
「最近、同行の希望は?」
「ありません」
「困りますか」
アレンは、少し考えた。
「……いいえ」
「寂しくは?」
「少し」
正直に答える。
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外に出る。
ユーノが、別の若手に説明している。
「ここで迷ったら、
何を守るかだけ決める」
「答えは?」
「ない」
「え?」
「ないから、決める」
その会話を、遠くから聞く。
自分の言葉ではない。
もう、彼の言葉だ。
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夕方。
ミアが隣に立つ。
「完全に止まったわね」
「はい」
「呼ばれない」
「はい」
「それで?」
一拍。
「……安心しています」
「本当?」
「はい」
そして、続ける。
「少しだけ、怖いです」
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夜。
日記を開く。
> 呼ばれない
> 困られていない
役目が消えたのではない。
役目が、分散した。
それが、静かに実感として落ちてくる。
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窓の外。
誰かが走る。
誰かが迷い、
誰かが決める。
そこに、自分はいない。
それでも、
問題は解かれていく。
**もう、呼ばれない。**
それは、
役目の終わりであり、
物語の完成だった。
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