第50話 呼ばれなかった日
翌朝。
レンバートは、いつもと変わらない顔をしていた。
荷車が通り、
商人が値を交渉し、
冒険者が掲示板を眺める。
どこにも、特別な気配はない。
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アレンは、掲示板の前に立った。
新しい依頼。
更新された仮判断。
昨日の案件の結果。
そこに、自分の名前はない。
当然だ。
最初から書かれていない。
だが――。
「……終わりましたね」
小さく、呟く。
「何が?」
ミアが隣に立つ。
「昨日の件です」
「ええ」
「僕がいなくても」
「ええ」
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昼。
ユーノが、報告を持ってくる。
「北、問題なしです」
「そうですか」
「封鎖、少し不満出ましたけど」
「はい」
「でも、崩れませんでした」
少し誇らしげな顔。
「よかったですね」
アレンは、穏やかにうなずく。
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ユーノが去ったあと。
ミアが、ぽつりと言う。
「あなた、複雑な顔してる」
「……そうですか?」
「嬉しいけど、少し寂しい顔」
図星だった。
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宿の裏庭。
木箱に座り、空を見上げる。
「……呼ばれない」
言葉にしてみる。
以前なら、安心だった。
今は、違う。
「役目が、減った気がします」
「減ったのよ」
ミアは、あっさり言う。
「でもね」
一拍置く。
「役目が減るってことは、
その分、残ったってこと」
「……残った」
「あなたがいなくても回るって、
証明されたのよ」
アレンは、静かに息を吐く。
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「ねえ」
ミアが、少しだけ真面目な声になる。
「もし明日、誰も呼ばなかったら」
「はい」
「それでも、歩く?」
少し長い沈黙。
風が、葉を揺らす。
「……はい」
ゆっくりと、答える。
「今度は」
「?」
「困っている場所を探すためじゃなく」
「うん」
「**ただ、見に行くために**」
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夜。
日記に書く。
> 呼ばれなかった
> 回っていた
> それでも、歩きたいと思った
依存ではない。
必要でもない。
それでも歩く。
その理由を、
初めて自分で選んだ気がした。
呼ばれなかった日。
それは、
失われた日ではなく、
選び直した日だった。
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