第42話 例外という穴
問題が起きたのは、成功の報告が一巡した翌日だった。
場所は、レンバートからさらに西。
支部間連携の対象外とされていた、小さな山道。
「……ここだけ、報告が遅い」
ハロルドが、眉を寄せる。
「人員不足?」
「いいえ。
現地判断が、止まっています」
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山道は、特殊だった。
道は一本。
迂回はない。
整えると崩れる。
放置すると危険。
「……線が引けないな」
現地に入った冒険者が、低く呟く。
「通すか、止めるか。
どちらも、被害が出る」
仮判断を書こうとして、ペンが止まる。
【仮判断】
・通行制限……未定
誰も、書き切れなかった。
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夕方。
現地からの報告を受けて、
ギルド内に小さな緊張が走る。
「判断不能、だと?」
「はい。
条件が噛み合いません」
支部長は、しばらく黙っていた。
「……聞いてみるか」
誰に、とは言わなかった。
だが、全員が分かっていた。
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宿。
ミアが、ためらいがちに口を開く。
「……ねえ、アレン」
「はい」
「今回は」
一拍置く。
「“線を引く人”が、いない」
アレンは、すぐには答えなかった。
地図を広げ、
指で山道をなぞる。
「……行きません」
ミアは、息を詰めた。
「え?」
「今回は、
僕が行くと」
一拍置く。
「“例外”になります」
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翌日。
ギルドは、別の方法を取った。
複数人を集め、
意見を割り、
時間をかけた。
結果。
【仮判断】
・時間帯別通行
・夜間全面封鎖
・昼間は一人ずつ誘導
遅い。
だが、決めた。
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数日後。
事故は起きなかった。
不便は残った。
文句も出た。
それでも、
道は使われ続けた。
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報告を聞いて、
ミアが言う。
「……結局、回ったわね」
「はい」
アレンは、静かに答える。
「時間は、かかりましたが」
「あなたが行ってたら?」
「早かったと思います」
「でも?」
「**残らなかった**」
ミアは、ゆっくりうなずいた。
「……なるほど」
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一方。
別の街で、
ガルドは話を聞いていた。
「判断が止まった場所が、あったらしい」
「でも、
皆で決めたと」
ガルドは、小さく笑った。
「……それが、限界で」
「?」
「それが、成長だ」
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レンバートの夜。
アレンは、静かに思う。
自分がいなくて困る場所は、ある。
だが、それは“必要”ではない。
**時間をかければ、
世界は自分で答えに辿り着く。**
例外は、穴ではない。
学びの跡だ。
今日も彼は、
歩かなかった。
それで、十分だった。
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