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役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


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第33話 考え始めた街

 ミルドの街道は、数日前より少しだけ様子が変わっていた。


 大きく整えられたわけではない。

 舗装もされていない。


 だが――。


「……ここ、前より安全だな」


 荷車を引く商人が、ぽつりと言った。


「段差、埋めたんだな」


「全部じゃない」


 別の商人が言う。


「危ないところだけ」


 街の外れ。


 数人の住民が、道の脇で話していた。


「ここは、前に転んだ場所だ」


「じゃあ、ここだけ直そう」


「でも、この辺は触らない方がいい」


「獣が通る」


 誰も、声を荒げない。


 誰か一人が決めているわけでもない。


 ただ、

 考えている。


 ミアとアレンが再び街を訪れたのは、

 その三日後だった。


「……やってるわね」


 ミアが、周囲を見る。


「はい」


 アレンは、静かにうなずく。


 以前は“何もしない”で止まっていた街が、

 今は“少しずつ選んで”動いている。


 街の代表が、二人に気づいて近づいてきた。


「……この前は」


「いえ」


 アレンは、先に首を振った。


「今日は、様子を見に来ただけです」


「正直に言います」


 代表は、少し照れたように言う。


「最初は、

 “触らないのが正解”だと思っていました」


「はい」


「でも」


 一拍置く。


「それじゃ、

 誰も責任を持たない」


 ミアは、思わずうなずいた。


「……そうなのよ」


「だから」


 代表は続ける。


「“ここだけは直す”って、

 皆で決めました」


 アレンは、ゆっくり言った。


「それで、どうですか?」


「完璧じゃありません」


 代表は、はっきり答えた。


「でも、

 自分たちで選んだので」


「はい」


「納得しています」


 少し離れた場所で、

 狩人と商人が話していた。


「獣、減ってないな」


「道も、使える」


「……ちょうどいいな」


 その言葉に、

 誰も反論しなかった。


 帰り道。


「ねえ、アレン」


「はい」


「もう、

 あなたが何かしなくても」


「はい」


「勝手に、育つわね」


 アレンは、少し考えてから言った。


「それなら、

 来る回数を減らせます」


「そこ?」


「はい」


 ミアは、思わず笑った。


「……ほんとにブレない」


 その夜。


 ギルドの簡易指針に、

 追記がなされた。


判断は、現地で共有されると強くなる


 名前はない。

 署名もない。


 だが。


 考え方は、確実に根付き始めていた。


 一方。


 別の街の宿で、

 ガルドは静かに酒を飲んでいた。


「……俺たちは」


 ぽつりと呟く。


「正解を探してた」


 エリスが、低く答える。


「でも、

 あの人は」


 一拍置く。


「正解を作らせている」


 ガルドは、杯を置いた。


 ようやく、

 追いつけない理由が見えた。


 そして。


 名前を知らないままでは、

 もう先に進めないことも。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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これからもどうぞよろしくお願いします!

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