表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/60

第38話 決めるのが、怖い

 レンバート冒険者ギルドの空気は、少しだけ変わっていた。


 騒がしいわけではない。

 だが、報告書を書く手が、皆どこか慎重だ。


「……仮判断、か」


 若い冒険者が、紙を前に唸っていた。


「書けばいいだけだろ?」


 仲間が軽く言う。


「間違っても修正できるって」


「それは、分かってる」


 冒険者は、ペンを止めたまま続ける。


「でもさ。

 “判断した”って残るだろ」


 誰も、すぐには答えられなかった。


---


 問題の現場は、小さな橋だった。


 壊れてはいない。

 だが、雨が降ると滑りやすい。


「……どうする?」


「板を足す?」


「いや、重さが増えると危ないかも」


「じゃあ、滑り止め?」


 話し合いは続く。

 だが、結論が出ない。


 結局、彼らはこう書いた。


【調査完了】

【判断:保留】


---


 夕方。


 ギルドで、ハロルドが報告書を確認していた。


「……保留?」


 眉が、わずかに動く。


「はい」


 冒険者は、少し身構えながら答える。


「仮判断は、

 どう書いていいか分からなくて」


 ハロルドは、しばらく黙った。


「では、質問します」


「?」


「あなたは、

 この橋を今夜渡りますか?」


「……渡ります」


「慎重に?」


「はい」


「それが、判断です」


 冒険者は、目を見開いた。


「それを、

 書けばいい」


---


 後日。


 別の冒険者が、その橋を渡りながら言った。


「……あれ?

 前より、気をつけるようになったな」


 橋は変わっていない。

 だが、注意書きが増えていた。


【雨天時注意/滑りやすい】


 小さな変化。

 だが、転倒は減った。


---


 その話を、ミアがアレンに伝える。


「聞いた?」


「はい」


「誰も直してないのに、

 事故が減ったって」


「判断が、共有されたんですね」


「……あなた、本当に」


 一拍置く。


「世界を“少し考えさせる”のが得意ね」


 アレンは、少し困ったように言った。


「怖いですよね。

 決めるの」


「怖いわよ」


 ミアは、即答した。


「でもね」


 少しだけ、声を落とす。


「決めない方が、

 もっと怖いって、

 皆分かり始めてる」


---


 一方。


 別の街の宿で、

 ガルドは紙を睨んでいた。


「……仮判断を出せ」


 そう書かれた依頼。


「間違ってもいい、か」


 エリスが言う。


「それが、できないから、

 今まで詰んでたんじゃない?」


 ガルドは、返事をしなかった。


 ペンを持ち、

 止め、

 また置く。


 “決める”という行為が、

 これほど重いとは、

 思っていなかった。


---


 レンバートの夜。


 アレンは、宿の灯りを消しながら思う。


 判断は、怖い。

 だから、人は避ける。


 だが。


 **怖いまま、進む方法**が、

 少しずつ、世界に広がっている。


 それでいい。


 正解でなくても。

 完璧でなくても。


 歩かなくても、

 世界は前に進める。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ