第40話 戻ってきた結果
問題が起きたのは、ガルドたちが現地を離れて三日後だった。
場所は、街道沿いの古い倉庫跡。
依頼内容は曖昧で、危険度も低い。
だからこそ、彼らはこう書いた。
【仮判断】
・現状維持
・顕在化した場合、再調査
“無難”な判断。
少なくとも、そう思っていた。
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「……顕在化、したな」
ガルドは、報告書を読んで低く呟いた。
倉庫跡に人が集まり始め、
夜間に小さな揉め事が起きた。
怪我人はいない。
犯罪とも言い切れない。
だが――。
「判断が遅れた、と」
エリスが、紙を指でなぞる。
「“現状維持”って書いたから、
誰も線を引かなかった」
ブラムが、苦々しく言う。
「使っていいのか、悪いのか。
分からなかったんだ」
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ギルドでの呼び出し。
受付職員は、責める口調ではなかった。
「失敗、という扱いではありません」
「……だが」
「仮判断は、
結果とセットで見直されます」
机の上に、紙が置かれる。
【結果】
・人の滞留が発生
・管理者不在による混乱
【修正案】
・夜間立入制限
・利用目的の明示
ガルドは、唇を噛んだ。
「……最初に、書くべきだった」
“顕在化したら考える”。
それは、判断ではなかった。
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宿への帰り道。
「なあ」
ブラムが、珍しく静かな声で言う。
「俺たち、
“決めた気”になってただけじゃないか」
エリスが、ゆっくりうなずく。
「線を引かなかった。
責任も、持たなかった」
リーナは、俯いたまま言う。
「……仮判断って、
逃げ道じゃないんだね」
ガルドは、足を止めた。
「……ああ」
短く、だが重い返事だった。
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同じ頃。
レンバートの宿で、
ミアが報告を聞いていた。
「……元パーティ、
やらかしたって」
「そうですか」
アレンは、それ以上聞かなかった。
「行かないの?」
「はい」
ミアは、少し考えてから言う。
「……冷たい?」
アレンは、首を振った。
「今、行くと」
一拍置く。
「“代わりに決める人”になります」
ミアは、静かに息を吐いた。
「……それを、
一番やっちゃいけないのよね」
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翌日。
ギルドの簡易指針に、
また一文が追加された。
> 仮判断には、
> “線”を含めること
短いが、重い。
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ガルドは、その文を見て立ち止まった。
「……線、か」
エリスが言う。
「引くってことは、
誰かに嫌われる可能性もある」
「それでも、だ」
ガルドは、前を見た。
「決めないより、マシだ」
ようやく、
同じ場所に立った。
追いついたわけではない。
だが、少なくとも――
逃げなくなった。
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レンバートの夜。
アレンは、灯りを落とす。
誰かの失敗が、
誰かの学びになる。
それでいい。
**判断は、返ってくる。
だからこそ、残す意味がある。**
今日も彼は、
歩かなかった。
それで、世界はまた一歩進んだ。
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