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役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


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第36話 放置の、その先

 レンバートから北へ半日。


 小さな村、ベルナで起きたのは――

 本当に小さな事故だった。


「……ああ、やっちまったな」


 村の入口で、年配の男が肩を落とす。


 馬車の車輪が、ぬかるみに嵌まっている。

 転倒も、怪我人もいない。


 ただ、動けない。


 数日前。


 この道は、調査だけされていた。


「雨の後は、少し危ないかもしれない」


「でも、判断は現地で」


 そう言って、誰も決めなかった。


 結果――

 誰も、何もしなかった。


「……誰か、呼ぶか?」


「ギルドに?」


「いや」


 村人の一人が、首を振る。


「今回は、

 俺たちで何とかしよう」


 皆、顔を見合わせる。


 少し迷ってから、

 数人が動いた。


 板を持ってくる者。

 石を集める者。

 水を流す溝を掘る者。


 誰も専門家ではない。

 完璧でもない。


 だが。


「……通れるな」


 馬車は、ゆっくり動き出した。


 その日の夕方。


 村で、小さな話し合いが開かれた。


「この道」


 年配の男が言う。


「次も同じことが起きる」


「……だな」


「だから」


 一拍置く。


「最低限だけ、整えよう」


 誰も反対しなかった。


 翌日。


 村人たちは、道の端に溝を掘り、

 ぬかるみやすい部分に石を置いた。


 派手さはない。

 だが、確実に違う。


 数日後。


 レンバートのギルドに、報告が届く。


「ベルナ村、

 自分たちで対応」


「判断は?」


「仮判断を出し、

 修正しながら進めていると」


 ハロルドは、報告書を閉じた。


「……いい流れですね」


 その話を聞いて、

 ミアがアレンを見る。


「聞いた?」


「はい」


「行かなくてよかったわね」


「はい」


 アレンは、静かに答える。


「行っていたら、

 “任せる理由”になっていました」


 ミアは、苦笑した。


「本当に、

 動かない勇気、持ってるわね」


 一方。


 別の街の宿で、

 ガルドは話を聞いていた。


「……放置した結果、

 事故が起きた」


「でも」


 エリスが、低く言う。


「誰かが決めて、

 直した」


 ガルドは、黙った。


 事故は、失敗だ。

 だが、致命傷ではない。


 そして。


 その後の対応が、

 自分たちにはまだできない。


 レンバートの夜。


 アレンは、宿の窓から外を見ていた。


 歩かなかった日。

 それでも、道は少し良くなった。


 誰かが転び、

 誰かが考え、

 誰かが直した。


 それでいい。


 世界は、少し遅れても、

 自分で進める。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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