第3話 数字を見たら、ちょっとだけおかしかった
翌朝。
アレンは宿の一室で、ベッドに腰掛けていた。
特に急ぐ予定もない。
「……一回、ちゃんと見ておくか」
昨日から何度も開いているステータス。
だが、流し見ばかりで、細かく確認していなかった。
ウィンドウを開く。
――――――
名前:アレン・クロウ
レベル:??
筋力:〇〇
敏捷:〇〇
耐久:〇〇
魔力:〇〇
――――――
「……あれ?」
まず、レベル表記に引っかかった。
数字が表示されていない。
「前から、こうだっけ?」
記憶にない。
だが、気にしても仕方がない。
視線を下に移す。
各種能力値。
一つ一つは、見覚えのある数字だ。
――ただし、合計するとおかしい。
(前衛職より、筋力が低いはずなんだよな……)
なのに、今の数値は、明らかにそれに近い。
敏捷に至っては、パーティ時代のブラムと同程度か、それ以上。
「……計算、間違えてる?」
もう一度見る。
変わらない。
アレンは、そっとウィンドウを閉じた。
「……まあ、困ってないし」
結論は、いつも通りだった。
朝食を済ませたアレンは、冒険者ギルドへ向かった。
依頼を探すついでだ。
受付にいた職員が、アレンの顔を見て首をかしげる。
「あれ、昨日の……」
「薬草採取の報告です」
「はい、えっと……」
手続きを進める途中、職員の手が止まった。
「……あの、念のためなんですが」
「はい?」
「ステータス測定、受けていきませんか?」
理由を聞くと、
「数値の更新頻度が早すぎる」と言われた。
(そんな基準、あったんだ)
内心で思いながらも、アレンはうなずいた。
測定水晶に手を置く。
一瞬、光が走る。
――沈黙。
職員が、水晶と書類を交互に見ている。
「……少々、お待ちください」
奥へ下がり、別の職員を呼んできた。
二人で確認し、首をひねる。
「……壊れてはいない、ですね」
「はい。水晶は正常です」
アレンは、なんとなく居心地が悪くなった。
「何か、問題ありました?」
「いえ。問題というより……」
言葉を選ぶように、職員は続ける。
「数値の伸び方が、少し……個性的です」
「そうですか」
それ以上、深掘りされることはなかった。
報告を終え、アレンはギルドを後にする。
(まあ、ギルドも色々あるんだろう)
深く考えないのが、アレンの長所だった。
街を出て少し歩いたところで、依頼帰りの冒険者たちとすれ違った。
「……あれ? 今の、誰だ?」
「見たことないな。でも雰囲気、落ち着いてた」
「ソロか? この辺りで?」
背後で、そんな声が聞こえた。
アレンは気にせず歩く。
歩くだけで、経験値が入る。
――――――
【スキル《徒歩移動》の熟練度が上昇しました】
――――――
「……うん」
もはや、安心する表示だ。
森の入り口で、小型魔物が二体現れる。
昨日なら避けていた相手だ。
「……まあ、いいか」
短剣を抜き、最小限の動きで仕留める。
手応えは軽い。
――――――
【レベルが上昇しました】
――――――
アレンは、倒れた魔物を見下ろしながら思う。
(前なら、二体同時は面倒だったんだけどな)
違和感はある。
だが、恐怖はない。
「……普通にしてるだけなんだけど」
そう呟き、素材を回収して歩き出す。
この時点で、アレンはまだ知らなかった。
「普通」だと思っているのは、自分だけだということを。
それが、どれほど世界の基準から外れているかを。
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