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役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


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第31話 逆の答え

 レンバートから二日ほど離れた小さな街、フレイア。


 ここでも、同じような問題が起きていた。


「……街道を整えるか、残すか」


 街の集会所で、数人が腕を組んでいた。


 商人。

 狩人。

 そして、街の代表。


「レンバートでは、分けたそうだな」


「聞いた」


「結果は……まあ、悪くはないらしい」


 だが、この街は違った。


「うちは、狩りが命だ」


 年配の狩人が、はっきり言う。


「道を広げれば、獣は逃げる」


「商いは?」


 若い商人が、遠慮がちに聞く。


「多少、不便でも回る」


 沈黙。


 全員が、同じ方向を見ていた。


 そこにいたのは、

 レンバートから来た若手冒険者だった。


「……あの」


「なんだ?」


「判断を分ける方法も、ありますけど」


 彼は、以前アレンから助言を受けた一人だ。


「でも」


 一拍置く。


「この街では、

 選ばない方が、逆に分かりやすいかもしれません」


 代表が、目を細める。


「どういう意味だ?」


「全部を便利にしない」


「……」


「狩りを中心に、

 街の形を保つ」


 商人が、少し悩んだ末に言った。


「……遠回りになるが」


「それで、いい」


 代表が、うなずいた。


 数日後。


 街道は、ほとんど触られなかった。


 草も残り、

 獣道もそのまま。


 だが。


「……狩りの戻り、早くなってないか?」


「獲物、増えてるな」


「保存食が増えたぞ」


 結果として、

 街の物資は安定した。


 商人も、納得する。


「量は減ったが、

 質が上がった」


 誰も、後悔していなかった。


 その報告は、レンバートにも届く。


「……逆の判断で、成功?」


 ミアが、目を丸くする。


「はい」


 ハロルドが、うなずく。


「“整えない”選択です」


 ミアは、思わず笑った。


「……ほんと、正解って一つじゃない」


 アレンは、静かに言った。


「場所が違えば、

 答えも変わります」


「それを、

 あなたは最初から知ってた」


「……知っていた、というより」


 少し考えて、続ける。


「決めない方が、

 長く続くと思いました」


 その夜。


 ギルドの簡易指針に、

 もう一文が追加された。


正解は、場所ごとに変わる


 短いが、重い一文だった。


 一方。


 別の街で、ガルドは報告を聞いていた。


「……整えないで、成功?」


「はい」


「……なぜだ」


 エリスは、唇を噛む。


「私たちは、

 “一番良い答え”を探していた」


「……違う」


 ガルドが、低く言う。


「一番分かりやすい答えを選んでいた」


 それが、致命的な差だった。


 レンバートの夜は、今日も静かだ。


 問題は、まだある。

 だが、答えは一つではない。


 そして。


 誰もが気づき始めていた。


 あの冒険者は、

 答えを持っているのではない。

 “考え方”を残しているのだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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