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役に立たないと追放された主人公が、 実は“行動=経験値”という規格外成長で、 世界の基準そのものを置き去りにしていく話  作者: 蒼井テンマ


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30/60

第30話 正解を選んだつもりで

 ガルドたちは、再び同じ街道に立っていた。


 少し前に手を入れた場所。

 そして、別のパーティが「うまくやったらしい」と噂になっている場所。


「……ここか」


 ガルドが、地図をたたむ。


「噂通りなら、

 “選択を分けた”らしいな」


 エリスが、眉をひそめる。


「中途半端だと思うけど」


「だが、評判は悪くない」


 ブラムが言う。


「商人も、狩人も、

 どっちも納得してるって」


 リーナが、不安そうに口を挟んだ。


「……本当に?」


「納得“しているように見える”だけかもしれない」


 エリスは、少し冷たく言った。


「だったら、

 はっきりさせた方がいい」


 ガルドは、うなずいた。


「中途半端が一番良くない」


 その判断は、

 理屈としては正しかった。


「なら、商人寄りで行く」


 ガルドは、即断した。


「物流が回れば、

 街全体が潤う」


「狩人は?」


 リーナが聞く。


「代替の狩場を探せばいい」


「……簡単に言うけど」


 ブラムは、気にしなかった。


「俺たちが整えれば、

 文句は出ないだろ」


 彼らは、作業を始めた。


 獣道を潰し、

 草を刈り、

 道を広げる。


「これで、

 誰が通っても楽だ」


 ガルドは、満足そうだった。


 数日後。


 最初に声を上げたのは、狩人だった。


「……獣が、来なくなった」


「全部、いなくなった」


 怒鳴り込むことはない。

 ただ、困った顔。


「街道が、完全に人の道になった」


「仕方ないだろ」


 ガルドは、言い切った。


「街の発展のためだ」


 狩人は、それ以上言わなかった。


 だが、

 二度とその道を使わなくなった。


 次に来たのは、商人だった。


「確かに、通りやすい」


「だろ?」


「だが……」


 商人は、少し言いづらそうに言う。


「狩人が来なくなって、

 街の外れが静かすぎる」


「……?」


「夜の見回りが減った。

 結果、盗難が増えた」


 ガルドは、言葉を失った。


 ギルドでの報告。


 受付職員は、書類を見て首をかしげた。


「……短期的には、成功です」


「短期的?」


「物流は改善。

 事故も減少」


「なら、問題ないだろ」


 だが、職員は続けた。


「中期的に、

 周辺治安が悪化しています」


 ブラムが、舌打ちする。


「そんなの、

 予測できるかよ」


 エリスは、黙り込んだ。


 ガルドは、拳を握る。


(正解を選んだはずだ)


(合理的だった)


 それでも、

 結果はついてこない。


 その夜。


 宿で、リーナが小さく言った。


「……あの人なら」


 誰も、名前を出さなかった。


「選ばなかった、と思う」


 エリスが、静かに言う。


「決めなかったんじゃない」


「……?」


「決めさせた」


 ガルドは、黙ったまま杯を置いた。


 それは、

 自分にはできないやり方だと、

 ようやく理解した瞬間だった。


 だが。


 理解した時には、

 もう遅い。


 世界はすでに、

 別の基準で動き始めていた。


 同じ頃。


 レンバートの宿で、

 ミアがぽつりと呟いた。


「……あっち、失敗したみたい」


「そうですか」


 アレンは、それ以上聞かなかった。


「行きますか?」


「行かない」


 ミアは、はっきり言った。


「あなたが行っても、

 正解は出ないから」


 アレンは、少しだけ考えてからうなずいた。


「それなら」


「?」


「自分たちで、考えるしかないですね」


 それができるかどうか。


 それが、

 追いつける側と、追いつけない側の差だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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