第56話 広がる線
レンバートから三日離れた小さな町、レインダ。
そこでも最近、「仮判断」という言葉が使われ始めていた。
「レンバート式、らしい」
「判断を先に出すってやつだろ」
「正解じゃなくていいって」
噂は、ゆっくりと広がる。
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レインダのギルド。
若い受付が、一冊の束を机に置いた。
「これ、届きました」
「何だ?」
「写しです。判断の痕跡、という記録」
支部長が、眉を上げる。
「答えは書いてあるのか」
「いいえ」
「……役に立つのか?」
受付は、少しだけ考えた。
「考える材料には、なります」
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その日の午後。
川沿いの堤が、一部崩れた。
規模は小さい。
だが、放置はできない。
「封鎖か?」
「修復か?」
「様子見か?」
議論が揺れる。
そのとき、受付が記録を開く。
> 正解が見えないとき
> 何を守るかだけ決める
「……何を守る?」
支部長が、腕を組む。
「町だ」
「なら」
一拍。
「通行を止める」
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翌日。
封鎖は不満を呼んだ。
だが、二日後に雨が降り、
崩れは広がった。
「……止めておいてよかったな」
誰かが、ぽつりと呟く。
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レンバート。
アレンは、その話を聞かされる。
「レインダで使われたらしいわよ」
ミアが、報告書を軽く振る。
「そうですか」
「あなた、行ってない」
「はい」
「それでも、線は届いた」
アレンは、少しだけ空を見上げる。
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夜。
日記に書く。
> 見ていない場所で
> 判断が出た
歩いていない。
問いも投げていない。
それでも。
**線は、広がる。**
自分のいない場所で、
自分のいない判断が生まれる。
それが、
望んでいた形だった。
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