第48話 依存の芽
その日の午後。
カルドが、久しぶりに宿を訪れた。
「……少し、話せるか」
「はい」
アレンは、いつものように穏やかに答える。
ミアは、少し離れた席に腰を下ろした。
話の流れを、静かに見守る位置だ。
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「最近、断ってるらしいな」
「はい」
「俺も、この前断られた」
「はい」
否定しない。
言い訳もしない。
カルドは、少しだけ笑う。
「正直に言う」
「はい」
「一緒に来てもらえれば、
失敗しにくいと思った」
「……」
「判断を早めたいわけじゃない。
保険だ」
空気が、わずかに重くなる。
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アレンは、しばらく黙っていた。
怒っていない。
失望もしていない。
ただ、言葉を選んでいる。
「カルドさん」
「なんだ」
「僕は」
一拍置く。
「失敗を減らすための保険ではありません」
カルドの表情が、わずかに動く。
「……分かってる」
「いいえ」
アレンは、穏やかに続ける。
「分かっていても、
使ってしまいます」
カルドは、言葉に詰まった。
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「一緒にいると」
アレンは、静かに言う。
「決めなくていい理由が、
どこかに生まれます」
「……」
「それが、怖いんです」
宿の中は、静まり返っていた。
「僕は」
はっきりと。
「**責任を、代わりません**」
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カルドは、しばらく俯いていた。
怒っていない。
責められているわけでもない。
だが、逃げ道が消えた感覚があった。
「……きついな」
「はい」
「でも、正しい」
カルドは、ゆっくりと立ち上がる。
「次は、一人で行く」
「はい」
「失敗しても?」
「はい」
アレンは、迷わなかった。
「その方が、残ります」
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カルドが去ったあと。
ミアが、静かに言う。
「……言ったわね」
「はい」
「後悔は?」
「ありません」
即答だった。
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夜。
アレンは、日記に短く書いた。
> 保険にはならない
> ならないと、言った
選ばれるのは、楽だ。
頼られるのは、心地いい。
だが。
**依存の芽は、
小さいうちに切らなければならない。**
線を引いた。
それは、
相手のためであり、
自分のためでもあった。
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