第49話 呼ばれなかった判断
レンバート冒険者ギルドの会議室。
いつもより人が多い。
「北の街道、崩落の兆候あり」
「南の水路、流量増加」
「西の倉庫、利用者増加」
三件同時。
規模としては、この数か月で最大だった。
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「……呼ぶか?」
誰かが、ぽつりと言う。
名前は出ない。
だが、全員が思い浮かべる人物は同じだ。
支部長は、静かに首を振った。
「呼ばない」
「しかし――」
「呼ばない」
二度目は、少しだけ強かった。
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宿。
アレンは、いつも通り裏庭にいた。
今日は誰も来ない。
「……静かですね」
「ええ」
ミアは、ギルドの方角を見た。
「今日は大きいわよ」
「そうですか」
「呼ばれてない」
「はい」
アレンは、うなずいた。
それ以上、何も言わない。
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北の街道。
「仮判断を出す」
若手冒険者が、声を張る。
「崩落箇所は完全封鎖」
「迂回路の整備を優先」
「反対は?」
何人かが迷う。
だが、手は上がらない。
「……よし、決定」
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南の水路。
「流量を半分、畑へ」
「家屋側は経過観察」
「リスクは?」
「ある」
「でも、放置よりはいい」
「……決めよう」
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西の倉庫。
「夜間制限」
「管理者を置く」
「費用は?」
「分担」
ぎこちない。
完璧ではない。
だが、止まらない。
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夕方。
ギルドに報告が戻る。
「事故なし」
「小さな不満あり」
「だが、混乱なし」
ハロルドが、静かに息を吐く。
「……回ったな」
支部長は、ゆっくりとうなずいた。
「回った」
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夜。
ミアが、報告を伝える。
「成功よ」
「はい」
「呼ばれなかった」
「はい」
「どう思う?」
アレンは、少し考えた。
「……安心しました」
「それだけ?」
「少し、寂しいです」
正直だった。
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ギルドの窓から、灯りが漏れている。
今日は、彼がいなくても動いた。
誰かが迷い、
誰かが決め、
誰かが責任を持った。
その中心に、
彼はいなかった。
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アレンは、静かに空を見上げる。
星は、変わらない。
世界は、少しだけ変わった。
**呼ばれなかった。
それは、失われた役目ではなく、
果たされた役目だった。**
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